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レクサスのSUVラインナップはUX、NX、RX、LXと、SUV市場の中でも人気のクルマです。そんなSUV(スポーツユーティリティビークル)が本当にスポーツできるのか、サーキットでの走行から見える、レクサスSUVの素顔を、元レクサスディーラー営業マンが解説していきます。
■SUVをサーキットで試す意味
レクサススタッフ向けの新型車研修は、富士スピードウェイで行われ、ほとんどの車種を本コース内で試乗します。RCFやGSFなどのハイパフォーマンススポーツカーから、セダン、ハッチバック、そしてSUVも例に漏れず、走りの面についての仕上がりを確認することができるのです。
サーキットのような広くクローズドのコースを走ることで、加減速や旋回時に大きなGをかけ続けて、ハンドリングやサスペンションの動きを確認したり、急加速、急ブレーキの際にクルマがペダルワークに合わせて動いてくれるのかなど、実際の公道では試すことのできない動きを、高い速度域で安全に確認することができます。
市街地や高速道路などでは受けないような、ストレスフルな状態にクルマをもっていき、どこまでのストレスを与えるとクルマの性能として限界に達するのか、はたまたそのストレスを許容して余りある性能を持っているのかを見分けることができるのです。
●NXとRXは大型セダンと変わらない動きをする
レクサス勤務時代にNX、RX、LXの新型発表があり、富士スピードウェイでの試乗をすることができました。ただしLXに関してはサーキット本コースでの試乗はなく、本コースの周辺路を走行するだけでしたので、メーカーとしてもクルマのキャラクターと同様に、サーキットよりもオフロードを走るクルマと割り切って作っていることがわかります。
NXとRXに関しては本コースでの試乗がしっかりと用意され、クルマの素性をしっかりと体感することができました。背の高いSUVにとって加減速時や旋回時に発生する大きなGは、ボディの大きなロールに繋がり、運動性能の低下につながるのですが、この2車種に関してはLSやGSなどの大型セダンに乗っているのとなんら変わらない、安定した走りができることに驚かされました。
ホームストレートから始まる試乗コースは、1コーナーから100Rにかけて、パイロンターンから始まり、100Rで大きく右旋回することにより、クルマのロールの大きさやステアリング操作に対するクルマの動きを確認することができます。背高のクルマでは、ロールが大きくなりアンダーステアが出やすい状況でも、しっかりとフロントノーズが内側に切り込まれていき、曲がらないクルマの多いSUVのなかで、コンパクトハッチバックのような動きをするのがNXでした。
RXは広いトレッドを有効に使い、コーナー外側のタイヤのグリップが大きくなる状況でも、内側のタイヤのグリップ感が抜けることなく、4輪の設置を常に感じながら旋回してくれます。両車ともに、一般道での緊急回避や、高速道路でのロングツーリング時にも意のままに安心して操縦できるSUVだということがわかります。
●小さなブレーキながら、制動性能は秀逸
車重が重くなるSUVは、止まることが不得意です。欧州車の中には大型ブレーキを備えて、SUVでもしっかり止まれるクルマはありますが、NX・RXに関しては車格に対してブレーキローター径は小さく、止まる性能に不安を持たれる方も多いと思います。
ブレーキ性能を、富士スピードウェイではダンロップコーナーで測ることができます。アドバンコーナーを抜けてしっかりと加速した後に、ダンロップコーナーの侵入で大きくブレーキをかけます。比較的車重の軽いNXは、若干のABSの介入はあるものの、タイヤのグリップ力をしっかり使い、140km/hから40km/h程度までの急ブレーキをいとも簡単にやってのけます。姿勢変化も少なく、怖さはありません。
対して車重の大きなRXは、速めにABSの介入があるものの、制動距離がいたずらに伸びることはなくしっかりと減速します。ペダルタッチが軽いため、踏み込んだ感が少ないのですが、2トンを超える重量級のクルマの動きに似つかわしくない、大きな動きの少ない止まり方をしてくれます。
最終コーナーを抜けてからのホームストレートで加速性能を試すことができますが、NX・RXの2リッターターボモデルとハイブリッドモデルどちらとも、鋭い加速からあっという間にスピードリミッターにあたってしまいます。日常の速度域では、ほとんど破綻させることのできない高い運動性能は、本当の意味での安心感につながります。
●まとめ
レクサスでは必ず新型車の発表とともに、販売するスタッフ全員に対してサーキット試乗会を行います。市街地走行がメインの店舗では絶対に体感できないレクサスの本当の力を、販売する側にも理解された上で勧めて欲しいという一心からだと思います。
レクサスSUVをサーキットで乗って分かったことは、どんなドライバーでも、どんな道でも安心して走れるクルマを目指して、レクサスのクルマ作りは進化しているのだということです。
(文:佐々木 亘)