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ドライブすればするほどお得になる、クルマ好きにはたまらないサービスを実現しようとしているのが、トヨタの「走ってバック」です。車載通信機器(DCM)の標準搭載車が増えており、クルマとネットがつながる時代の新サービス、「走ってバック」について、解説していきます。
■走った分だけポイント還元
トヨタには自動車ローン用のポイントバックサービス「使ってバック」というものがあります。ローン支払い中に、登録したクレジットカード(TS3カード)で買い物をして得たポイントを、1ポイント1.5円にして、毎月のローン支払い金額に還元し、月々の支払い金額を安くするというものです。
この制度をベースとして、DCM搭載車の走行管理システムを利用した、新たなサービスが走ってバックになります。
ローン契約を行ったオーナーが、DCM搭載車かつトヨタのT-Connectナビを装着している場合に、走ってバックに登録をすることにより、走行距離とドライブスコアに応じてポイントバックされます。付与されたポイントは、1ポイント1円の還元率で毎月のローン支払い金額から引かれ、お得になっていくサービスです。
走行距離10kmごとに1ポイントが付与され、最大2000km(200ポイント)までポイントが付与されます。DCMの判定したドライブスコアが79点以下で1倍、80点以上で1.5倍、100点で2倍のポイントが付与され、最大で400ポイントの付与となります。
クルマに乗って走行して、安全快適に運転するだけで、毎月最大400円がもらえるサービスは、今までの自動車ディーラーのサービスでは非常に異色なものになっています。安全運転をした分、メーカーが寄付をしたり、全国の同じ車に乗るオーナーとスコアを競うという仕組みはありましたが、実利をユーザーに還元する制度は今までほとんどありませんでした。こういった意味でも、自動車の利用促進や、販売促進に直接的なカンフル剤としての役割を期待できるサービスで、現在は宮城県限定のトライアルとなっていますが、全国に広まってほしいサービスでもあります。
●対象車種はまだ限定的
トヨタには4つのチャネルがありますが、各販売チャネルで走ってバックの対象となるクルマは2台から3台程度です。具体的には、クラウン、アルファード、カローラスポーツ、RAV4、ヴェルファイア、そしてプリウスです。プリウスPHVと、アルファード・ヴェルファイアのエグゼクティブラウンジグレードは対象外となります。
これらの車種に、クラウンであればメーカーオプションナビの装着、その他の車種はディーラーが販売するT-Connectナビを搭載し、T-Connectサービスを利用することで、走ってバックの恩恵を受けられるようになります。
ポイントは現金で付与されるわけではなく、あくまでローン支払い金額からの差し引きとなるので、現金購入ユーザーは対象になりません。残価設定型ローン、残価据え置きローン、リースのいずれかの制度を利用し、TS3カードを保有し、スマートフォンに専用アプリをインストールするという条件も付いてきます。
少し条件が複雑ですが、今後DCM搭載車の普及と、通信型コネクトナビが多く出回ってくると、細かな条件も落ち着いてきて、多くのユーザーが利用できるサービスになっていくはずです。
●伸びの悪い通信機能の利用
トヨタ系ディーラーでは、レクサス取り扱い車種に新車時から3年間自動付保されるG-Linkサービスが、クルマのコネクティッドサービスでの走りになります。ユーザー側としては、事故や車両異常時の遠隔診断から車両搬送対応や、スマホとリンクした遠隔操作でのカギの施錠や車両状態の確認などのメリットがあり、メーカーとしてはビッグデータの収集、ディーラーとしては顧客の車両使用状況から最適なメンテナンス時期の提案や案内の通知など、営業活動や管理顧客のメンテナンスに大きなメリットのあるサービスです。
しかしながら、双方のメリットを上手く顧客側に伝えることのできない販売現場の苦戦もあり、車両通信ができるクルマでも、ユーザーはほとんど機能を利用しないという現状があります。今後通信規格が5Gとなり、より多くの情報が飛び交う世の中で、クルマもインターネットの世界に接続し、より多くの情報を受け取り発進することが重要となってきます。機能拡充のためには、普及率と利用率を上昇させなければなりません。その中で、走ってバックの存在が、これからの自動車社会の発展に寄与するものと期待していきたいものです。
●まとめ
現在は宮城県限定で様子を見ているサービスですが、一定数のユーザー満足を得られれば、全国展開されるサービスでしょう。自動運転機能に必ず必要になってくるのが、クルマ同士の相互投信と、クルマと世の中がつながる通信網です。インフラ整備の一環として、コネクティッドカー普及の足掛かりとして、新たなサービスである走ってバックが、多くのユーザーに受け入れられることを切に願います。
(文:佐々木 亘)