●「実は、セダンが好きなの。このクルマいいかも」
「そんなことより、このクルマカッコよくない?」
クルマに乗り込んだ彼女・阿久津真央さんは、ボクの話を遮ってそう言った。
今日のクルマはフォルクスワーゲンの「アルテオン」。ドイツのフォルクスワーゲンは質実剛健なイメージがあるけれど、このクルマにそんな固定概念は通用しない。美しくて、しっかりと華があるのだ。どうやら彼女はお気に召してくれたようだ。
まるでクーペのように流麗なスタイルは、その前身が「パサートCC」や「CC」といえば、クルマに詳しい人なら納得するかもしれない。今をときめくクーペ風セダン流行の比較的初期から存在した車種の後継なのだ。
クルマは幅が広くて、全長にゆとりがあり、背が低ければ低いほどカッコよく見える。それがカースタイリングにおける法則だ。アルテオンは実質的にフォルクスワーゲンのフラッグシップセダンなので、全長は4865mm、全幅は1875mmある。日本でもっともメジャーな同社のモデル「ゴルフ」に比べてふたまわり以上も大きい。そのうえ、全高は1435mmに抑えているからプロポーションが本当に伸びやか。
低く構えたフロントマスクもスポーティかつエレガントだし、なだらかに傾斜するCピラーも美しい。そして、アクセントとなるのがフロントフェンダーからテールライトまでつながる側面のプレスラインだ。
この工作精度の高さを感じさせるシャープなプレスラインが、華やかなドレスに添えたネックレスのようにスタイリングを引き締めている。存在感の高さは、お世辞抜きに1000万円級だ。