「実は、セダンが好きなの。このクルマいいかも」
彼女はそんなふうにほほ笑んだ。
このクルマは「TSI 4MOTION R-Line Advance」というグレードで新車価格599万円だけど、ベーシックな「TSI 4MOTION R-Line」なら見た目は同じまま50万円安い549万円。
下世話な表現をすると、アウディ「A5スポーツバック」やBMW「4シリーズグランクーペ」よりも立派に見えるしハッタリも効きつつ、それらよりも割安。実車を前にしてそのエレガントな雰囲気を知ると、とても安いように感じる。そのうえ、彼女に喜んでもらえるならなおのことだ。
メカニズムを掘り下げると値段を低めに設定できた理由が見えてくる。プラットフォームはエンジンを横置きに積むフォルクスワーゲンの「MQB」で、すなわち「ポロ」からはじまって「ゴルフ」や「パサート」と共通のもの。アウディでいえば「A3」や「TT」と同じタイプだ。
いっぽうアウディA5スポーツバックはエンジンを縦置きに積む「MLBエボ」と呼ばれる「Q8」など大型車にも活用するひとクラス上のタイプを採用。そこが大きな違いだ。
とはいえ、実際のドライブフィールはそんなことは全く気にならなかった。ホイールの重量増によって乗り心地は粗くなりがちな20インチタイヤを履きつつも、サスペンションはしなやかで乗り心地が良好。そしてなにより好印象なのが、1.7トンの車重が信じられないほどに軽快は運転感覚だ。
ハンドルを切るとスッと車体が反応し、しなやかかつ俊敏に曲がっていく様子はまるでスポーツカーのよう。単にスタイルがカッコイイだけでなく、この爽快な感覚を味わうために買いたいと思えるほどである。
「乗り心地がいいね」と助手席の彼女。同乗者には、そう感じてもらえればいいと思う。
ちなみに、エンジンは4気筒ターボで280ps。かなり高性能だ。そのうえ最大トルクが350Nmもあって、しかも1700回転という低い回転域から発生するので反応がいい。ひとたびアクセルを踏み込めばかなり速いけれど、それは彼女を降ろしてから楽しむことにしよう。(つづく)
(文:工藤貴宏/モデル:阿久津真央/ヘア&メイク:東なつみ/写真:ダン・アオキ)