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■悪質あおり運転、運転免許の行政処分はどうなる?
8月10日、茨城県の常磐自動車道でBMWの白いSUVを運転する男が、悪質あおり運転のあげく後続車を本車線道上に停止させ、ドライバーの顔面等を何度も殴った。しかも男は同じ車両で他の場所でも危険なあおり運転をくり返していたと話題になっている。
この男の、運転免許の行政処分はどうなるのか。
(編注:暴行行為に関する処罰は別のものとなります)
免許の停止処分や取り消し処分は、基本的には点数の累積によって行われる。
・妨害目的で急ブレーキをかける行為は「急ブレーキ禁止違反」、違反点数は2点。
・後続車の進路を妨害する形で車線変更をすると「車線変更禁止違反」、1点。
・危険な幅寄せは「安全運転義務違反」、2点。
・後方に激しく接近してあおる行為は「車間距離保持違反」、1点。
・必要もないのに後方からハイビームを浴びせたら「減光等義務違反」、1点。
・高速道路の本車線道での「駐停車違反」は2点。
・その際、クルマを降りて直ちに運転できない状態になると「放置駐停車違反」で3点。
1つの行為または近接した行為が2つの違反に当たるとき、違反点数は重いほうを登録する。2つの違反の点数が同じ場合はどちらか1つの点数を登録する。
※「点数は減点か加点か」なんてモメたりするが、警察のほうでは「登録」という。
したがって、後方に激しく接近してハイビームを浴びせる行為に対しては「1点」が登録される。後方に激しく接近したのち、追い越して前へ回り込み急ブレーキをかければ、2つの違反は別の行為となるので合計「3点」だ。
●悪質なあおり運転に対して、行政処分は適当なのか?
通常、点数の合計が6点で30日間の免許停止処分だ。今回の男がやった悪質あおり運転と見比べて、いかにもしょぼい感じがする。
でもそれは仕方がないのだ。違反点数は、善良な運転者がついやってしまう行為を前提としているから。嫌がらせや攻撃の目的でいくつもの違反行為を連続して行なうことを、道交法は想定していないのである。
ただ、「点数によらない処分」というのがある。
「自動車等を運転することが道路における交通の危険を生じさせるおそれがあると認められる行為」をした者を「危険性帯有者」とし、違反点数によらずに処分することができるのだ。
とはいえ、「危険性帯有者」に対する処分は最高で180日間の免許停止処分だ(道交法施行令第38条第5項第2号)。取り消しにはならない。
こうしてみると、悪質なあおり運転に対して行政処分はいかにも非力な感じがする。
「あおり運転」なんて緩いネーミングじゃなく、「特定危険運転」とか何とか定義して、重い処分とすることが必要な気がする。
●あおり運転や交通事故に遭う前にドラレコ搭載で自衛したい
ちなみに、犯罪捜査で鑑識係などがデジタルカメラを使用するとき、編集も消去も一切できない「書ききり型撮影媒体」に画像を保存する。
ドライブレコーダーのSDカードを、科学警察研究所の認定を受けた「書ききり型SDカード」とし、スムーズに証拠採用できるようにするのも手だろう。
ちなみに、近年あおり運転がよく盛り上がるのは、ひとえにドラレコの録画映像があるためだろう。ショッキングな映像はテレビでくり返し流され、ネットでくり返し再生され、話題になりやすいのだ。もしドラレコ映像がなければ、被害者は泣き寝入りになった可能性が高い。
あおり運転だけでなく交通事故にもドラレコは大いに役に立つ。
しかし、ソニー損保の「2018年 全国カーライフ実態調査」によれば、ドラレコの搭載率は31.7%だという。前年より16.4ポイント上昇したのはすごいが、それでもまだ約7割もの人がドラレコを搭載していないである。
「テレビやネットで話題になることは自分には関係ない」
という感覚なのだろうか。そんな感覚だと、テレビでしょっちゅう報道されている特殊詐欺にころっと騙されてしまうかもしれませんぞ。
あおり運転や交通事故に遭ってからでは遅い。ドラレコを搭載しましょう。
(今井亮一)