【ボルボXC90 D5試乗】ディーゼルのトルクだけじゃない、発進時からのスッキリした加速感の理由とは?

● 超ユニーク!「空気で回すターボ」で発進時の過給を可能に

ボルボのフラッグシップモデルとなるXC90に、ディーゼルエンジンのD5が追加設定されました。XC90は2002年に初代がデビュー、現行となる2代目は2016年に日本に導入されました。

2代目XC90はピュアエンジンとハイブリッドの設定でした。そこにディーゼルエンジンを追加したという流れです。しかし、ボルボはディーゼルエンジンの開発をストップしたとアナウンスしているので、これが最後のディーゼルと考えることができます。

XC90 D5のエンジンは2リットルターボディーゼルで235馬力・480Nmのスペック。乗り込んでエンジンを始動しても、とくにディーゼルらしい振動やノイズを感じることはありません。運転席のウインドウを開けてみると、ちょっとディーゼルらしい音が聞こえてきますが、さほど気になるレベルではありません。

発進時からスッキリと加速が始まる気持ちのいいエンジンです。じつはこの発進時からのスッキリした加速感にはちょっとしたワザがあるのです。

この2リットルディーゼルはターボ付きです。ターボは排気を利用して、空気をシリンダーに押し込み(過給し)ます。ですので通常は発進時は過給が行われないのですが、XC90のエンジンではコンプレッサーを使ってタンクに空気を圧縮貯蔵。発進時はその圧縮空気でターボを回して過給しているのです。

大きな過給は得られませんが、発進時の遅れをアシストするくらいは十分というわけです。

エンジンの回転上昇はスッキリとしたもの。現代のディーゼルエンジンらしく、回転上昇もスムーズでフリクションを感じさせません。それでいてトルクがしっかりと付いてくるので、運転はじつにしやすい。2トンのボディを物ともせず、勾配のキツい登り坂でも力強く加速するところは、なかなか感心させられます。

試乗車はエアサス仕様だったのですが、これも意外はほどしっかりと引き締まった印象です。もはやエアサス・イコール・ブワブワフィールという時代ではなくなっています。ワインディングでもハンドリングに不安はなく、しっかりと走ることができました。

(文/写真・諸星陽一)

この記事の著者

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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