ラリー・オーストラリアは現在環太平洋地域で開催される唯一のWRCイベント。サービスパークはオーストラリア東海岸、シドニーとブリスベンの間に位置するコフスハーバーに置かれる。
ラリーのステージはグラベル(未舗装路)。森林地帯の道幅が狭いツイスティな道や、高速で流れるようなコーナーが続く道など、様々なタイプの道を3日間、24本のSSを走行、その合計距離は318.64km。リエゾン(移動区間)も含めた総走行距離は1017.07kmに達する。開催時期の11月中旬は初夏に当たる。
2018年の最終戦を迎える時点でWRCの各タイトル争いは大混戦。トヨタ・ヒュンダイ・フォードと3マニュファクチャラーにタイトル獲得の可能性がある。さらに各チームのエース、トヨタのオット・タナク/マルティン・ヤルベオヤ組、ヒュンダイのティエリー・ヌービル/ニコラ・ジルソー組、フォードのセバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア組にドライバー/コドライバー タイトル獲得の可能性が残されている。
各チームとも各ドライバー達のタイトル獲得のサポートを明言しており、それは来年の移籍が決定しているオジェ組も例外ではない。ドライバータイトル獲得がマニュファクチャラータイトル獲得の最短距離でもあるからだ。フォードは連覇、トヨタは復帰後初、ヒュンダイは悲願の初タイトルを目指している。
11/15 シェイクダウンではランキングトップのオジェ組が最速タイムを記録し、タナク組は3位。ヌービル組は4位。3強の激突は必至の様相を見せる。
11/16 デイ1はサービスパーク北側、ウールグールガ周辺で3本のステージを各2回走行後、コフスハーバーのスーパーSSを2本続けて走る。ステージの大半は森の中のグラベル。SS8本の合計距離は101.68km、1日の総走行距離は350.31kmとなる。先頭の数台は砂利掻き役となり、タイムアップは見込めない。
SS1 オラーライーストI(Orara East I 8.77km)Day1競技の先頭はランキングトップのオジェ組。以下ヌービル組,タナク組,エサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム(トヨタ・ヤリスWRC)組と続く。トップタイムは4番手スタートのラッピ組。2位タナク組、3位リ‐マティ・ラトバラ/ミーカ・アンティラ(トヨタ・ヤリスWRC)といきなりトヨタ勢がトップを独占する。
SS2 コールドウォーターI(Coldwater I 14.12km) ラトバラ組がステージウイン。クレイグ・ブリーン/スコット・マーティン(シトロエンC3WRC)組が2位。ラッピ組が3位となり、ラッピ組とラトバラ組は同タイムで並んだ。タナク組は5位。オジェ組とヌービル組はそれぞれ10位,9位に沈む。
SS3 シャーウッドI(Sherwood I 26.68km) トップは11番手スタートのマッズ・オストベルグ/トルステイン・エリクセン(シトロエンC3WRC)組。2番手は8番手スタートのブリーン組。3番手が9番手スタートのヘイデン・パッドン/セバスチャン・マーシャル(ヒュンダイi20クーペWRC)組と後方スタートの車両が上位に並び、オストベルグ組が総合トップに踊り出た。
トヨタ勢はラッピ組、ラトバラ組それぞれ2,3位。ブリーン組とパッドン組を挟み、タナク組は6位。ヌービル組オジェ組の総合順位は変わらないものの、トップとのタイム差は10秒足らずから20秒近くまで開いた。このSSでアンドレアス・ミケルセン/アンデルス・ヤーゲル(ヒュンダイi20クーペWRC)組がクラッシュ。ヒュンダイはワークス勢の一角が早くも崩れる。
SS4 オラーライーストII(Orara East II 8.77km) ここから午前中に走ったSSを再度走行するため、砂利は掻き出されており午前中程は走行順が大きなハンデとならない。リアをヒットしながらもトップタイムをタナク組が叩き出す。2位はラッピ組。3位のオストベルグ組を挟んで、オジェ組が4位と気を吐く。
SS5 コールドウォーターII(Coldwater II 14.12km) ヌービル組が今回最初のトップタイムを刻んだこのステージで波乱が起きる。総合2位を守っていたラッピ組がウォータースプラッシュでエンジンが失火、総合9位に後退する。前のSSでもアクシデントがあったタナク組はここでフロントバンパーを粉砕してしまう。ラトバラ組は堅実に走行し、総合2位に浮上する。
SS6 シャーウッドII(Sherwood II 26.68km) ブリーン(シトロエン)組がトップ。オストベルグ組が2位。ラトバラ組が3位で総合2位を守る。前後のエアロを失ったタナク組は13秒遅れの6位と伸び悩む。このSSでヌービル組がジャンプの際にタイヤをパンク。着実に挽回していた総合順位を10位まで後退させる。
SS07 デスティネーション・ニューサウスウェールズI(Destination NSW SSS18 – I 1.27km)はオジェ組が、続くSS08 デスティネーション・ニューサウスウェールズII(Destination NSW SSS18 – II 1.27km)はタナク組が制した。
SS8(Day1)終了時点で総合首位はオストベルグ組、2位はブリーン組とタイトル争いとは無縁のシトロエン勢が1−2を占めた。トヨタ勢は3位のラトバラ組、5,6位にタナク組、ラッピ組とつけている。オジェ組は7位、ヌービル組は10位である。
11/17 デイ2は、森林地帯と農場地帯に広がるステージは滑りやすいルーズグラベルに覆われる。ドライコンディションとなった事で、後方からの出走となるデイ1上位の選手達にとっては、かなり有利な路面コンディションとなった。
SS9 アージェンツヒル・リバースI(Argents Hill Reverse I 13.13km) 8番手走行のパッドン組がトップ、10番手スタートのラトバラ組が2位。総合順位もブリーン組を抜いて2位に浮上する。
SS10 ウェルシュズクリーク・リバースI(Welshs Creek Reverse I 28.83km) タナク組、ラトバラ組とトヨタ勢が1-2。タナク組は総合順位も4位に浮上する。
SS11 ウルンガI(Urunga I 21.28km) SS10に続き、タナク組‐ラトバラ組が1‐2。ラトバラ組はオストベルグ組を抜いて、総合トップに躍り出る。タナク組は2位に続く。一方、抜かれたシトロエンの2台はオジェ(フォード)組、ヌービル(ヒュンダイ)組よりも速く追従を許さない。5位に喰い付くラッピ組とそれ以下のタイム差は40秒以上に広がる。
SS12 ラレーI(Raleigh I 1.99km) タナク組が3連続トップタイムを奪う。ショートSSなので、6位までが1秒以内にひしめき大きな差は広がらない。
SS13 アージェンツヒル・リバースII(Argents Hill Reverse II 13.13km) パッドン組が首位。2位ラトバラ組、3位タナク組が0.1秒差ずつの差で喰らい付く。
SS14 ウェルシュズクリーク・リバースII(Welshs Creek Reverse II 28.83km) タナク組が2位ラトバラ組を4秒引き離し、遂に0.8秒の差を付けて総合トップに立つ。
SS15 ウルンガII(Urunga II 21.28km) ラッピ組がトップ、タナク組が2位。タナク組と2位ラトバラ組とは7.4秒の差が開く。
SS16 ラレーII(Raleigh II 1.99km)/SS17 デスティネーション・ニューサウスウェールズIII(Destination NSW SSS18 – III 1.27km) タナク組がまたも連続トップを奪い、リードを広げる。SS17終了時点でラトバラ組との差は20秒。ラトバラは急に崩れた天候に翻弄された。
SS18 デスティネーション・ニューサウスウェールズIV(Destination NSW SSS18 – IV 1.27km) ヌービル組が首位を奪うが総合順位は8位のまま。7位エバンス組との差は30秒以上と、順位の入れ替えが難しい差となっている。
SS18(Day2)終了視点で、トヨタ勢はタナク組・ラトバラ組で総合1-2位、ラッピ組が5位を堅持。一方のオジェ(フォード)組は総合6位。ヌービル(ヒュンダイ)組は8位となっている。
仮にこのまま終了した場合、マニュファクチャラーズタイトルはトヨタが獲得。ドライバーズタイトルはタナク組(181pt)がパワーステージを含めて完全優勝しても211ポイント。現在首位のオジェ組(204pt)は6位の8点を加えると212ポイントと、僅差で逃げ切る可能性が高い。
マニュファクチャラーズタイトルをトヨタが確定できるか。そして、奇跡のドライバータイトル逆転はあるか。いよいよ残すは最終日、Day3の残る6SSの合計距離は83.96km、1日の総走行距離は222.39km。タイトルの行方は最後の最後まで見逃せない。
(川崎BASE Photo:GAZOORACING/Jaanus Ree/RedBull Content Pool)