新型カローラ スポーツが示すスポーティなデザインとは? 新世代ベーシックは低さとワイド感、日常性とのミックスを目指す

ユーザーの若返りを目指し、オーリスからカローラに名前を変えたハッチバックは「カローラ スポーツ」を名乗ります。では、新世代ベーシックのスポーツとは何か。さっそく担当デザイナーに話を聞きました。

── 最初の質問です。新型の造形上のコンセプトは何でしょう?

「キーワードとしては「シューティング・ロバスト」です。TNGAの採用で先代オーリスより全高で20ミリ低くできたことを活用し、止まっていても動きがあり、かつ凝縮されたカタマリ感が表現できるよう意図しました」

── フロントは「キーンルック」として最近のトヨタ車に準じていますが、このクルマとしての特徴はどこにありますか?

「キーンルックはそもそも鋭敏で賢く、精悍な顔を目指しているワケですが、その中で常に進化を続けているんですね。シャープな表現自体は他車と同じですけど、クサビ型のランプ形状も含め、より立体的で彫りの深いものとしました」

── サイドグラフィックの形状は何となく曖昧に感じてしまいますが、何を意図したのでしょう?

「新型のボディ形状は、基本的にリアに向けてラグビーボールのように絞り込まれ、一方でリアフェンダーは大きく張り出しています。この大きな動きや、大きく傾けたリアハッチ、リアタイヤに乗っかるCピラーなど、各部のバランスを総合的に考えた形状ですね。まあ、結果論的に聞こえるかもしれませんが(笑)」

── そのサイドウインドウの後端から、前に向けて下るキャラクターラインの意図は?

「このクルマは、横から見るとボディの軸がフロントの高いところから下に向いて流れています。これに対し、キャラクターラインはリアの高いところから前に向けて下っている。この両者をクロスさせることで、地面を蹴り出すような勢い、まさに「シューティング」を表現しているんですね」

── リアハッチをかなり寝かせましたが、居住性の確保などの問題はなかったですか?

「オーリスも若干そうでしたが、ルーフを後ろに引いてしまうと箱のイメージになってしまうんですね。今回は、居住性を最低限確保しながらリアのボリューム感を減らし、スポーティなイメージを優先させました。同時に、リアフェンダーへのつながりやカタマリ感も出しています」

── マイナーチェンジしたヴィッツも同じですが、リアパネルの大きなハの字のラインは少々うるさいのでは?

「これは、リアフェンダーの張り出しを後ろから支えるためのものです。実はごく初期にリア下部全体をブラックの別パーツにしてワイド感を与えるという大胆な案があって(笑)、その名残りでもあるんですよ」

── 最後に。新型には「スポーツ」の名が付いていますが、沼本さんが考えるスポーティなデザインとは?

「もちろん、端的にはスーパーカーのような低さとワイド感が基本だと思いますが、実用車としてはそれと日常性とのミックス加減でしょうね。今回は新しいプラットホームにより、カローラとしてはかなりスポーティなスタンスが示せたと認識しています」

── ありがとうございました

キーンルックを謳う近年のトヨタデザインは、どれもシャープでスポーティな方向です。しかし、先鋭さに特化すれば「みんな同じカタチ」になりかねません。これからのトヨタデザインは、大きなテーマの中で各々の個性をどのように磨くかがテーマなのかもしれません。

【語る人】
トヨタ自動車株式会社 Mid-size Vehicle Company
MSデザイン部グループ長
沼本 伸 氏

(インタビュー・すぎもと たかよし)

この記事の著者

すぎもと たかよし 近影

すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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