先日、お伝えしたようにBMW i3が雪国でどのように走行するかを試したくなった編集部は、温泉地として有名な栃木県奥塩原でテストしてきました。
テスターは高い運転技術に裏付けされた評論でおなじみのモータージャーナリスト・五味康隆さん。試乗したクルマに関して、自動車メーカーに遠慮しない評価を下すことでも有名です。
奥塩原はスキー場がいくつもある標高1000mの山あいにあり、冬期は道路が積雪や凍結路となる地域です。試乗時は気温が上がり、雪が溶けたことで路面がアイスバーンになるという最悪な路面コンディションとなりましたが、雪国におけるi3の性能を五味さんはどう評価するのでしょうか。
日の出とともに試乗をスタートした我々を待っていたi3は、雪こそ積もっていなかったものの気温1度のため霜がおりていました。
もちろん車内は冷え冷えなのですが、i3はスマートフォンで乗車前に車内温度を調整できる“BMW i ConnectedDrive”により寒さを感じずに乗り込むことができます。雪国で使用するには嬉しい機能だとスタッフ一同、感心してしまいました。
五味さんはカチカチに凍った路面でi3をゆっくりとスタートさせました。 凍結路であるにもかかわらず山間部のため登り下り、またカーブが多い路面が続くためか、運転技術に定評がある五味さんでさえ慎重に運転していきます 。
しかし、i3と奥塩原の凍結路になれてきたのでしょうか、だんだんとi3の走行がペースアップしていきました。
「路面に慣れてきたのでペースを上げたのですが、i3がレーシングカー並みに低重心設計されているのが雪道の走りでも有効だと感じました。また、アクセルを踏んだ瞬間から加速するモーターの力は雪道でも魅力的ですね」(五味さん、以下同)
ボディはCFRP(カーボンファイバー強化樹脂)製で軽量化され、モーターやバッテリーなど重いパーツはボディ下部に配置した独自の構造が雪国での走りにも効果的だと五味さんは話すのです。
しかし、ボディ構造だけが凍結路でi3の走りを支えているわけではないようです。
「i3に慣れてくると雪道を走行するのがすごく楽しく感じるのですが、それはドライ路面と同じようにハンドルがよく利くためでしょう。クルマの向きが自分の行きたい方向にしっかりと変わりますし、リヤタイヤが少し滑ったとしてもそれは穏やかな動きです」
ただ、雪道や凍結路での走行に不安を感じる人が大半でしょう。いくら低重心でハンドリングがいいi3とはいえ、EVであることを含め雪国でスムーズな走行が誰にでもできるのでしょうか。
「i3のようなEVで凍結路をスムーズに走るためのアドバイスをすると、まずアクセルに少しだけ足を乗せたら、いきなり踏み込まずにそのままの状態(アクセル開度)をキープしてください。モーターの力で徐々に加速していきますので、あとは速度が上がるのを待てばいいだけです。モーターはトルクがあるのでハイパワーエンジンを搭載したガソリン車に乗りアイスバーンを走るイメージで、アクセルを踏み込みすぎないことを意識しましょう」
予想以上に雪上や凍結路での走行が楽しかったためか、予定を大幅に超える時間までi3を楽しんだ五味さん。最後に雪国でのi3の印象を語ってくれました。
「i3が雪国でどのように走るかイメージできなかったのですが、改めてわかったのは、i3がEVであるにもかかわらずBMWが持つ走りの楽しさを持っていることです。走り続けていくと雪道でもだんだん楽しくなりますし、ステアリングから路面状況もわかりやすく伝わってくる。i3はアクセルの操作だけである程度の加減速ができるワンペダルドライブという新しいモーターの使い方や運転方法を提案していますが、雪道でもそれを感じることはできました」
雪上でもi3の走行が楽しめると話してくれた五味さん。i3のためブリヂストンが開発したスタッドレスタイヤ「BLIZZAK NV ologic(ブリザック エヌブイ オロジック)」も、その理由のひとつなのですが、このタイヤについては次回詳しくお伝えします。
i3の雪上性能を試した五味さんの詳しいインプレッションは動画をご覧ください!
■五味康隆(モータージャーナリスト)
自転車のトライアル競技で世界選手権に出場し、4輪レースへ転向。全日本F3選手権に4年間参戦した後、モータージャーナリストとしての執筆活動を開始。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
(テヅカ・ツヨシ)