アメリカの7つの州で発売されたシボレー・ボルトですが、突然日本でお披露目されました。これは20日まで開催されている「人とクルマのテクノロジー展2011」で、ゼネラルモーターズ・ジャパンが展示したものです。実車が日本へ持ち込まれたのはシボレー・ボルトの日本での走行実験を主な目的としていますが、さらに販売への可能性を探るのも狙いとなっているようです。
コンセプトカーの時はセダン的なスタイルでしたが、ハッチバックとなりなだらかなリアゲートとなっています。やはり燃費にはこのスタイルがいいのでしょうか。空気抵抗係数は0.28。
現在の計画では、販売エリアを北米の50州に拡大し、2011年の後半には中国、ヨーロッパへの拡販を予定。2012年には4万5000台の販売を目指しているといいます。しかしこのなかでは、まだ日本への販売予定はありません。ひとつには日本ではシボレーというとスポーツイメージが高く、販売の前にブランドとボルトの商品性の理解などを進める必要があるとの判断によるところもあるようです。
グリル上部からは空気は入りません。
ところでこのボルトで注目されるのは、GMとしては電気自動車と認識している点です。電気モーターとともに搭載される1.4リットル・ガソリンエンジンは、あくまでもレンジ・エクステンダー(走行距離を伸ばすためのもの=発電用)としている点です。フル充電の状態であれば(もちろん家庭で充電が可能)、単独のEVモードではEPAの理論値で35マイル(56km)の走行が可能で、エンジンも併せれば379マイル(610km)の走行が可能とのことです。ちなみに燃料タンク容量は約35リットルです。
そのシステムは、なんとプリウスのように遊星ギアを用いていますが、メインの電動モーターと発電兼用モーターで駆動します。電気モーターが高回転域で効率が落ちることから、低めの回転を維持しながら高速走行も可能にするための技術とのこと。「2つの電気モーターで駆動する技術がGMの特許なのですよ」と来日していたパワートレイン技術担当ディレクターのマーティン・マレーさんは言っていました。「ですから、トヨタのパテントには一切触れていないのです」とのことです。
遊星歯車を用いた駆動&充電系。手前に見える遊星歯車の外周にメインの電動モーターがあり、サンギアにつながっています。そしてギアの右側に発電兼用モーター、その奥にエンジンがつながる構造です。
気になるのは、発電兼用モーターは他方ではエンジンにつながっているわけですが、エンジンの駆動トルクが直接タイヤを回しているのではないか? という疑問がアメリカの雑誌や評論家の間で沸き起こったということです。ただしGMの説明では、あくまでもエンジンは発電用とのこと。発電兼用モーターはギア側とエンジン側にそれぞれクラッチを持っていて、それがともにつながるモードがあることから、こんなことも言われていたようです。
2010年12月に北米で販売されてから、現在までのユーザーの給油までの平均走行距離は1600km。また現在まで給油をしていないユーザーもいるのとのこと。かなり魅力的なモデルなのですが、日本登場も期待したいところですね。
(MATSUNAGA, Hironobu)