FFのスポーツハッチでめっぽう速いのは、2.0Lターボから265ps/360Nmというアウトプットをたたき出すメガーヌ ルノー・スポールで、3ドアのみ、6MTのみという硬派な存在です。
確かにドライバーが楽しむことを第一に掲げるならば個人的にも大好きなホットハッチですが、ゴルフ7のGTIとして誕生した新型ゴルフGTIは、5ドアで高い実用性を備えながら異次元の完成度を披露してくれました。
ノーマルのゴルフ7でもクラスを超越したボディ剛性感とスタビリティを味わえますし、それが299万円の1.4LのTSIハイラインであればパワーはもちろん、質感も含めて盤石と言える完成度を堪能できます。
正直、70万円高であるゴルフGTIにまで手を伸ばす必要はあるのかなと、富士スピードウェイで開催された試乗会でステアリングを握りましたが、クローズドコースという限られた条件下でもその価値は十分過ぎるほど確認できました。
2.0Lの直列4気筒ターボに6速DSGを組み合わせる新型GTIは、ゴルフ5時代のGTIと変わらないものの、エンジンはもちろん最新のEA888型でツインインジェクターや水冷EGRといった最新技術を採用し、カタログ燃費は15.9km/Lと先代よりも約3km/Lもアップしているから立派。それでいながら最高出力も約10psアップの220ps、最大トルクも280Nmから350Nmに大幅に向上しています。
富士スピードウェイのショートコースで走らせると、エンジンのフィーリングという意味ではやや物足りなさを覚えましたが、どの速度域からでもパワーを容易に引き出せますし、分厚いトルクで1コーナー後の急勾配もDレンジのままでも難なく登っていくのが頼もしく感じます。もちろん、年々進化しているDSGのシフトチェンジの妙もあるのですが。
足まわりは18インチタイヤと電子制御式減衰力可変ダンパーの「DCC」。横滑り防止装置の「ESP」と統合された電子制御式LSDの「XDS+(プラス)」も用意され、さらに「ESC Sport」を1回短く押すと「ARS機能」のトラクションコントロールを停止、3秒以上長押しすると介入を緩やかにする「ESC Sport」モードも備わります。
電子デバイス盛りだくさんですが、その挙動と介入も自然そのもので、先代よりも10kg軽くなったボディやフロントサスペンションも1.6kg軽量化されていることもあり、全体に軽いフットワークを味わえます。
簡単なようでいて難しいのが、しっかりしていながら軽い。ボディ形状はまったく違いますが、現行のポルシェ・ボクスターのような衝撃を受けました。
しかし、軽いといってもミシリともしない、圧倒的なボディの剛性感もあって自分程度の腕ではショートコースでいくら振り回しても破綻の気配はなく、1コーナーにオーバーペースで突っ込んでも難なくクリアしてしまいますから運転が上手くなったかもと誤解してしまうほどです。
盛りだくさんの電子デバイスは、ショートコースよりもその後試乗した特設コースで確認できましたので、次回ご報告します。
(塚田勝弘)