以前に「自動車業界へのアベノミクス効果は今後も期待できるのか?」でも触れましたが、自動車業界は「機動的な財政出動」「大胆な金融緩和」「成長戦略」の「3本の矢」を軸にデフレスパイラルからの脱却を掲げる安倍内閣の経済政策「アベノミクス」を歓迎しています。
現在の円安傾向は少なくとも今後も2~3年間続くようで、米国や新興国の需要好調を背景に2013年3月期の通年決算でも順調に業績が伸びる見通しと言います。
振り返ればこれまで約10年以上に渡って毎年のように日本の首相が入れ替わる中、同時に円高傾向も拡大する一方でした。
日本は2007年に米国サブプライムローン問題を機に発生した世界金融危機に巻き込まれ、福田内閣、麻生内閣の時点で1ドル24円もの円高が進み、その後も長きに渡って円の上昇に歯止めがかからず、2011年10月にはかつての1ドル120円時代から40円以上も円が上昇して1ドル75円台にまで達しました。
自動車業界では円高に伴う為替差損により、1円上昇するだけでトヨタの場合300億円以上、ホンダで170億円、日産で150億円規模の営業利益が吹き飛ぶと言われています。
そこで、これまでの円高基調が自動車各社の営業利益を実際にどの程度圧迫して来たのかを知るために、トヨタとホンダが公開している各年の連結決算データを使って「見える化」してみました。
まずはトヨタから。
青ラインが営業利益、赤ラインが為替レートの推移を表しています。2007年度決算の営業利益は約2.3兆円でしたが、その後の金融危機で円高が急激に進み、翌2008年度の決算では一転して営業利益が‐5000億円の大赤字となっています。
その後も2011年まで益々円高は進みますが、グループ一丸となった企業努力により、円高でも利益を出せるように経営改善を進めて、翌2009年には黒字転換を果たしています。
さらに2012年末の政権交代により、一気に円安傾向が進んだことで、2013年3月期は先期の3倍以上の1兆円を越える営業利益が見込まれています。
続いてホンダの場合を見てみましょう。
ホンダも傾向はほぼトヨタと同様で、2008年の底入れを機にその後の経営努力で急速に回復を見せ、2011年の震災に伴うリバウンドを経て、2013年3月期には営業利益が5200億円まで再び回復する見込み。
以上のように為替相場の変動は自動車業界の営業利益増減に直結しており、今の調子で円相場が1ドル100円台にまで回復すれば世界金融危機以前の状態まで盛り返す可能性が出て来そうです。
円安・ドル高基調は自動車業界にとって総じてプラス方向に作用しており、日本自動車工業会が「アベノミクス」を歓迎している背景がココに有るというワケです。
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