三菱アウトランダーPHEVを甘口評価!? 私だって「辛口」「ワル口」ばかりじゃないョ

〈MondayTalk星島浩/自伝的爺ぃの独り言39〉 どだい三菱は10年以上前にインホイール・モーターによる電動四駆技術をモーターショーョーに展示したほどだから、新型アウトランダーPHEV=プラグイン・ハイブリッドEV発売は驚かなかった。むしろ「遅いョ」と。

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                                                  アウトランダーPHEV 

 

 外観スタイルは3~4年前に出た現行型と大差ないが、SUVでは数少なかった3列シートを2列5人乗りに改めた。システムバッテリーやコントロールユニットを搭載するには、やむを得まい。

 

 本心をいうなら、結構長期間愛用したギャランVR4の後釜で出てほしかったのだが、三菱には魅力的なセダン型が手薄。フォルティスをベースにする手もあろうが、いっそ提携関係にある日産の次期スカイラインあたりに技術を移植すると、世間が仰天したかもしれぬ。

 

 フォレスターのXモードに代表されるスーパーSUV機能はないが、全輪ABSやヨーコントロール=AYC、姿勢安定制御機能=ASCを継承。もっと書くべきだが、メカ詳細はネット検索なさるがよろしい。

 

 i-MiEV技術が下敷きであることは言うまでもなく、分類も電気自動車。

 でもi-MiEVやリーフみたいな純EVではなく、スズキが私たち報道関係者を招いて試走させたレンジ・エクステンダーEVでもない—-スズキの試作車は主としてシステムバッテリー充電のためにエンジンを載せていた。

 

 アウトランダーPHEVが積んだエンジンは従来型2.4Lではなく、2LのMIVEC。ただし充電専用ではない。必要に応じて充電に働かせるほか、エンジンを駆動に積極動員する走行モードがある。

 

 すなわち—-

 1: システムバッテリーによる純EV走行。2: 搭載エンジンでバッテリーに充電しながらのシリーズ的EV走行。3: EV走行にエンジン動力を加勢させるパラレル的ハイブリッド走行—-以上3モードを備える。

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 60kWモーター二つを前後の車軸に働かせる4WD。しかしトランスファーや前後を繋ぐプロペラシャフトは要らず。ために、パラレル走行時のエンジン動力は湿式多板クラッチと減速ギヤを介して前輪のみ駆動する。

 

 むろん減速エネルギー回生システムや一時停止で働くアイドリングストップ機能があり、減速エネルギー回生時の抵抗感を嫌うスポーツ走行にはシステムの働きを弱めたり、キャンセルできるパドルスイッチがある—-これもアウトランダーよりギャランVR4に、より望ましい? かも。

 

 プラグインは家庭用100Vだと80%充電に14時間かかるが、200Vなら4時間。深夜電力使用契約しておけば、費用も安くなる。急速充電は30分で済むものの、現行インフラに頼らざるを得ない点は既存の純EV同様。

 

 発進はEV。EV走行だけでも実用的には50㎞前後可能だと。

 バッテリー残量が一定以下に減ったところで、自動的にエンジンが始動してバッテリーに充電するが、一般的な通勤の片道20㎞程度なら、エンジンに頼らず、家庭電気によるプラグイン充電で事足りよう。もっともエアコンを使う時季だとエンジンを働かせる時間が増えるだろう。始動すれば、それと判るが、気になるレベルではない。それまでの静粛性ゆえだ。

 

 変速機構はない。モーター特性を生かした加速は2Lガソリン車の比ではないし、変速段差も皆無。試しに高速道の上り坂でアクセルを踏みつけたら、パラレル走行で猛然ダッシュ。20%を超える山道の登坂でも同様と思われた。この場合、エンジン動力に電気ターボが加勢する印象。

 

 ガソリン満タンで900㎞も航続できると聞いたが、そんな長距離を走る機会は稀だろう。走り方しだいとはいえ、それでもリッター15㎞はカタいから、ディーゼル車と好勝負か。燃料代は軽油に敵うまいが。

 

 でも、せっかくのプラグイン充電を利用しなきゃアホやで。

 家に帰る都度、プラグイン充電を心がけて燃料代をセーブすべし。一方、野外で調理を楽しむとか、災害時などには家庭電気として使う。

 

 床下に収めたバッテリー容量はi-MiEVの75%と小さいので、家庭用なら1日分の電気しか賄えないが、純EVではないからガソリンを補給すれば長期利用できる。停車中はバッテリーチャージモードを使用。満タンにしておけば10日分賄えるはずで、AC100V、1500W取り出しコンセントを2個所備えている。

 

 i-MiEV用より小さいとはいえ電池重量約200㎏。変速機やトランスファー、プロペラシャフトがない分、軽いものの、モーター2個と冷却システム、コントロールユニットなど加えると、2.4Lを積む現行アウトランダーより約280㎏重い。しかし重心が30㎜以上低く、重量が車両中心に寄った利益がある—-旋回時ロールが小さくヨーモーメントやノーズダイブも小さくなるから、操縦安定性向上と優れた乗り心地を両立させやすい道理だ。

 

 発進を含むEV走行時の車内が静かなことは言うまでもない。ためにロードノイズが小さいタイヤを選んだそうな。路面当たりの優しさは、そのせいか?

 

 ハンドリング感覚は格別スポーティでもなければダルな印象もなし。運転しやすい普通の乗用車として使える。ボルボV40で経験したので言うわけじゃないが、運転席をもうちょい中央側に寄せたら、前方視界が広がって、もっと運転しやすくなりそう。車両重量の割にブレーキも問題なし。

 

 乗り心地はSUV型の中で秀逸の部。車両が重いことと、先に挙げた基本レイアウトが生きている。ダンパーの収まり感も三菱車で一番だろう。

 

  価格はベース車を除き360万~420万円強。補助金で40万円ほど安く買えるはず。相対的には純EVより安いし、装備充実機種ほど、お買い得感を覚える。例えば安全装備機種であり、ナビパッケージだ。

   

   進化版ナビゲーションシステム搭載で、表示項目や機能に優れている。しかし、操作方法 を憶えるだけでも年寄りは大変。そこで改善提案—-せっかく親戚の三菱電機が造ってるんだもの。車両商品企画と連携して、矢印を計器バネルか前面ガラスに表示すべし。むろん「あと200m直進とか、50m先を左折」など音声付きだ。夜などゼッタイ便利だと想うョ。

 

  玄関前まで誘導してくれたら、小口運送車だって重宝する。三菱車ならではのナビパッケージ展開だ。なぜ、やらないのかしら? ヘンだよネ。

 

 全編甘口評価のつもりだったのに、やっぱり最後は「ワル口」か。★