〈MondayTalk星島浩/自伝的爺ぃの独り言37〉 新型ボルボV40—-最近、とても気に入った輸入車です。
ボルボV40(本国仕様)。高い完成度とともにリーズナブルな
価格も魅力となり、高い人気を得ている。
発表当日、ウェブサイトに載ったジャーナリスト各位の評判が良かったせいもあろう。僅か1週間で1000台売れたそうだから「めでたし」。
まずはスタイリング。一見ごく普通の4ドアハッチバックに映った。
近づくと、新鮮なアイテムが少なくないと気づく—-チンスポイラー部のクロームトリムが珍しい。ヘッドライトは中身が凝ってる割に平凡な形状かナ。ワイドになったグリルとボルボのアイアン印—-日産マークに似るが、言うまでもなく鋼鉄で知られたスウェーデンのボルボが先輩。
強いAピラー傾斜も特徴的。サイドウィンドー下で、リヤガラス側に、ちょい跳ね上がったプレスラインも目を惹く。
六角形のリヤウインドーが珍しいのは当然。ためにコンビランプ形状が魅力的—-最新ジャガーの変わりようにも瞠目したが、方や1100万円の高級車。こなた300万円の欧州Cセグメント。近ごろ雑誌やサイトで褒めちぎられたベンツAクラスと同車格で50万円も安いなんて!
今はプジョーなどフランス車にも割安感があるから、やはりドイツ車の日本価格だけが群を抜いて高いのかもしれぬ—-北米では安いのにネ。
でも、スポーティとかプレミアムとか聞かされると些か首を傾げる。ごく普通のCセグメント4トアハッチで、一風変わった後ろ姿が目立つほかは、運転しやすさ、衝突安全性でピカイチ—-それで十分じゃないの!
Aピラーの強い傾斜にも関わらず、乗降時に頭をぶつけないのは、前席が中央に寄っているためと判る。お陰で、ドアポケットの大きさを評価した御仁が多かったようで。後席中央シートも随分変わった造りだけどネ。
中央寄りの運転席がもたらした利益は、断然、運転視界向上だ。
全幅1800㎜は決して小さくないのに、Aピラーが左右に遠ざかったお陰で前面視野が驚くほど広がった。車幅感覚が掴みやすく、狭いワインディング路でも意外に運転しやすかった—-パッケージ&デザイン分野で画期的コンセプトに挙げてよかろう。こ寡聞にして高評価なさった方はいなかったが、私が最も気に入ったのは視界感覚。新鮮な驚きだった。大きなガラスルーフはスライドしないものの、むろんシェード付き。
正面の計器はドライブ気分で色が変わるデジタルディスプレイ。追い越し禁止を教えてくれるし、白線を跨いだり、先行車に近づくと警報を発するほか、ステアリングが振動して注意を喚起する—-ここまでやるか!
エンジンは欧州同級車に多い1600cc直噴ターボ。力強さは高回転寄りだが、通常走行域では自然なドライバビリティと静粛性が特長。ただしゲトラック製ツインクラッチ式6速自動MTとの組合せながら、アクセル開度しだいで、ギヤの繋がりに微かな違和感を覚えた。
なにより感心したのは確かな操縦性と類い稀な乗り心地との両立だ。
ステアリングは太めのスポーティなグリップ。キビキビと言えば褒めすぎだが、狙い通りのラインをトレースして、後輪がしっかり落ち着いている。それでいてタイヤの路面当たりが優しく、突起通過後の収まりも自然で、Bセグメントはもちろん、Dセグメント勢と比べても秀逸の部。日本車は大いに学ぶが良ろしい。ブレーキもコントローラブルだった。
ボルボと言えば衝突安全対策—-八方に目を光らせる衝突安全対策=シティセーフティパックは、従来より機能を高めて価格20万円を据え置き。スバル・アイサイトは10万円高だが、機能向上を勘案したらV40に値打ちがある。
駐車区画をバックで出る際、脇から近づく車両の存在も教えてくれた。
加えて、世界初の歩行者安全対策が特筆もの。
歩行者がぶつかるとボンネットが跳ね上がって傾斜を強め、スカットル側に仕組んだ幅広いエアバッグが膨らんで衝撃を緩和する。システムが6万円で付くのも福音だ。双方で26万円だが、装着率は90%を超えるだろう。
四角いボルボが丸みを帯びてイメージチェンジしたのは、現行60シリーズ以降。当初は、やや奇異に感じる向きが少なくなかった。
20年以上古い話で恐縮だが、当代「松島屋」が片岡孝夫時代、同じ団地にお住まいで、愛用車が四角いボルボ—-ちょいちょい顔を合わせた隣のコーヒー店で「お好きですか?」と尋ねたら「スタイルが気に入ってましてネ」と返ってきた。ご自分で運転して劇場まで往復なさってたっけ。
スタイルが気に入ってるので—-とのコメントには片岡孝夫さんに限らず「メルセデス・ベンツ並みの値段は高いと思うんですけどネ」の意味が含まれた。
他方、現行60シリーズ以降はシティセーフティパックに代表される衝突安全対策で新たなボルボファンを獲得した。でも、ベンツ並みの? 価格イメージは、さほど変わらなかったと思う。
幸か不幸か。フォード支配を脱し、中国資本が導入されたところで、初めて開発されたニューモデルが今回のボルボV40ではなかったか。販売価格やディーラー経営に対する考え方まで変わったのかもしれぬ。
生産は、ルノーも使っていたベルギー工場だが、日本に限らず今後は中国や周辺新興国でも衝突安全重視のボルボファンを増やすに違いない。
今回は「ワル口」得意の私としては随分「甘口」になったようで。★