タイヤノイズ低減タイヤ「ダンロップ ルマンLM703」が発表。サイレントコアを採用して空洞共鳴音を抑制【今日は何の日?12月14日】

■タイヤ内部に特殊吸音スポンジを装着して空洞共鳴音を低減

ダンロップタイヤ サイレントコアの構造
ダンロップタイヤ サイレントコアの構造

2005(平成17)年12月14日、住友ゴム工業(ダンロップ)はタイヤの内部に特殊な吸音スポンジを貼り付けた“サイレントコア”と名付けた、世界初の新技術を採用した「ダンロップ ルマンLM703」を発表しました。

サイレントコアは、タイヤノイズのなかの空洞強鳴音を低減する技術です。

●タイヤ共鳴音は、タイヤから発生するノイズのひとつ

タイヤノイズには、大別して以下の3種類があります。

・路面の凹凸をタイヤが拾い、振動となって車体を震わせることで発生するロードノイズ

・タイヤのトレッドパターンにより、溝の中の空気が圧縮・放射されて発生するパターンノイズ

・タイヤの中の空気が振動することによって発生する空洞共鳴音

ロードノイズやパターンノイズは、車体側の改良やタイヤの素材や構造、トレッドパターンの改良で対応するのが一般的です。しかし、空洞共鳴音はそれだけで抑えるのは困難です。

空洞共鳴音は、路面の段差や突起を乗り越える際に、タイヤの変形によってタイヤ内の空気が振動し、共鳴が起こる現象です。太鼓の膜を叩けば、中の空気が振動してより大きな音になる、この現象に例えると、分かりやすいと思います。

●空洞共鳴音を低減するサイレントコア

サイレントコア(特殊吸音スポンジ)はダンロップの独自技術で、同様の吸音材を貼り付ける手法は、一般的には“インナータイヤアブソーバー”と呼ばれます。タイヤ内部に吸音材となるポリウレタン系スポンジを貼り付け、空気の振動を吸収低減する技術です。

貼り付けたスポンジは、表面積を増加させて吸音効果を向上させ、タイヤ内でスポンジが受ける衝撃を効果的に分散するように、2山構造の特殊な形状を採用。ポリウレタン系スポンジは、音の反射を低減する吸音効果に優れており、路面の突起を乗り越えたときに起きる「パカン、パカン」という共鳴音や、室内で共鳴し耳障りだと感じる周波数250Hz付近のノイズを抑制する効果があるのです。

インナータイヤアブソーバーを採用しているのは、現在のところ日本ではダンロップのみですが、欧州タイヤメーカーのピレリやコンチネンタル、ミシュランは、それぞれ名称は違いますが、同様の技術を高級車用として採用しています。

●自動車メーカーも空洞共鳴音を抑える技術を実用化

空洞共鳴音を低減させる試みは、サイレントコアのようなタイヤメーカーによる技術だけでなく、自動車メーカーも開発しています。代表的なのは、ヘルムホルツ型レゾネーターで空洞共鳴音を減少させる、ホンダの「ノイズリデューシングホイール」、トヨタの「ノイズリダクションホイール」です。

ホンダのノイズリデューシングホイール
ホンダのノイズリデューシングホイール

両方とも基本的には同じ原理で、タイヤとホイールの間に中空構造の樹脂製のプレート(レゾネーター)を挟み込み、樹脂プレートにはホイールリムに沿って連通穴を設置。レゾネーター容積と貫通穴を最適化すれば、ヘルムホルツの原理によって、共鳴音を打ち消すことができます。

タイヤメーカーだけでなく、自動車メーカーもタイヤノイズ低減に取り組んでいるのです。


電動化が進むと、それまでエンジン音によってマスキングされていたタイヤ騒音が目立つようになります。今後、車外騒音も強化されるので、タイヤに対しても低燃費ととともに、低騒音の要求がさらに高まることが予想されます。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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