自動車の生みの親「カール・ベンツ」 179年前の今日、生まれる【今日は何の日?11月25日】

■世界初のガソリン自動車を発明したカール・ベンツ

1844年11月25日に誕生したカール・ベンツ
1844年11月25日に誕生したカール・ベンツ

1844(天保15)年11月25日、世界で初めてガソリンエンジンを搭載した自動車を発明し、ダイムラー・ベンツ社の基礎を築いた「カール・ベンツ」が生まれました。

世界初のガソリン車は、最高出力0.89PSを発揮する排気量954ccの単気筒4ストロークエンジンを搭載した3輪自動車「モトールヴァーゲン」です。


●カール・ベンツの略歴

・1844年:ドイツ南西部のカールスルーエで誕生。機関車運転士の父親は、2歳の時事故で死去。

・1860年:15歳でカールスルーエ大学機械工学科に入学し、機械工学や内燃機関を研究。

・1864年:大学卒業、その後さまざまな機械工場で技術者としてキャリアを積む。

・1871年:27歳で友人と機械工作所を設立。主として2ストロークエンジンを開発、関連する多くの特許を取得。

・1885年:世界初のガソリン3輪自動車「モトールヴァーゲン」を製作、翌1886年に特許を取得。

・1888年:改良したモトールヴァーゲンの販売を開始、その後4輪自動車「ヴィクトリア」なども販売。

・1926年:ベンツ社はダイムラー社と合併し、ダイムラー・ベンツ社と改称。自動車のブランド名を「メルセデス・ベンツ」に統一、カール・ベンツは取締役に就任。

・1929年:84歳で逝去。

●世界初のガソリン自動車・モトールヴァーゲンとは?

カール・ベンツが機械工作所を創業した当初は、2ストロークエンジンの開発で実績を上げ、その後ニコラウス・オットーの4ストロークエンジンの特許が無効になると、4ストロークエンジンの開発に注力しました。

1985年にカールベンツが発明した世界初のガソリン自動車モトールヴァーゲン(レプリカ)
1985年にカールベンツが発明した世界初のガソリン自動車モトールヴァーゲン(レプリカ)

開発した4サイクルエンジンは、954ccの単気筒で最高出力0.89PSを発揮。当時の自動車用エンジンの課題は、安定した燃料供給と確実な点火でした。燃料の供給は、束ねた繊維を伝う毛細管現象を利用、また点火は従来の熱管式でなく、バッテリーと変圧器を組み合わせて高圧電流を発生させるシステムでした。これにより、高回転高出力を実現、最高速度は20km/hを記録したのです。

モトールヴァーゲンの構造、レバーハンドルで操舵、チェーンで駆動している
モトールヴァーゲンの構造、レバーハンドルで操舵、チェーンで駆動している

このエンジンを搭載した「モトールヴァーゲン」の車両は、鋼管と木製で構成し、鋼鉄製のスポーク車輪とソリッドゴムタイヤでした。操舵はラック・アンド・ピニオン、手動式の後輪路面ブレーキ、動力の伝達はベルト式でした。

●同時期にゴットリープ・ダイムラーは4輪ガソリン自動車を発明

カール・ベンツは、モトールヴァーゲンを完成させた翌1886年1月29日に、3輪自動車の特許を取得しました。

一方、同時期にベンツから100km程度しか離れていない場所で、ゴットリープ・ダイムラーもガソリン自動車を発明。ダイムラーは、1885年にガソリンエンジンを搭載した2輪車の特許を取得し、これが世界初のオートバイとされています。また、馬車にエンジンを搭載した4輪自動車を1886年の冬に完成させています。

したがって、2輪車の発明はダイムラー、3輪自動車はベンツ、4輪自動車はダイムラーということになりますが、一般的には自動車の発明は、特許を先に取得したカール・ベンツと言われることが多く、ベンツとダイムラーの2人であると言われることもあります。

また、自動車が発明されたのは、モトールヴァーゲンの特許が認められた1886年とするのが一般的ですが、3輪車が完成した1885年とする場合もあります。誰が発明者か、いつ発明されたかは、定義によって色々な解釈があり、よく論争になりますが、最初に特許を取得した人が発明者、特許を取得した時が発明した日となるのが、一般的なようです。


同時期にガソリン自動車を発明したベンツとダイムラーは、ライバルとなって別々に会社を立ち上げましたが、第一次世界大戦後の不況の煽りで皮肉にも両社は1926年に合併して「ダイムラー・ベンツ社」となりました。

その後、紆余曲折を経て1998年に「ダイムラー・クライスラー社」となって社名からベンツの名は消え、2007年には「ダイムラー社」となりました。しかし、今もダイムラー社のメルセデス・ベンツという高級車ブランドとして、ベンツの名は輝き続けているのです。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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