新しいアイデアの二輪用ステレオカメラがミラノショーで発表された【バイクのコラム】

■史上最大のEICMAでの注目デバイス

バイクのADASはミリ波レーダータイプが市販で先行しているが、カメラタイプには車線や歩行者を認識できるメリットがある。
バイクのADASはミリ波レーダータイプが市販で先行しているが、カメラタイプには車線や歩行者を認識できるメリットがある。

日本で開催されたジャパンモビリティショー2023と入れ替わるような同じタイミングで、イタリア・ミラノで開催されたのが、世界最大級のモーターサイクルショー「EICMA」です。

二輪ファンの間では『エイクマ』と読まれることも多いこのイベントには、世界各国のバイクメーカーがニューモデルやコンセプトモデルを展示するだけでなく、サプライヤーが次世代デバイスを発表する場にもなっています。

2023年のEICMAは11月12日に閉幕となりました。主催者からの発表によると、来場者数は56万人を超えたということで、同イベントにおいて過去最高の実績ということです。

これだけ注目を集めたEICMAで発表された、近未来のバイクに欠かせない、ADAS機能を実現するユニークなデバイスを紹介しましょう。

●左右独立したステレオカメラ

大型アドベンチャーモデルのカウルに2つのカメラを埋め込み、ステレオカメラとして機能させている。
大型アドベンチャーモデルのカウルに2つのカメラを埋め込み、ステレオカメラとして機能させている。

それが日立Astemo(アステモ)のバイク用ステレオカメラです。もちろん、その目的はADAS(先進運転支援システム)を実現するためです。

四輪車においてはADAS用ステレオカメラというのは珍しくありませんが、同社が展示したバイク用ステレオカメラの特徴は、CMOSカメラと制御系を分離している点にあります。

四輪用ステレオカメラの多くが、フロントウインドウ上部にそれなりのスペースを使って置かれている理由のひとつは、左右のカメラを一定以上離したいという理由もありますが、制御系も一体にしているために、全体としてのサイズが大きくなってしまうという部分もあります。

●スクーターと大型アドベンチャーにインストール

ステレオカメラによるADASに電制サスペンションやパワートレインなどを協調制御するアイデアも盛り込まれている。
ステレオカメラによるADASに電制サスペンションやパワートレインなどを協調制御するアイデアも盛り込まれている。

ご存知のように、日立Astemoは四輪用ステレオカメラにおいても実績があるのですが、その構造をサイズダウンして二輪用とするのではなく、カメラと制御ECUを別体とすることで、分散配置を可能にしたのがポイントです。これは、スペースに限りのある二輪に実装するには大きなメリットとなります。

EICMA2023では、大型アドベンチャーバイクのカウル部分にカメラを埋め込んだタイプと、スクーターのバックミラーステーにカメラをインストールしたタイプ、2台のコンセプトモデルが展示されました。

一般論として、ADAS用カメラは高い位置にレイアウトしたほうが前方検知能力に有利ですので、カメラとECUをセパレートすることで、理想的な位置にカメラを置けるというのはADAS機能としても理にかなっているわけです。

EICMA2023(ミラノショー)が11月12日閉幕。主催者発表では、来場者数は56万人を超え、EICMA史上最大という。
EICMA2023(ミラノショー)が11月12日閉幕。主催者発表では、来場者数は56万人を超え、EICMA史上最大という。

また、バイクの場合は大きな事故ではなく、立ちごけと呼ばれる転倒によって部品を壊してしまうこともありますが、カメラを単独でインストールしておけば修理コストを抑えることも期待できます。

バイクの世界では、ミリ波レーダーを用いたADAS機能は量産モデルに搭載されていますが、カメラタイプには白線や標識を認識できるという優位性があります。その点でもカメラを使うADASというのは注目なのです。

日立Astemoのプロトタイプのベースに使われた車両が、そのまま量産でステレオカメラを採用するというわけではないのでしょうが、特にアドベンチャーモデルであれば、ロングツーリングの疲労を軽減してくれるACCを求めるユーザーは多いでしょう。一日も早い量産採用が望まれるデバイスです。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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