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■トヨタ「2GRエンジン」を使っているのは1チームだけ!
いまD1GPではFR車に「2JZエンジン」を搭載するというのが圧倒的多数派です。
2JZエンジンというのは、トヨタ・スープラ(JZA80)やアリストに搭載されていた3.0Lの直列6気筒エンジンです。もはやD1GPにかぎらず、ドリフト競技では世界的に人気のあるエンジンです。
ちなみにD1GPではこのほかに日産GT-Rに搭載される「VR38エンジン」を植尾選手や蕎麦切選手が使用。VR38は、以前トラストのGT-Rがシリーズチャンピオンを獲得したこともあり、多数派ではないものの認知度は高いエンジンです。
また田所選手は「SR20エンジン」を使っています。SRももはやD1GPでは少数派ですが、シルビア/180SXの純正エンジンなので、D1ライツなどではまだまだ多数派のエンジンです。
いっぽう、ドリフト競技車両ではほとんど見ないエンジンを搭載している車両が2台あります。広島トヨタ team DROO-PのAE85トレノとGR86です。この2台が使っているのは3.5LのV6エンジン「2GR」です。
今回はこのエンジンをちょっと見てみましょう。
●じつは2015年から使っていた
そもそも広島トヨタ team DROO-Pが2GRを使い始めたのはけっこう古い話で、2015年に松川選手が乗るAE85に搭載したのが最初でした。
それ以前はMR-2などに使われていた3S-Gエンジンを使っていたのですが、まわりの大排気量化に追いつくためにV6エンジン搭載を検討。どうせならトヨタのエンジンがいい。そこで2GRを試してみようということになったのでした。
2GRエンジンはいくつかバリエーションがあるようで、クラウンやエスティマやカムリやIS350など、さまざまな車種に使われていますが、広島トヨタ team DROO-Pが使ったのは2GR-FSE。
スポーツエンジンというイメージは薄く、チューニングのベースエンジンとして使われることはほとんどないため、中古品がただ同然で手に入るそうです。
強化エンジンパーツもほとんど市販されていないのですが、ネットで検索したところ、アメリカの「モンキーレンチ・レーシング」という会社が出していることがわかり、ピストン、コンロッドなどは、そこのパーツを使っています。
また、AE85に搭載するためには搭載位置を下げる必要があり、油圧を安定させる目的もあってドライサンプ化されています。
●油圧系統を見直したら壊れなくなった!
2015年の導入当初は、すぐにエンジンブローしてしまってまともに走れないラウンドが多く、苦労していましたが、潤滑系統を見直したら壊れない仕様を作ることができ、安定して戦えるようになりました。
その後広島トヨタ team DROO-PがしばらくD1GPを離れてしまったため、D1GPでは見られませんでしたが、フォーミュラDのほうではこの2GRエンジンを積んだGR86もデビューさせました。
今季はその2GRエンジンを積んだAE85とGR86で、広島トヨタ team DROO-Pは数年ぶりにD1GPに復帰。D1の勘をとりもどすのに少々時間がかかりましたが、第8戦のオートポリスでは松川選手、石川選手のふたりとも追走進出を果たしました。
というわけで、排気量も3.5Lあり、壊れる心配も少ない2GRエンジン、パワー的にも2JZ勢と比べて遜色なさそうです。
業界全体として2JZのノウハウが充実しているので、いまのところ手を出すチームはほかにいないのですが、ベースエンジンの安さは魅力のひとつかもしれません。今後もしかしたら増えてくるかもしれませんね。
●第7戦・第8戦は「2JZエンジン」搭載車が優勝
その第8戦、広島トヨタ team DROO-Pの2台は残念ながら追走のベスト16で敗退。2GRエンジンはまだD1GPで優勝したことがないんですよね。
ちなみに土曜日の第7戦は2JZエンジンを搭載したD-MAX RACING TEAMのS15シルビアを駆る末永正雄選手が優勝。第8戦はGR86に2JZエンジンを搭載しているTEAM VALINO × N-styleの中村直樹選手が優勝しました。なお単走優勝は第7戦、第8戦ともに中村直樹選手でした。
このラウンドの結果、シリーズランキングでは中村選手が首位に立ちましたが、蕎麦切選手、田中選手、松山選手、藤野選手がわずか9pts差以内で中村選手を追うという大混戦。そして11月11日・12日に東京・お台場でシリーズ最後となる第9戦・第10戦が2日連続で行われます。
D1GPの情報は公式サイトをご覧ください。
(文:まめ蔵/写真提供:サンプロス、まめ蔵)