聞き間違いじゃない「サステナブル」な「サステナルブ」。 「カヤバ」のショックアブソーバー・オイルは環境に優しい

■総合油圧機器メーカーだからこその「油」の開発

●会社名に「カヤバ」の3文字が戻ってきた

サスペンションのショックアブソーバーなどでお馴染みのカヤバは、パワーステアリングやAT用電動ポンプ、建設機械の油圧シリンダー、コンクリートミキサー車なども手が掛ける総合油圧装置メーカーです。そのカヤバが、装置内で使う作動油の改良に取り組んでいます。

古くからの車好きなら、カヤバ工業の名でお馴染みだった同社は、2015年に社名を「KYB」としましたが、2022年には創業者「萱場資郎」の名字に由来する「カヤバ」と社名を変更しています。

●サステナブルな「サステナルブ」を開発中

サステナルブで作られたショックアブソーバーの模型。オイル自体は無色透明だ
サステナルブで作られたショックアブソーバーの模型。オイル自体は無色透明だ

そんなカヤバの環境負荷低減、カーボンニュートラルの取り組みのひとつに、環境にやさしい作動油「サステナルブ」があります。持続可能性という意味の「サステナブル」と、油脂を示す「ルブ」を組み合わせて「サステナルブ」としたネーミングもなかなか秀逸です。

従来、油圧装置に使われているオイルは石油由来のものです。車が廃棄される際、ショックアブソーバーなど各種の油圧装置が適正に回収され、オイルもリサイクルされればいいのですが、オイルが環境に漏れ出したりすることもあります。また、廃棄された油圧装置に使われていたオイルを助燃剤として燃やしてしまうこともあり、そうなると二酸化炭素の排出原因になってしまいます。

ベースオイルの部分を植物性にするのがサステナルブの考え方
ベースオイルの部分を植物性にするのがサステナルブの考え方

生産工程で積極的に環境負荷低減、カーボンニュートラルに取り組んでいるカヤバですが、製品が廃棄される際に二酸化炭素を排出してしまうのは残念。ということで、この作動油を植物由来のオイルへの転換を模索中。そのオイルこそが「サステナルブ」なのです。

サステナルブは高い摩擦性能を引き出すことが可能で、減衰力の立ち上がりがいい
サステナルブは高い摩擦性能を引き出すことが可能で、減衰力の立ち上がりがいい

「サステナルブ」は、微生物による分解が行われる組成で、事故でオイルが流出した際も自然環境への影響を軽減。焼却した際にも、植物が生育過程で固定した二酸化炭素が放出されるので、カーボンニュートラルとなります。また石油由来のオイルに比べ、再精製が容易に行えることも、持続可能性に優れています。

●スーパー耐久や全日本ラリー選手権などで検証中

全日本ラリー選手権に参戦中のマシン
全日本ラリー選手権に参戦中のマシン

現在、「サステナルブ」を使ったショックアブソーバーは、スーパー耐久や全日本ラリー選手権への参戦マシン、レクサスROV Conceptなどに採用されています。

サステナルブを使ったショックアブソーバーを採用したカローラスポーツ。スポーティで乗りやすいフィーリングであった
サステナルブを使ったショックアブソーバーを採用したカローラスポーツ。スポーティで乗りやすいフィーリングであった

筆者はテストコースにて、「サステナルブ」仕様のカローラスポーツに試乗しました。減衰力の立ち上がりを早めた仕様のショックアブソーバーを採用していたため、車がロールし始めるとグィと抑え込まれる乗り味で、スポーティな印象。

今後はコストの問題などを解決しながら、市販に向けていきたいとのことでした。

(諸星 陽一)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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