引退する前に見届けよう。国鉄の名車・117系の定期運用が7月21日で終了

●1ランク上の快適性を実現した117系

JR西日本は7月22日から岡山・備後エリアに新型車両227系Uraraを導入します。これにより国鉄近郊形電車117系の定期運用が終了します。

7月21日で岡山地区での定期運用が終了する117系
7月21日で岡山地区での定期運用が終了する117系
7月22日にデビューする新型車両227系Uraraは117系を始めとした国鉄形車両を置き換えます
7月22日にデビューする新型車両227系Uraraは117系を始めとした国鉄形車両を置き換えます

117系は京阪神区間で運行している新快速用の近郊形電車として1979年に登場。1980年から営業運転を開始しました。

新快速としてデビューした直後の117系
新快速としてデビューした直後の117系

当時の新快速は並行する私鉄と熾烈なシェア争いをしていました。特に京都〜大阪間ではライバルとなる阪急電鉄京都本線と京阪電気鉄道本線が転換クロスシートを備えた特急を運行していました。

国鉄は阪急・京阪の特急に対抗して、近郊形電車でありながら、特急車両並みの転換クロスシートを備えた117系を導入したわけです。

当時の近郊形電車はボックスシートとロングシートを組み合わせたセミクロスシートが標準。急行形電車もボックスシートだったので、117系の座席がどれほどハイグレードだったかが想像つくと思います。

117系の最大の特徴は転換クロスシートを採用したことです
117系の最大の特徴は転換クロスシートを採用したことです
当時の国鉄近郊形電車はセミクロスシートが標準でした。写真は111系
当時の国鉄近郊形電車はセミクロスシートが標準でした。写真は111系

車体デザインも画一化された国鉄形デザインではなく、流線型のオリジナルデザインを採用。台車も近郊形標準のコイルバネではなく、特急・急行形電車に採用されていた空気バネを装備。座席も乗り心地も格上だったことから117系は国鉄形電車の中でも名車と言われました。

1982年には東海道本線名古屋地区にも117系を導入して、ライバルである名鉄に対抗しました。

晩年の117系JR東海車
晩年の117系JR東海車

1987年4月1日にJRが発足。京阪神地区の117系はJR西日本、名古屋地区の117系はJR東海が承継しました。1989年以降JR東海、JR西日本ともに後継車を続々と投入。JR東海の117系は引き続き東海道本線名古屋地区で活躍しましたが、2013年3月で引退しました。

リニア・鉄道館で展示されているクハ117-30
リニア・鉄道館で展示されているクハ117-30

引退後、3両が登場時の塗装に戻されて愛知県名古屋市のリニア・鉄道館で展示されました。現在は2両の展示が終了していて、クハ117-30の1両が引き続き展示されています。

一方JR西日本の117系は1999年までに京阪神地区の新快速から撤退しました。撤退した117系はJR宝塚線や岡山地区、下関地区に転用されました。

JR宝塚線に転用された117系は京都地区の湖西線・草津線や和歌山地区に再転用。和歌山地区の117系は2020年までに撤退し、京都地区の117系も2023年4月で引退しています。

引退した117系のうちクハ117-1は登場時のカラーに復元して吹田総合車両所で保存され、一般公開ツアーで展示されました。

吹田総合車両所で保存しているクハ117-1
吹田総合車両所で保存しているクハ117-1

クハ117-1の展示は7月16日のツアーが最後と発表されていて、今後の去就が注目されています。京都鉄道博物館での展示に期待したいところです。

1992年に岡山地区に転用された117系は専用カラーに塗装されて快速「サンライナー」に投入されました。

専用カラーで運行を開始した快速「サンライナー」
専用カラーで運行を開始した快速「サンライナー」

岡山地区の117系は2010〜2016年に濃黄色に塗装を変更。また、2015年に下関地区から117系が再転用されています。 定期運用終了が近い岡山地区の117系は以下の時刻で運行しています。

【下り列車】

岡山5時55分→福山6時55分(平日のみ)

岡山16時25分→糸崎17時53分

播州赤穂21時27分→岡山22時42分

【上り列車】

福山7時7分→岡山8時13分(平日のみ)

糸崎18時15分→岡山19時49分

岡山20時8分→播州赤穂21時19分

●117系は観光特急として存続

近郊形電車としての117系は7月21日で終焉を迎えますが、観光特急「WEST EXPRESS 銀河」に改造された117系7000番代が存在するので、形式としては消滅しません。

117系7000番代「WEST EXPRESS 銀河」
117系7000番代「WEST EXPRESS 銀河」

「WEST EXPRESS 銀河」は時期によって山陽・山陰・紀南の各エリアを運行。また、昼行特急または夜行特急として運行することを考慮して、多種多様な座席を設定しまします。

特急並みの水準で名車と評された117系。最後の生き残りは名実ともに特急車両として活躍していくことになりましたが、これも117系らしいと言えるかもしれません。

(ぬまっち)

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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