■本社で得た知見を母国に還元する役割も担う
ヤマハ発動機の広報グループが発信しているニュースレターは、同社の幅広い事業領域や社会活動まで、多種多様なトピックスがレポートされています。今回のお題は、ヤマハ発動機のグローバル人事異動制度「YAP(ヤマハ・アサインメント・ポリシー)」。
「YAP」により国境をまたぐ異動や転勤を積み重ね始めた同社は、これまで6ヵ国9件になっています。その中にはインドネシアからオーストラリア、台湾からアメリカなど、海外拠点同士の交流も含まれています。
その中の1人であるフィリピン出身のアンドラダ・イアン氏は、グローバル人事異動制度「YAP」によって、フィリピンの現地法人からヤマハ発動機本社のMC事業部に赴任して2年目を迎え、スポーツバイクの商品企画部門で活躍中です。
アンドラダ・イアンさんは、「フィリピンでの仕事では、時にホームランを狙うこともできました。本社ではまず打席に立って、塁に出て、チームに貢献することが大切だと感じています。それを繰り返せば、信頼を得て次のチャンスが巡ってきます。憧れていたヤマハマンと呼ばれる第一線の皆さんと肩を並べられるように、一歩一歩、前進していきたいです」と、同制度を使っての本社勤務について並々ならぬ決意で臨んでいるようです。
国境をまたぐ「YAP」の人事異動には、駐在先からのリクエストや社員の成長を促したい派遣元の思いなど、いくつかのパターンがあるそうです。
「私のケースは後者です。フィリピンには開発機能がまだ充実していないため、商品企画が担うのは、カラーリングや法規に合わせた仕様変更など限定的です。私は以前から、製品を一から企画するようなフルスクラッチの仕事にチャレンジしたいという希望を持っていました。そうしたスキルやナレッジは、今後、フィリピンでも必ず必要になるだろうという判断で日本への赴任が決まりました」と、その事情を語っています。なお、駐在期間は3年の予定だそうです。
イアンさんは今、自ら希望して趣味性の高いスポーツモデル、中でも小排気量の155㏄モデルを担当。155㏄は、先進国や新興国を問わず、世界で親しまれているクラスです。
「私がフィリピンで働き始めた15年ほど前、ヤマハ発動機はまだ販売店からも『ピアノを売りに来たのか?』と言われる存在感でした。今では大きな存在になりましたし、今後は趣味でバイクに乗る人ももっと増えるはずです。これを担当できるのは、自分にとっても重要な経験になります」と、帰国後を見据えて仕事に取り組んでいます。
一方、ロシア拠点の人事部門で働いていたグローバル人事部のパンテレーエフ・ユーリー氏は、こうした制度の必要性を本社に提言していたそうです。
同氏は、「ようやく形になりました。グローバルに活発に人が動くことで、この会社はもっと強くなっていくはずです」と、ダイナミックな人材交流に大きな期待を寄せています。
「YAP」は、国境を超えた適材適所で、適時な人材配置を目指し、2020年に導入されたグローバルな人事異動制度。「日本人が海外に駐在する事例は無数にありますが、同制度によって、海外拠点から日本へ、また海外拠点から別の海外拠点への異動が活発になります。コロナ禍の影響で少し動きが鈍ってしまいましたが、人の移動が自由になるこれからは、グローバルな人材交流がますます広がるはずです」と、ユーリー氏は手応えを得ているようです。
(塚田 勝弘)