■実は函館市に北海道新幹線の駅はない!
2023年4月23日に投票が行われた函館市長選挙で、新人の大泉潤氏が現職の工藤寿樹氏を破って初当選しました。大泉潤氏は俳優、大泉洋さんの兄。
そんな大泉潤新市長が選挙で掲げた公約のひとつが、北海道新幹線函館乗り入れに向けた調査です。これはどういうことなのでしょう?
北海道新幹線は、新青森〜新函館北斗間の路線。新青森駅からは東北新幹線に乗り入れていて、「はやぶさ」が東京と新函館北斗を最短3時間57分で結んでいます。また、2030年度末には新函館北斗〜札幌間の開業を予定。この区間では最高速度320km/h運転を行い、所要時間は1時間25分程度となる見込みです。
この新函館北斗駅ですが、所在地は函館市内ではなく北斗市内にあります。函館駅からの距離は17.9kmで、これは東京〜川崎間(18.2km)とほぼ同じです。
新函館北斗駅が函館市内から大きく外れているのは、北海道新幹線が今後、札幌駅まで延伸する際に、函館駅を経由すると大きく迂回することになるからです。
函館駅は元々、青函連絡船と接続する駅だったので、海に突き当たる構造になっています。そのため、在来線の敷地内に新幹線のホームを設置する場合は、進行方向を変えるスイッチバック駅とする必要がありました。スイッチバックを解消しようとした場合、市の中心部に新幹線の線路を通す必要があり、これはこれで大きな課題が生まれます。
JR北海道は、函館駅から新函館北斗駅へのアクセス列車として「はこだてライナー」を運行。所要時間は19〜22分。乗換時間を考慮すると、函館駅から新幹線に乗るのに30〜45分程度かかっています。
つまり、東京〜函館間の所要時間としては、最速でも4時間29分。最長では5時間24分もかかっているのが現状です。また、函館〜札幌間についても現状の乗換時間ならば、2時間を切るのは難しいかもしれません。
●北海道新幹線の函館駅乗り入れはミニ新幹線方式?
では、北海道新幹線が函館駅に乗り入れるにはどうすればいいのでしょう? 函館〜新函館北斗間に新幹線規格の線路を建設するのは、費用的に考えても現実的とは言えません。報道によると、大泉市長はミニ新幹線方式での可能性を探る見通しだとしています。
ミニ新幹線は、在来線の線路幅を現行の1067mmから新幹線と同じ1435mmに改軌して、在来線サイズの車体を持つミニ新幹線車両を直通させるというもの。すでに山形・秋田新幹線で実例があります。
ミニ新幹線方式のメリットは、ホームなどの構造物に大きな手を加えないで済むことです。架線の電圧は、新幹線が交流2万5000Vであるのに対して、在来線は2万Vと異なりますが、ミニ新幹線の車両は両電圧に対応しているので問題はありません。また、在来線区間の最高速度は130km/hとなるので、踏切なども廃止する必要はなくなります。
ミニ新幹線車両のデメリットは、車体サイズが小さくなるので、現行のフル規格新幹線車両よりも定員が少なくなってしまうことです。座席のサイズや間隔も狭くなり、快適性もフル規格新幹線には劣っています(改良の余地はあると思いますが)。
また、北海道新幹線はJR東日本が運行する東北新幹線に乗り入れていますが、JR東日本にとっては、東北新幹線を運行するJRの車両が乗り入れていますが、東北新幹線は看板路線で、フラッグシップ車両を投入しています。その点では、JR東日本はミニ新幹線に対しては難色を示すのではないかと思います。
ただし、函館〜札幌間を運行するというのであれば話はかなり変わってくるでしょう。特に、新函館北斗駅での乗り換えが解消され、所要時間も1時間45分程度と、在来線よりも2時間の短縮が予想されます。
函館〜札幌間の所要時間が1時間45分程度となれば、所要時間の面では札幌〜旭川間の1時間25分と大差がなくなり、函館が札幌の経済圏に入ることが期待できます。観光面についても同様です。
大泉市長は速やかに調査を着手して、2023年度中にも結果を出したいとしています。報道では工事費用を75億円と見積もっていて、これを函館市が先行投資しても、後から回収可能な未来があると考えているようです。
とはいえ、当然ながら函館市だけの話で済むわけはなく、JR北海道やJR東日本、国や北海道、沿線の七飯町・北斗市を始め、なによりも市民からの理解を得なければ始まりません。そう考えると2023年度中に結果が本当に出せるのかは疑問ですが、まずは今後の動向を注視していきたいと思います。
(ぬまっち)