■56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rには学生メカニックも参加
2023年4月16日(日)に決勝レースが行われた「2023 AUTOBACS SUPER GT Round1 OKAYAMA GT 300km RACE」。
スタート時こそ青空が垣間見れた岡山国際サーキットでしたが、次第に風向きが変わり、雲が出てきたかと思えばかなり大粒の雨が降り注いでくる…という天候。
雨というよりは嵐! そして雹まで降ってくるという、とんでもない天候の変化に、赤旗が出されるレース中断が2回も行われてしまう、荒れたレース展開となってしまいました。
ただ、この大雨の厄介なところは、1回に降る時間が短かったというところ。1回目の赤旗の際には、再スタートに向けウェットタイヤにしたものの、しばらくすると雨はやみ、ピットインしてスリックタイヤに履き替えるとまた降りだす、という感じ。まさに監督泣かせの天候です。
昨年のチャンピオン・56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rを走らせるKONDO Racing Teamの近藤真彦監督も、赤旗中断中にタイヤチョイスなど対応を検討するために、頭をフル回転させて考えまくっている様子がうかがえます。
そんな近藤監督の一挙手一投足を見逃さないように見つめている若者たちがいました。
それが日産自動車大学校の学生の方々です。
この学生の方々が行っていたのは、ピットに学生を派遣して、ピット作業を体験させることにより、多くの学びを得るべく、KONDO Racingと日産自動車大学校が手をとりあい、2012年のスーパー耐久ST-Xクラスから始まった活動です。
2019年からは日産販売会社のテクニカルスタッフも加え、「日産メカニックチャレンジ」としてスーパーGTに舞台を移し、より過酷な現場を肌で感じています。
2022年にはスーパーGTに加えて、再びスーパー耐久にも活動の範囲を広げており、より多くの学生が体験できるようになりました。
今回、このピット作業の体験をした学生の方々4名は全て、学校説明会でスーパーGTなどの体験学習があるというのを聞いて、日産自動車大学校に入学を決めたとのこと。
将来的には国家資格を持った自動車整備士として、ディーラーなどへの就職を目指していくことになる彼らですが、ミスが許されない上に短時間で整備や修理を行うという、時間的な制約のあるレースメカニックのピット作業を体験して、かなり多くのことを学んでいったようです。
雨のレースともなればタイヤ交換が必要ですが、その交換するタイヤをピット作業エリアに迅速に持ち込むための通り道の確保や、作業や整備をしやすくするという意味でのマシンの清掃など、ひとつひとつの作業の理由を教えられ、考えて、仲間と話し合うということで、作業効率などの先にある目的意識を学んだ、と参加した学生の方々は異口同音に語ります。
たとえばモータースポーツで言えばそれは万全に戦って得る勝利となります。
●ピット作業以外にも活躍の場があるサーキット
学生の方々はピット作業以外にも多くの活躍をしています。
ピット作業を担当した学生の方々は、ピットウォークでは配布物を担当。
そして、スターティンググリッドにも活躍の場があります。
スターティンググリッドで活躍と言えば、レースクイーンを思い浮かべますが、学生の方々にも重要な任務が与えられます。
スーパーGTに限らず、多くのレースではマシンにスポンサーがつきます。スターティンググリッドではそのスポンサーの幟や旗を掲げることが多いのですが、その幟を持つという任務が与えられるのです。
そして、そんなスポンサーの方々をお迎えするホスピタリティテントがグランドスタンド側に設けられていましたが、こちらの設営やゲストへのおもてなしなどをしているのも、日産自動車大学校の学生です。
ホスピタリティ担当のリーダーの学生の方にお話をうかがうと、「お弁当や飲み物を提供するということだけでも、人数が多ければ、担当メンバーとよく話し合って動かないといけません」と語ってくれました。
さらに、「このテントにいらっしゃる方々は、レーシングチームや学校のこのプロジェクトのスポンサーの方々で、特に社長さんや重役の方が多いので、一緒に活動する販社の営業の方々とも話し合いながら、失礼のないビジネスマナーも教えてもらい活動しています」とも話していました。
これらの活動に参加する学生の方々は、全て希望者を募るというカタチで募集しているとのこと。
メカニックもホスピタリティも、すべては将来的にお客様の愛車を手掛けるうえで必要な体験だろうと学生の方々が思っている、ということがひしひしと伝わってきます。
(写真:吉見 幸夫、松永 和浩/文:松永 和浩)