■マイナーチェンジでRのみとなっていた4WDモデルが復活
ミドルサイズSUVのVWティグアンは、フォルクスワーゲン(VW)ブランドの中で世界的に人気の高いモデルの一つです。2019年には91万1000台が生産され、ヨーロッパではベストセラーSUVとなっています。
現行型VWティグアンは2017年に日本市場に導入され、2021年5月にマイナーチェンジを行っています。
内外装の変更に加えて、シリンダー休止機能の付いた1.5L直列4気筒ガソリンターボエンジンの搭載。最新のドライバーアシストシステムの採用。そして、進化したコネクティビティ機能の採用など商品力に磨きを掛けています。
さらに、このタイミングで最高出力320ps・最大トルク420Nmを発生する最新の2L直列4気筒ガソリンターボエンジンを搭載したティグアンRを追加しています。
ティグアンRは、2L直列4気筒ガソリンターボ+7速DSGというパワートレインを搭載し、前後タイヤの駆動力配分に加えて、後輪は左右で駆動力を可変配分するRパフォーマンストルクベクタリング機構を搭載した、4モーションと呼ばれる4WDシステムを採用したハイパフォーマンスモデルです。
マイナーチェンジ前は2Lディーゼルターボエンジン搭載車にも4WD車が設定されていました。しかし、マイナーチェンジ後の4WD車はハイパフォーマンスモデルのティグアンRのみで、1.5Lターボエンジン搭載車は2WD(FF)のみとなっていました。
そして2022年9月に、最高出力190ps・最大トルク320Nmを発生する新搭載の2Lガソリンターボエンジンを搭載した待望の4WD車が設定されたのです。
グレード構成は1.5L車同様、エントリーグレードのアクティブ、LEDマトリックスヘッドライトや純正インフォテイメントシステム“Discover Pro”、デジタルメータークラスター“Digital Cockpit Pro”など、先進装備を標準装着したアクティブアドバンス。そして、専用の内外装に加えて、アダプティブシャシーコントロール“DCC”や本革シートをオプションで選択できるRラインの3グレードを設定。
ティグアンRを含めて4グレードで4WD車を選べるようになりました。新設定された2.0TSI 4モーションの新車価格は479万2000円~581万6000円となっています。
●基本性能が高レベルなうえに利便性や安全性にも不満が見当たらない
今回試乗したのは、ティグアン4モーションRラインで、車両本体価格は581万6000円です。
さらにメーカーオプションとして、31万9000円のレザーシートパッケージ、22万円のDCCパッケージ、25万3000円のラグジュアリーパッケージ。そして3万5200円のフロアマットを装着し、合計667万8400円という仕様です。
31万9000円のRライン専用のレザーパッケージは、Rライン専用のレザーシートをはじめ、運転席/助手席のパワーランバーサポート付のパワー機能、電動各方式リモコンドアミラー(ヒーター、メモリ、リバース連動機能[助手席付])が含まれます。
22万円のDCCパッケージは、アダプティブシャシーコントロールDCCと225/40R20インチタイヤ+5ダブルスポークの20インチアルミホイールのセット。
そして、25万3000円のラグジュアリーパッケージは、電動パノラマスライディングルーフと、ハーマンカードン製のプレミアムサウンドシステムとなっています。
試乗車は20インチのスタッドレスタイヤが装着されていましたが、全く乗り心地や走行安定性をスポイルしていません。試乗した感想は、VWらしい走行安定性と乗り心地の良さが際立っている、ということです。
最高出力190ps・最大トルク320Nmを発生する2L直列4気筒ガソリンターボのパワーとシャシーの絶妙なバランスが、この安定感と乗り心地の良さを演出してくれると考えられます。
まさにクルマの基本である「走る」「止まる」「曲がる」が高次元で実現されており、ドライバーが不満に感じる部分がほとんどありません。
ティグアン4モーションRラインのボディサイズは、全長4,515mm×全幅1,860mm×全高1,675mmと、国産車ではトヨタRAV4などとほぼ同じサイズです。
背の高いSUVながらコーナリング中のロール量も抑えられており、乗員全員が安心して移動することができます。強いて、欠点を言うとマジメすぎてエンターテイメント性が乏しいというところでしょうか。
ラゲッジ容量は5人乗車時で615L。後席を倒すと最大で1,655Lまで拡大します。
リアシートは前後にスライド機構を採用しており、積載量に合わせてアレンジが可能となっているなど、細部に渡って工夫が施されています。
運転支援システムは、トラベルアシストと呼ばれる新システムを搭載。これは、0~210km/hまでの速度範囲で、ステアリング、ブレーキング、加速操作を行うという機能で、ハンドルに設置された専用のトラベルアシストボタンを押すことで簡単にシステムを起動することができます。
また、緊急時停車支援システム“エマージェンシーアシスト”を搭載。
ドライバーが意識を失うなど運転操作を行えない状態をシステムが検知すると、警告音と警告表示により注意を喚起。それでも操作が再開されない場合、ハザードランプおよびブレーキランプの点灯と同時にホーンを鳴らし、周囲への注意喚起を行い、同一車線内においてクルマを減速させ、最終的に停車させます。車両の暴走による事故を未然に防ぎ、被害を最小限に抑える機能も採用しています。
高い走行性能に加えて、充実した安全装備、そして戦略的な価格。輸入車は高いというこれまでの常識が、このティグアンには当てはまらないと言えるでしょう。
(文・写真:萩原 文博)