自動運転のスープラがドリフト走行をキメる! トヨタがその技術を開発する理由とは?

■ドリフトを“手放し”で決めるスープラ?

TOYOTA RESEARCH INSTITUTEが開発した自律走行プログラムを搭載するスープラのテストカー。テスト中の様子
TOYOTA RESEARCH INSTITUTEが開発した自律走行プログラムを搭載するスープラのテストカー

シリコンバレーを拠点に、人工知能技術の研究・開発をおこなう「TOYOTA RESEARCH INSTITUTE, INC.(以下、TRI)」は、テストコース内で豪快にドリフトするスープラのムービーを公開しています。

ドリフト走行するスープラだが、ドライバーは何もしていない!
ドリフト走行するスープラだが、ドライバーは何もしていない!

華麗にドリフトを決めるスープラですが、コクピットが映し出されると、なんとドライバーがステアリングを握っていないことが分かります。この車両、TRIが自律走行技術開発のためにつくったテストカーなんです。

●プロドライバー並みの反射神経を自律走行で実現

果たして自律走行に、ドリフト走行が可能なほどの“スゴテク”は必要なのでしょうか? その背景について、TRIは「プロのレーシングドライバー並の反射神経を一般のドライバーが享受することで、最も困難な緊急事態に対処できるようにすることが目標です」と主張しています。

TRIは、クローズドコースで障害物を避けながら、自律的にドリフト走行するプログラムをスープラに搭載。もしもこの技術が量産モデルに実装されれば、ツルツルの凍結路面や、急に障害物が表れた時などでも、安定した状態でクルマを走らせ続けることができるでしょう。

●「人に代わる」のではなく「人を補う」技術を

TOYOTA RESEARCH INSTITUTEが開発した自律走行プログラムを搭載するスープラのテストカー。フロント
TOYOTA RESEARCH INSTITUTEが開発した自律走行プログラムを搭載するスープラのテストカー

彼らは、自律運転技術を「人に代わる」ものではなく、「人を補い、拡張する」ためのものと位置づけています。今回開発したプログラムも、非常に難しい状況に陥った際、クルマ側がプロドライバーに匹敵するスキルで危険を回避するという、新しいレベルのアクティブセーフティといえます。

ご存じのとおり、ドリフトテクニックは一朝一夕で身につくものではありませんし、一般のドライバーには習得するだけの時間も場所もありません。そこでTRIは、車両がもつ性能の全領域をコントロールする方法を模索・検討し、運転のエキスパートが誇るスキルで、一般ドライバーの運転を“補完”するための技術を構築しようとしているのです。

●ドリフトドライバーの具志堅士郎さんも参画

TOYOTA RESEARCH INSTITUTEが開発した自律走行プログラムを搭載するスープラのテストカー。サイドビュー
テストカーは、フォーミュラドリフト競技マシンに準じた仕様となっている

この“オンデマンド型”自律走行プロジェクトは、TRIとスタンフォード大学のダイナミックデザインラボが1年以上前にスタートさせました。現在のみならず将来の傾向まで「予測」したうえで制御を行う手法「非線形モデル予測制御(Nonlinear Model Predictive Control:NMPC)」を用いたアプローチにより、車両の性能を限界まで拡張するプログラムを開発できたといいます。

自身の動きを自律的に制御できるアルゴリズムにより、スープラは20分の1秒ごとに新しい軌道を計算しながら、優雅に車体をバランスさせながらコースを周回していきます。

TOYOTA RESEARCH INSTITUTEが開発した自律走行プログラムを搭載するスープラのテストカー。テスト中の様子
今回の自律走行プログラム開発にはプロのドリフトドライバーも参加したという

研究用のスープラには、コンピュータ制御のステアリング、スロットル、クラッチ、シーケンシャルトランスミッションに加え、各ホイールにブレーキ機能を搭載。また、プロドライバーの運転からデータ収集を行うため、エンジン、トランスミッション、サスペンション、シャシー、安全システム(ロールケージや消火器など)などは、フォーミュラドリフト競技マシンに準じた仕様になっています。

なお、プログラムの開発には、GReddy(トラストの海外展開ブランド名)と、ドリフトドライバーの具志堅士郎さんが参画したということです。

三代やよい