目次
■レースで勝つことを前提に軽量化を進めた特別仕様車
2001(平成13)年12月7日、スバル(当時は、富士重工業)はインプレッサWRXシリーズに「STi タイプRA スペックC」を設定することを発表、12月10日から発売を始めました。WRX STiの戦闘能力を高めるため、軽量化を中心にブラッシュアップを行いました。
●インプレッサWRXはその卓越した走りでWRCを席巻
インプレッサは、レオーネの後を継ぐ形で1992年にデビューしました。
ボディタイプは、4ドアセダンとスポーツセダンのWRX、5ドアのスポーツワゴンの3種。エンジンは、すべて水平対向4気筒エンジンで、2.0L DOHCターボ(EJ20型)とNA(無過給)SOHCの1.8L(EJ18型)、1.6L(EJ16型)、1.5L(EJ15型)の4機種で構成され、駆動方式は4WDとFFが用意されました。
スバルはイメージ強化のため、1993年にインプレッサWRXでWRC(世界ラリー選手権)への挑戦を決断。そのベースとなったSTI(スバルテクニカルインターナショナル)を中心に手掛けたコンプリートカー「WRX-STi」を1994年1月に発売します。EJ20ターボエンジンのファインチューニングによって、最高出力/最大トルクは250PS/31.5kgmに達しました。
成果はすぐに結実し、1995年から3年間マニュファクチャラーズタイトルを獲得するという、日本初の偉業を成し遂げ、インプレッサは世界中のファンが憧れるスポーツモデルへと駆け上がりました。その年の11月には、さらにサーキット・競技用にカスタマイズされた275PSの「WRX STi タイプRA」が投入されました。
●軽量化で走りを磨いた特別仕様車のスペックC
2000年にデビューした2代目インプレッサにもWRX STiが設定されましたが、ボディ剛性を上げることで重量が大幅に増加。そこで、その1年後に約90kgの軽量化などを施して、レース用にカスタマイズして走行性能を向上させた特別仕様車「WRX STi タイプRAスペックC」が投入されました。
エンジンは、名機EJ20の2.0L直4水平対向DOHCターボエンジンをファインチューニングして、トルクアップによって動力性能を向上。他にも、サスペンションジオメトリーの変更などによって操縦安定性とコントロール性の両立、トランスミッションオイルクーラーの採用、インタークーラーウォータースプレーの容量増大などによる耐久信頼性の向上が図られました。
その後もインプレッサWRX STiは、3代目、4代目と進化し続けましたが、2008年のスバルのWRC撤退とともに、ラリーカーのイメージはやや薄らぎました。そして、モータースポーツの世界で輝いた栄光のEJ20エンジンを搭載したWRX STIは、残念ながら2019年にその役目を終えました。
●WRX STIも電動モデルとして復活か?
WRX STI復活の噂もありましたが、最新情報の次世代WRXについては、EVなのかPHEV、HEVなのは定かではありません。電動車両で復活することはあるだろうけれども、ピュアエンジンのWRX STIではなさそうです。
EJ20型エンジンは、高出力と耐久信頼性に優れたエンジンですが、すでに30年以上の歴史を持ち基本設計が古いため、環境性能については決して優れたエンジンとは言えません。水平対向エンジンという特殊なエンジンのため、容易に環境対応デバイスが適用できないという事情もあります。
そのため、CAFÉ(企業平均燃費基準)規制の足を引っ張ってしまうのが、ピュアエンジンモデルで復活できない最大の理由です。
カーボンニュートラルに向けたCO2規制や騒音規制によって、多くのエンジン搭載のスポーツモデルが消えていく運命にあります。電動車のWRXが登場したとしても、エンジンをこよなく愛するスバリストを満足させてほしいものですね。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)