スズキ「ワゴンRスマイル」の視界はどうだ?目視とモニターを徹底チェック!!【新車リアル試乗4-4 SUZUKI WAGON R SMILE 駐車/荷室/空調・換気性能編】

■「こんなものまで!」もある、ワゴンRスマイルの日常性を見てみよう

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車庫入れをはじめとする、ワゴンRスマイルの日常性を見ていく

ワゴンRスマイルリアル試乗の4回目は、このクルマの日常性について見ていきます。

車庫入れ性や荷室のサイズ、空調性能…クルマを買うときに浮かれて忘れがちなこれらの部分について確認してみましょう。

●背が高いことにはちがいなし。車庫入れ、駐車時は、クルマの真上のこともお忘れなく

ワゴンRスマイルのガラス構成は、片側4枚、左右合わせて8枚となる、いわゆる8ライト式です。軽自動車サイズだと、斜め後方視界を助けるクォーターガラスは、外から一見して有効視界が得られそうでも、中から見ればピラーが太い、セラミック塗装部が広いなどでそれほどでもないクルマが少なくないものですが、このクルマのクォーターガラスの有効視野は割と広いほうだといっていいでしょう。

当然、このガラスはバックや車庫入れ時にものをいい、ワゴンRスマイルのバックはしやすい部類に入ります。そもそも軽自動車ゆえ、5ナンバーサイズ枠前提に造られた車庫を持っているひとなら難なく収めることができます。

というわけで、いつものようにうちの車庫でクルマの入れやすさを見てみました。

garage 1 with measure
うちの車庫の寸法はこのとおり

車庫サイズは写真のとおり。東京のような都市圏はともかく、郊外or地方都市の一般的住宅の車庫はこのようなものでしょう。

第1回でも書いたと思いますが、車両サイズは3395×1475×1695mm。前回採り上げたN-BOX、同じスズキのスペーシアほどではないにしても、通常の乗用セダンなどに比べれば背が高いことには違いなく、ポートがある場合、それなりに高さが確保されているにしても、バック時には屋根の高さも意識するくらいの警戒心は持っていたほうがいいでしょう。

実際に車庫に入れるときのようすは写真のとおりです。

ポートや支柱に、車道確認用のミラーなどを備えているひとは、せいぜいそれらとルーフサイドを接触させないように気を配るのが必要なくらい。

大急ぎで改良してほしいのは、左ドアミラーの視認性。決して粗さがしではありません。計器盤助手席側の、光沢付きアイボリーの化粧板が左ドアガラスに映り込み、運転姿勢での左ドアミラーの視認性を阻害しています。これはたまたま車庫入れ時に気づきましたが、車庫入れ時に限らず、季節や天候、太陽との相対位置によっては、いつでもこの見にくさと付き合わなければいけません。化粧パネルが暗めのネイビーパールになるボディカラーを選ぶか、パネルを交換するかして影響を少なくするか。

いま確実にできるのは、左ドアガラスを下げることで映り込みをなくすことですが、そもそもそのようなことをしなければミラーがよく見えないインパネ造形またはカラーにするのがまちがっているわけで、本当の意味で解決したければ、計器盤のデザインをイチからやり直すしかありません。ドアミラーを手前に移動すれば首振り量が大きくなるし、フロントピラー根元に移せば、ガラス有効視野とミラー幅、ドライバー位置の関係から余計見にくくなるだろうし…同じ事象は右ミラーでは見られませんでしたが、とにかく早急なる改善を望む点です。

ここから先は、先回のN-BOXでも同じ感想を抱きましたが、車庫入れ速度…ほぼアイドリングに近いときのエンジン音とファンの音がかなりやかましく、深夜・早朝の帰宅時にはご近所に気兼ねするほどでした。このクルマの場合は、第1回でも触れたとおり、走行時のエンジン音も大きかったのですが、エンジンそのものの音をもっと低減されればと思います。

もうひとつ、これはユーザー側の注意点ですが、ハンドルの回転数が多く、タイヤ切れ角も大きいため、何となく流れに任せてハンドルをフルにまでまわしがちです。ためにカタログ値4.4mという優れた最小回転半径でまわることになるわけですが、車庫入れシチュエーションではまわりすぎ。入口付近のフェンスなどに当たりそうになります。ハンドル回転数とタイヤ切れ角はギヤ比次第なので、必ずしもハンドル回転量とタイヤ切れ角は一致しないのですが、納車まもない頃、特に小まわり性が優秀でないクルマから乗り替えたばかりのひとは注意が要ります。

●全方位モニター

「全方位」のとおり、車両周囲にカメラを4つ設け、自車周辺をモニターに映し出してパーキング操作をアシストする電子デバイス。

いま、筆者の中には「軽自動車のくせに贅沢な」とつぶやく否定派の山口と、「いや、老若男女問わず広く使われる軽自動車にこそ有用だ」と認める肯定派の山口、ふたりいます。

ワゴンRスマイルには、というよりも、最新のスズキ車ではおおかた「メモリーナビ付き全方位モニター装着車」と、販社オプションナビ用に対応するためのカメラ、アンテナ各種、USBポートがつくにとどまる「全方位モニター用カメラパッケージ装着車」の2種があり、試乗車には前者がついていました。

こいつがなかなかの高機能で、トヨタと関係を持つようになったためか、以前採り上げたヴォクシーと同等の機能まで有していました。そういえば、長らく日産セレナのOEM版で続いてきたランディが夏にヴォクシーに変わったっけ。

ワゴンRスマイルの場合、メモリーナビ付き全方位モニター装着車は18万7000円高、同カメラパッケージ装着車は5万5000円高(いずれも消費税込み)…前出の否定派は「車両価格も維持費も安いのが本分である軽自動車用にしては値段が高い」と嘆きますが、肯定派は「高いけど、不要ならつけなきゃいいだけの話だし、へたくそ運転のやつがしょっちゅうボディをぶつけることを思うと、修理費2~3回分で元がとれるんだから、選んでおいても後悔はないんじゃないの?」と反論します。さあ、あなたならどうしますか?

all around monitor 1 front camera wt
全方位モニター用のカメラは、フロント側に3つ

車両に取り付けられるカメラは、スズキセーフティサポート用のカメラとは別に、フロントバンパーに設けられるフロントカメラ、左右ドアミラー下のサイドカメラ、そしてバックドアのハンドル部に備えられるバックカメラの計4つ。これらからの映像をモニターに表示し、バンバー内のセンサーが障害物を検知すれば併せて警告します。

表示画面は前方3とおり、後方3とおりです。

【前方】

シフトレバーをN、Dに入れ、必要に応じてモニター右上のカメラスイッチを押すと、下記のうちのどれかがモニターに映し出されます。

<トップ映像+前方映像(初期状態)>

all around monitor 3 top and front view wt
トップ+前方映像。初期状態はこの画面

車両の周囲を画面左で、前方の映像を右画面で表示します。

<前方ワイド映像>

all around monitor 3-2 front wide view wt
前方ワイド映像

名のとおり、車両前方の映像をワイド=広範囲で表示する画面です。

<サイド映像+前方映像>

all around monitor 3-3 side and front view wt
サイド映像+前方映像

車両の助手席側の下と車両前方を表示します。

カメラスイッチを押したときのほか、上記画面表示から3分以上経過したとき、ナビ操作を行ったとき、車速が約10km/h以上になったときには元の画面に戻るのと、約10km/h以上のときにカメラスイッチを押すと画面左にサイド映像を表示、このとき約10km/h以下になると前方映像に切り替わります。

【後方】

シフトレバーをRに入れたとき、次のいずれかの画面が表示されます。

<トップ映像+後方映像>

all around monitor 4 top and rear view wt
トップ画像+後方映像。後ろ側はこの画面が初期状態だ

車両の周囲を画面左に映すと同時に、→画面で車両後方を表示します。

<後方ワイド映像>

all around monitor 4-2 rear wide view wt
後方ワイド映像

車両後方の様子を画面いっぱいにワイドに表示します。

<サイド映像+後方映像>

all around monitor 4-3 side and rear view wt
サイド映像+後方映像

車両助手席側の下と後方を画面左右に分けて表示します。

さて、画面内にはさまざまな意味を持つラインなりマークなりがあります。後方映像内のラインは、自車から後方約0.5m、1m、2mを示していますが、この数値そのものが画面に記されていないのは不親切です。壁か障害物に近づくにつれ、緑、黄色、赤と信号機カラーで示すという工夫はあるにしても、その意味は取扱説明書を見なければわからない。それも去ることながら、クルマの停止位置は多くの場合、50cm、1m…という距離でよりも、バックドアが開けられるか、ひとが通れるかどうかという観点で決めるのではないでしょうか。その意味では、毎度いっていますが、距離表示線に加えてバックドア開閉可能限界線を入れてくれるとより利便性が向上すると思います。

garage 2 back door full open wm
ぜひ、この写真の赤線と黄色線をバックモニター画面に表してほしい。永遠にいい続けてやる!

写真は例によって、後方車両からバックドアが開けられる距離を残してワゴンRスマイルを置いたときのもので、このときの間隔は筆者実測で、バックドアの張り出し量が707mm、後方車両との距離は1077mmでした。このときの線を画面内に入れてほしいのです。このクルマなら約0.7m線、ひとのスペース余裕込みの50cmを加えた1.2m線の2本も表示するほうが、よほど実情に即していると思うけどなァ。

【3Dビュー】

さきにヴォクシー並みの機能といったのはこの3Dビューのことで、エンジンスイッチをONし、ナビのオープニング画面を終了すると表示されます。また、シフトレバーがPのときにカメラスイッチを押しても表示されます。

以下のふたとおりに表示します。

<パターン1(初期状態)>

まるで自車上方をぐるりとまわるドローンで映したかのような映像をモニター表示するものです。

<パターン2>

車両周囲の映像を、車内からの視点で表示します。

当然ながら、4つのカメラ映像をユニットが合成したものなので、前述の前方・後方画面のトップ映像もそうですが、画面内のワゴンRスマイルはイラストで、車両周囲の映像もカメラまでの高さのもの。ゆえ、よく見ると不自然に映りますが、まあ、細かいことはいいっこなしにしましょう。

ヴォクシーのものと異なり、通過した後の床下映像を変換&時間差で表示する疑似スケスケ描写はありせんでしたが、この3Dビューは見ていてなかなか楽しいものでした。

●トランクルーム

luggage room 1 min
後席使用時の荷室。後席スライドがいちばん後ろの状態
luggage room 3 max
後席両方たおし

しょせん軽自動車。人間のためのスペースを最大限に、エンジンルームを最小限に抑えようとすれば、荷室はその残りしかあてがわれません。ワゴンRスマイルもしかりですが、後席背もたれを倒すなりスライドさせるなりすれば、まあ日常的にはこれでも不足なかろうという容量にまで拡げることができます。

荷室サイズは写真のとおりです。

「いいな」と思うのは、後席背もたれを倒すとき、座面がフロアに下がる点です。そのおかげで倒した後もほぼ完全に水平フラットになります。このあたりを手抜きしたクルマは拡大した床面が斜めになる…「ま、この程度なら」と思うのですが、いざフラットになるフロアを目にすると、その違いは大きく感じられるものです。この荷室のフラットフロアを知った後、別の「手抜き」したクルマに乗り換えたら、ワゴンRスマイルに戻したくなるかもしれません。

軽自動車のくせに後席がリクライニングするわ、スライドするわ、座面が下がりながら倒れるわ…このクルマより値段の高い普通車も、まだまだやることはありそうですな。

荷室サイズが把握できるよう、いつものように、ティッシュの箱を並べた写真も添えておきますので参考にしてください。

●空調と換気性能

auto air-conditioner control panel wt
フルオートエアコンの操作パネル

ワゴンRスマイルは、全機種フルオートエアコンが標準装備。いま流行りのプラズマクラスターやナノイーといったものはありません。というと安物みたいですが、空調なんぞヒーターだけなのがあたり前、車内を涼しくしてくれるクーラーがついているだけで御の字という頃を知る目には、フルオートエアコンというだけでもずいぶん贅沢品に感じられます。

余談ですが、うちのクルマにクーラーがない頃、たまに見かけるクーラー付きのクルマの中には、リヤガラスの下に、えらそうに「冷房車」のシールを貼っていばっているクルマがありました。

そうそう、OEMを除く自社生産のスズキ車は、標準仕様、寒冷地仕様という区分けをしていないので、他社では寒冷地仕様に限られることの多い後席用のヒーターダクトも備わっています。

ここからはいつものように、筆者発案のいいかげんな感覚による換気性能調べ。

高速道路で走行風圧(ラム圧)による外気導入量を見るというもので、自動車会社の実験部並みに何かの測定器で車内外の圧力差を見るのでもなければ、たばこかお線香の煙をくゆらせてその流れを見るのでもなく。空調コントロールを「上半身送風」「外気導入」「ファンOFF」にし、80km/h時、100km/h時の自然風の導入量が、全ファン風量8段階のうちのいくつくらいに相当するかを見てみました。

結果は…、

【80km/h時】
ファン風量全8段階中、以下それぞれの状態で次の風量に相当。

・全窓閉じ:0.1未満
・運転席窓10mm開:0.2
・助手席窓10mm開:0.2
・両席窓10mm開:0.2

【100km/h時】

・全窓閉じ:0.1未満
・運転席窓10mm開:0.2
・助手席窓10mm開:0.2
・両席窓10mm開:0.2

風は毎度計器盤センターの吹出口に手を当てて調べるのですが、その量たるや、このクルマの場合はほとんど虫の息。しかも、80km/h時も100km/h時もまったく同じでした。雨の日以外、ひとり乗車のときはガラスくもりが発生することはありませんでしたが、複数人乗車ではわかりません。湿度の高い日ならアッという間にくもる可能性があるし、二酸化炭素濃度が増して眠気をもよおすことも考えられなくはありません。このようなときは積極的に窓を開けるなりデフロスターを働かせるなりの配慮が要りそうです。クルマの気密性が高くなったからいいのだといえばそれまでですが、それにしてももうちょい風の入り量は増やしてもいいのではないかと思います。

驚いたのはクーラーの効き。フロン12から始まったクルマ用クーラーのガス(冷媒)は、オゾン層破壊防止のためと、1990年代にフロン134aに置き換えられ、ここ数年は地球温暖化抑制をねらいにHFC-1234yfに変わろうとしています。冷媒が変わるにつれ、冷やす性能は低くなるといわれており、暑さに弱い筆者は最近のクルマの冷房性能に懐疑心を抱いていたのですが、その落ち込み分をどんな仕掛けでカバーしているのか、ワゴンRスマイルのクーラー性能に何ら不足はありませんでした。これまで使ってきたクルマのうち、半分はクーラーでひどい目に遭わされてきた筆者が満足したのですから間違いなしといっておきましょう。

空調パネルの操作感についてはあとで述べることにします。

今回はここまで。

次回、リアル試乗・ワゴンRスマイル「ユーティリティ編」でまた。

(文・写真:山口尚志)

【試乗車主要諸元】

■スズキワゴンRスマイル ハイブリッドX(5AA-MX91S型・2021(令和3)年型・2WD・CVT・コーラルオレンジメタリック アーバンブラウン2トーンルーフ)

●全長×全幅×全高:3395×1475×1695mm ●ホイールベース:2460mm ●トレッド 前/後:1295/1300mm ●最低地上高:150mm ●車両重量:870kg ●乗車定員:4名 ●最小回転半径:4.4m ●タイヤサイズ:155/65R14 ●エンジン:R06D(水冷直列3気筒DOHC) ●総排気量:657cc ●圧縮比:12.0 ●最高出力:49ps/6500rpm ●最大トルク:5.9kgm/5000rpm ●燃料供給装置:EPI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:27L(無鉛レギュラー) ●モーター:WA04C(直流同期電動機) ●最高出力:2.6ps/1500rpm ●最大トルク:4.1kgm/100rpm ●動力用電池(個数/容量):リチウムイオン電池(5個/3Ah) ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):25.1/22.6/26.2/25.7km/L ●JC08燃料消費率:29.2km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式/トーションビーム式 ●ブレーキ 前/後:ディスク/リーディングトレーリング ●車両本体価格159万2800円(消費税込み・除くディーラーオプション)