■コンパクトでクリーン、高い静粛性という利点を備える
ヤマハ発動機の広報グループが発信している「ニュースレター」。今回は、低速電動モビリティがテーマです。
舞台となるのは、鉄と魚とラグビーの町で知られる岩手県釜石市。釜石の北上山地西部に位置する釜石鉱山は、良質な鉄鉱石の産地として明治時代から栄えてきたそうです。
大規模な採掘は、1993年に終了し、現在は地下水力発電所による発電をはじめ、岩盤から湧き出すミネラルウォーター「仙人秘水」の産地としても注目を集めています。
釜石鉱山が管理する現在の坑道はアリの巣のように伸び、1年を通して湿度90%、気温10度という厳しい環境が保たれています。
その中でヤマハ発動機製の5人乗り電動ランドカーが活躍。ビジネス視察の来場者や社会科見学の子どもたちを乗せて、ゆっくりと一定の間隔を保ちながら進んでいきます。
釜石鉱山の千葉慎吾さんは、「2021年に電動カートを導入するまでは、枕木の上にレールを敷いてバッテリー式のトロッコを走らせていました。しかし、補修部品の入手が困難になり、専門の技術者も見つからないなどの課題解消が困難なことから、トロッコに代わる移動手段の検討をスタートさせたのです」と、5人乗り電動ランドカー導入の経緯を語っています。
2021年3月から稼働された5台の電動ランドカーは、ヤマハ発動機のゴルフカー事業で実績のある電磁誘導技術によって、あらかじめ設定されたルートを自動走行。
また、車間を保つ制御システムにより、5台の合計で最大22名の乗員(安全運行員を除く)を、最奥部に近い仙人秘水の水源まで案内しています。
千葉さんはさらに、「トロッコの時代は、同行者と会話ができないほど騒音が出ましたし、大きな振動もありました。クリーンなだけでなく静かな電動ランドカーは、見学者の快適性にも貢献しています」と、同モデル導入のメリットを披露。
さらに、車両に装着されたタブレットで案内を行うなど、より充実した見学を提供するための取り組みも行われているそうです。
また、ヤマハモーターパワープロダクツの松浦由樹さんは、「最初にご相談をいただいてから約4年。初めて坑道を見させていただいた時には、これは難しいと感じたことを覚えています」と困難な導入だったことを明かしています。
「走行路には川のように水が流れ、剥き出しの岩盤がカーブを塞ぐような個所もありました。そこから釜石鉱山さんが坑内整備を、我々は、車体やシステムの開発を推進し、昨年春、運行までこぎつけました」と導入までの苦労を明かしています。
コンパクトでクリーン、そして静かなランドカーは、レジャー施設や公共施設、農業の現場など多様なフィールド、シーンで移動や搬送の課題解決に貢献しています。
なお、現在は、感染拡大防止から見学が一時中止されている釜石鉱山ですが、同電動ランドカーがまた活躍する日が待たれます。感染状況が落ち着いたから出かけてみてはいかがでしょうか。
(塚田勝弘)