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■排気音がカッコいいマシンで番付を編成しました
モータースポーツでは、チューニングされたエンジンの奏でる排気音も大きな魅力ですよね。そこで、10月2日~3日に行われたD1GP第7戦と第8戦で、いい音を出している車両をピックアップしてみました。それではさっそくご覧ください。
●横綱:#52 TEAM MORI パーツオフ LINGLONG MARKⅡ(ドライバー:北岡裕輔)
●大関:#56 GP SPORTS 180SX(ドライバー:森 孝弘)
●大関:#36 JAPAN FIGHTER TMS E92(ドライバー:高橋和己)
●大関:#99 MUGEN PLUS 極 シルビア(ドライバー:中村直樹)
●関脇:#33 FRONTIER CHASER VALINO(ドライバー:笹山栄久)
●関脇:#2 SAILUN TIRE D-MAX N-Body S15 SILVIA(ドライバー:田中省己)
●関脇:#9 LINGLONG Team ORANGE S15-2JZ(ドライバー:末永直登)
●関脇:#4 LINGLONG Team ORANGE S15-2JZ(ドライバー:小橋正典)
●小結:#78 VERTEX 超EDGE LEXUS RCV SAILUN(ドライバー:上野高広)
●すべて直列6気筒車
結局、すべて直列6気筒の2JZエンジン搭載車となりました。実際に音を聞いてみると、この9台を選んだことには納得してくれるひとが多いと思います。また実際のところ、この番付の中では差はあまりないです。アクセルの踏みかたによっても変わってきちゃうのではないかというくらいの差です。
ちなみに、D1GPではいま全車がターボ付きです。ターボ車の場合、設定した過給圧になったら排気をタービンの前で逃がしてタービンの回転が上がらないようにするウエイストゲートというパーツがついていて、作動すると「ブシャー」というあまり美しくない音が出てしまうのですが、ここで選んだ車両は、一様にこのウエイストゲートの音があまり大きくなく「ウォオオオオオオン!」と本来の排気音がしっかり聞こえる感じですね。そして雑音が少ないというか、キレイな音の成分が揃っていると思います。
ところで、上に「差はあまりない」と書きましたが、横綱の52号車だけはちょっと違います。市販車のエンジンじゃなくてレーシングエンジンっぽいというか、軽そうできめの細かい金属的な音がするんですね。しかも高回転の音がいいだけでなく、アクセルを踏み込んだ瞬間に一瞬「フワァアン」というわずかにビブラートを伴ったような、なんとも色っぽい音が出たりします。そんな音が出るのはこのクルマぐらいかな。このエンジンを作っているのは、このチームのオーナーでもあるオートサービス・モリの森修監督です。
ところが、ちょっと聞き込みをしてみると、驚きの事実が判明しました。このマシンだけでなく、56号車、33号車、2号車のエンジンも森さんが組んでいるというのです。森監督は最高速やドラッグなどのエンジン製作経験も豊富なベテランチューナーです。やっぱりノウハウがあるのでしょう。そこで、その森監督に話を聞いてみることにしました。
●横綱エンジンチューナーにインタビュー
−森さんが組むエンジンは、どうしていい音が出るんですか?
「作っている人がいいんです!(笑) まぁ、でもレスポンス、性能を求めていくと、そういうふうになるのが基本なんです。F1の音もそうでしょう。詰めていくと、やっぱりワントーン、ツートーン上がっていく」
「圧縮比もあるし、ストロークとかいろいろな要素はあるんだけど、やっぱり全部の…クリアランスだったり組みかただったり…いろいろなところのノウハウの積み重ねだと思いますよ。あと補器類。オレが組んだ4台はタコ足もだいたい同じものを使ってくれてるんで、そういうのもあるかもしれない。仕様は違うけど、4台の音は似てるはずです」
「あと、コレ(自チームの52号車)とアレ(GP SPORTSの56号車)に関しては、たぶんほかのチームでは絶対に使っていないようなパーツも使っています。海外モノとか、オーダーして作ってもらったものとか。そういうところの合計っていうのか、それでいい音が出るようになってくる」
ー中でも特に森サンのチームの52号車は音がいいですが?
「自分のところだったら、多少壊れちゃってもいいじゃないすか。そういうテストも兼ねて自分のとこはちょっと変えて作ったりしてます。少し極端にしちゃって。それが結果として、いい音になってる。あと、たぶんD1の中でうちのクルマがいちばん空燃比は薄いと思います(※薄いとエンジンの調子はよくなるが壊れるリスクは高まる傾向がある)。そこまで詰めてるからね。逆にブーストはかけてないんですよ。1.5kg/cm2です。他は1.8kg/cm2とか2.0kg/cm2とかかけてるでしょ。でも、あまりかけると扱いづらくなってドライバーがアクセル踏めなくなっちゃうから。1.5kg/cm2くらいで、レスポンスがよくて乗りやすいのがイチバンって追求したのが、今のこのエンジンかな」
-いろいろなところの精度も詰めてるし、ほかで使ってないパーツも使ってるし、それがあの音につながってるんですね
「2JZはもう集大成ぐらいにまでなっちゃってるかな。だから、2JZはみんなオレにくれ!と(笑)」
というわけで、今まであまり音を気にしていなかったファンのかたは、D1GPを観るとき、特に生観戦するときには、この9台、なかでもTEAM MORIの52号車の音をよく聴いてみると、また違った楽しみかたができますよ。
なお滋賀県・奥伊吹モーターパークで行われた10月2日の第7戦と、10月3日の第8戦ともに、“いい音”番付でも大関に入っている#90 MUGEN PLUS team ALIVE VALINOの中村直樹選手が優勝しました。
中村選手、第8戦では単走優勝までしてしまいました。
第7戦の単走優勝はD1GP唯一のインフィニティQ60を駆る、#31 TEAM SHIBATA SAILUN TIREの蕎麦切広大選手でした。
次のラウンドは2021年10月30日(土)〜31日(日)の大分県・オートポリスで行われます。
(文:まめ蔵/写真提供:サンプロス・まめ蔵)
【関連リンク】
D1グランプリの詳しい情報は、D1公式サイトで。
www.d1gp.co.jp