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■売れ筋の軽ワゴンやSUV5車種をチェック
今や、日本で走るクルマの約4割を占めるといわれる軽自動車。人気の秘密は、価格や維持費などが比較的安く、燃費がいいモデルも増えてきたことなどが挙げられます。また、小柄な車体は日本の狭い道路事情にマッチしていることもあり、若い世代から子育て世代、高齢者まで幅広いユーザー層から支持を受けています。
そういった人気の高さからか、最近は各メーカーからさまざまな軽自動車がリリースされていますが、実際にどんなモデルが売れているのでしょうか? また、売れている理由はなんでしょうか?
そこで、ここでは、業界団体の全軽自協(全国軽自動車協会連合会)が発表している新車販売台数の最新データをもとに、人気の5モデルをピックアップ。それぞれの魅力などを紹介してみます。
●ホンダ・N-BOX
近年、軽自動車の中で最も人気が高いのが軽スーパーハイトワゴンと呼ばれるジャンルです。
大きな特徴は、まず、全高が1700mmを超えること。高いルーフ高により室内が広く、大人4名がゆったりと座れ、荷物も比較的たくさん積めるのが魅力です。
また、後席にスライドドアを備えているため、小さな子どもや高齢の親でも乗り降りがしやすいことも、幅広いユーザー層から支持を受けている理由です。
そんな軽スーパーハイトワゴンの中で、近年、最も売れているのがホンダの「N-BOX」です。登録車も含めた新車販売台数で2020年までの4年連続、軽4輪車では6年連続で1位を獲得。
また、2021年に入っても、1月から8月まで軽自動車の新車販売台数で常に1位をキープ(累計14万772台)しており、今まさに「日本一売れている軽自動車」と呼べるモデルです。
N-BOXは、初代モデルが2011年に発売、2代目となる現行モデルは2017年に登場しました。
ボディサイズは、全長3395mm×全幅1475mm×全高1790-1815mm。658cc・直列3気筒の自然吸気エンジン(58ps)とターボエンジン(64ps)という2タイプのガソリン車を設定し、いずれも2WD(FF)車と4WD車を用意。WLTCモードで19.0〜21.2km/Lという優れた燃費性能も実現します。
なお、外観デザインには、親しみやすい印象のスタンダードタイプと、精悍さをアップしたカスタムがあります。
このモデルの大きな魅力は、なんといっても車内の広さです。サイズは、長さ2240mm×幅1350mm×高さ1400mm。2.0Lミニバン並みの前後シート間隔を実現し、大人4名が乗っても余裕のスペースを確保。
また、高い室内高により、後席フロアで小さい子どもが立ったまま着替えをすることもできます。
軽自動車でも、こういった広さを実現した秘密は、ホンダの特許技術「センタータンクレイアウト」によるもの。通常は後席や荷室の下にある燃料タンクを前席下に配置する独自の技術です。これにより、N-BOXはライバル車の追従を許さない人気を誇っているといっても過言じゃないでしょう。
また、実用性の高さも魅力です。まず、シートには2タイプを用意。前席と後席の組み合わせにより、多彩なシートアレンジが可能なベンチシート仕様と、助手席が大きく動いて空間を自在に変化できるスーパースライドシート仕様があります。
後席は、19cmものスライド幅があるだけでなく、背もたれを前方に倒すと荷室が広がるダイブダウン機構を採用。さらに、座面を上げることで、背が高く橫にできない鉢植えなどの荷物も積めるチップアップ機構も備えます。
ちなみに、2020年のマイナーチェンジでは、安全運転支援システム「ホンダ センシング」をアップデート。
後方誤発進抑制機能にも用いるソナーセンサーを4個へ増やすことで、後方の障害物の接近を検知しドライバーに注意を促す「パーキングセンサーシステム」を追加。駐車時などの安全性をさらに向上させています。
なお、価格(税込)は、142万8900〜215万2700円です。
●スズキ・スペーシア
軽スーパーハイトワゴンで、N-BOXに次ぐ人気を誇るのがスズキの「スペーシア」です。前述の全軽自協による2020年度(2020年4月〜2021年3月)軽自動車の新車販売台数ランキングで2位(14万5319台)を獲得。2021年も1〜8月の累計で2位(9万8981台)となっており、実質的なN-BOXのライバル車といえます。
初代モデルは2013年に登場、現行の2代目は2017年に発売されています。ラインアップには、カスタムモデルのスペーシアカスタムやアウトドア人気を意識したスペーシアギアもあります。
スペーシアのボディサイズは、全長3395mm×全幅1475mm×全高1785〜1800mmで、背が高いスクエアなボディが特徴です。
エンジンは658cc・直列3気筒ガソリンで、スタンダードのスペーシアは自然吸気(52ps)のみ、カスタムとスペーシアギアにはターボ(64ps)も設定。いずれも2.3KWモーターを搭載したマイルドハイブリッドシステムを採用することで、WLTCモード19.2〜22.2km/Lという優れた燃費性能を実現します。また、全モデルに2WD(FF)車とフルタイム4WD車を設定しています。
一方、室内のサイズは長さ2155mm×幅1345mm×高さ1410mmで、N-BOXに迫る広さを実現しています。
スクエアなボディにより天井も両サイドも真っ直ぐな室内は、余裕の室内高や低いフロアなどと相まって開放感が満点です。全シートに前後の位置を別々に調節できる独立型のシートスライドも採用。乗る人の体格に応じた、広い足元スペースを確保することが可能です。
また、リヤシートはワンタッチでフラットにできるため、荷室に大きな荷物を積み込むことができるのも魅力です。
ちなみに、2020年8月には、スペーシア・シリーズ全車に搭載する安全運転支援システム「スズキ セーフティサポート」をより充実させた一部改良も行われています。
主な変更点は、まず、夜間の歩行者も検知するデュアルカメラブレーキサポートとSRSカーテンエアバッグを標準装備化。また、全車速追従機能付きのアダプティブクルーズコントロールの新採用や、一時停止などの標識認識機能の向上も実施しています。
なお、価格(税込)は、129万8000〜195万9100円です。
●ダイハツ・タント
N-BOXやスペーシアに次いで、やはり軽自動車の新車販売台数で常に上位に入っているのが、ダイハツの「タント」です。
2020年度(2020年4月〜2021年3月)軽自動車の新車販売台数ランキングは3位(12万8218台)。2021年1〜8月の累計でも3位(8万5371台)をキープしており、近年の軽自動車ジャンルで「3強」の一角に入る売れ行きをみせています。
タントは、全高1700mmを超える軽スーパーハイトワゴンの先駆け的なモデルでもあります。
初代モデルは2003年に登場。2007年に発売した2代目では、助手席側のセンターピラーレスとスライドドアを組み合わせたミラクルオープンドアを軽自動車で初採用しました。
元々スライドドアは、子どもや高齢者でも開閉が楽で、狭い駐車場でも開けたときにドアを橫のクルマなどにあてる心配がないこともあり、ミニバンなどファミリー層向けモデルの多くに採用されてきた機構です。
ミラクルオープンドアは、それに加え、助手席側のセンターピラーをなくすことで、前後のドアを開くと開口部がとてもワイドになるのが魅力。荷物の積み卸しや小さな子どもを抱えたままでも乗り降りが楽など、高い利便性を実現し、子育て世代を中心に高い人気を得ました。
現在、この方式は、ホンダやスズキも採用しているため、今では当たり前になりましたが、「背が高い+助手席側ピラーレス+スライドドア」といった、軽スーパーハイトワゴンが売れるための「黄金律」を作ったのがタントなのです。
現行の4代目タントは、2019年に発売。ボディサイズは全長3395mm×全幅1475mm×全高1755-1775mm。一方、室内サイズは長さ2060-2180mm×幅1350mm×高さ1370mmで、おなじく広々とした車内を実現しています。
エンジンは、658cc・直列3気筒ガソリンで、自然吸気(52ps)とターボ(64ps)を設定。駆動方式に2WD(FF)と4WDを用意するのも、ほかの2モデルと同様です。ラインアップには、丸味があるフレンドリーな顔付きのスタンダードと、厚みを持たせたメリハリあるフロントフェイスを採用したカスタムがあります。
現行モデルの大きな特徴は、新たにミラクルウォークスルーパッケージを採用したことです。これは、定評があるミラクルオープンドアの使いやすさをさらに向上させるためのさまざまな機能だといえます。
たとえば、運転席が最大540mm動くロングスライドシート。これにより、運転席と後席間の移動や後席スライドドアから運転席への乗り降りがさらに楽になっています。
また、タントは電動で開閉するパワースライドドアを採用しますが(グレード別設定)、その利便性も向上しました。まず、ドアが閉まりきる前に、フロントドアハンドルのタッチ式リクエストスイッチに触れることで、ドアロックを事前に予約することが可能なタッチ&ゴーロック機能を採用。
さらに、クルマに戻った時のパワースライドドアの自動オープンを予約することが可能なウェルカムオープン機能も搭載。両手に荷物を抱えた時などでも、解錠操作をせずにスライドドアを開くことを可能にしました。
タントには、ダイハツ独自の先進安全装備「スマートアシスト」をほとんどのグレードに設定しています。加えて、2021年9月の一部改良では、上級グレード(Xターボ、カスタムRS、カスタムRSスタイルセレクション)に電動パーキングブレーキやオートブレーキホールド機能、コーナリングトレースアシストを標準装備しました。
特に、ダイハツ車で初採用のコーナリングトレースアシストは、走行中カーブに差し掛かるとドライバーのブレーキを補助し、遠心力に負けず安定した車体姿勢を保つことに貢献。さらなる安全性の向上を実現しています。
なお、タントの価格(税込)は、124万3000〜202万4000円です。
●ダイハツ・ムーヴ
軽自動車では、全高1600mm以上で1700mmを超えない軽トールワゴンも人気です。軽スーパーハイトワゴンほど天井は高くありませんが、広い車内を確保する点は似ています。
もちろん、軽スーパーハイトワゴンの方が、車内がより広い傾向にあります。一方で、背の高さを出すためにボディがかなりスクエアな形状になっているため、走行時に風の抵抗を受けやすいというデメリットもあります。
その点、軽トールワゴンは、風の抵抗を受けにくい流線型のボディデザインを採用するため、走行中の安定性が高いのが魅力です。
そんな軽トールワゴンの中で、近年の一番人気はダイハツの「ムーヴ」です。2020年度(2020年4月〜2021年3月)軽自動車の新車販売台数ランキングは4位(10万1183台)。
2021年1〜8月の累計でも4位(7万3637台)に入っており、ライバルである日産「ルークス」(累計6位・5万8662台)やスズキ「ワゴンR」(累計10位・3万8295台)を大きく引き離しています。
ムーヴは、初代モデルの登場が1995年ですから、息が長いモデルです。当時、絶大な人気を誇ったワゴンRの対抗馬として発売されました。
2014年に発売された現行モデルは、軽量高剛性ボディ骨格構造や足まわりの改良などにより、運転のしやすさを向上。ボディサイズは、全長3395mm×全幅1475mm×全高1630〜1655mm。
エンジンには658cc・3気筒の自然吸気(52ps)とターボ(64ps)を用意し、2WD(FF)と4WDを設定。燃費性能はWLTCモードで18.8〜20.7km/Lを誇ります。
また、ラインアップには、ベースモデルのムーヴと、より質感が高いエクステリアデザインを採用したカスタムがあります。
車内のサイズは、長さ2080mm×幅1320mm×高さ1280mmで、こちらも大人4名がゆったり乗れるスペースを実現します。
ムーヴの後席ドアは、軽スーパーハイトワゴンのようなスライドドアではなく、通常の開閉方式です。ただし、前後ドアは、いずれも約90度まで開くことで、乗り降りや大きな荷物のつみ降ろしがとてもスムーズにできます。
また、2段階で開くため、駐車場などで、子どもが勢いよくドアを開けた場合などでも、隣のクルマにドアを当ててしまうことを防ぐ効果もあります。
ムーヴは、軽スーパーハイトワゴンに負けない室内の広さのほかにも魅力があります。それは、前述したボディ形状やアイポイントが高い運転席などにより、免許を取ったばかりの初心者でも運転がしやすい点です。
また、左右分割式の後席はリクライニングや前倒しも可能など、豊富なシートアレンジを持ち、やはり子育て世代などのファミリー層に大きな支持を受けています。
なお、ムーブの価格(税込)は113万5200〜178万2000円です。
●スズキ・ハスラー
昨今は、SUVも高い人気を誇りますが、軽自動車にもその潮流は及んでおり、その先駆者となったのがスズキ「ハスラー」です。
初代モデルは2014年に登場。2020年1月発売の2代目も売れ行きが好調で、軽自動車の2020年度(2020年4月〜2021年3月)軽自動車の新車販売台数ランキングは6位(8万5426台)を記録。
また、2021年1〜8月の累計でも5位(6万1102台)と、なかなかの健闘ぶりをみせています。
現行モデルの外観は、初代のデザインを踏襲しながらも、全体的にスクエアなフォルムを採用。よりアウトドアテイストを盛り込んだスタイルになっています。
ボディサイズは、全長3395mm×全幅1475mm×全高1680mm。車体には軽さと高剛性を両立した新世代プラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」を採用し、ボディ全体で剛性を高めると共に、優れた操縦安定性と乗り心地を実現しています。
パワートレインには、直列3気筒の657cc・自然吸気(49ps)と658cc・ターボ(64ps)を設定し、全車にマイルドハイブリッドシステムを採用。WLTCモード総合で20.8km/L〜25.0km/Lという優れた燃費性能を発揮します。
ラインアップには2WDと4WDを設定。特に4WD車では、雪道などでタイヤの空転を抑えるスノーモードや、ぬかるみなどの滑りやすい路面で片輪が空転した場合に効果を出すグリップコントロールなどを搭載。これらにより、悪路でも高い走破性を発揮します。
一方の車内は、まずサイズが長さ2215mm×幅1330mm×高さ1270mm。内装には、タフな世界観を演出する3連インパネカラーガーニッシュや、視認性やアニメーションにもこだわった4.2インチカラー液晶メーターなどを装備します。
また、シートは、後席がセパレートタイプになっており、前後スライドも可能。荷物の大きさや量によって荷室の広さが調整できます。
さらに、前席の背もたれを後ろに倒し、後席の背もたれを前に倒せば大人2名が橫になれるフルフラットな空間を作ることも可能。近年人気が高いアウトドアでの車中泊にも対応する豊富なシートアレンジを備えます。
価格(税込)は132万4400〜179万800円。2020年11月には、専用メッキフロントグリルやルーフレールなどを装備し、よりアウトドア風味を増した特別仕様車「ハスラーJ STYLE」も追加されています(159万5000〜182万3800円)。
(文:平塚 直樹)