■先代よりも確かな手応えがあるフィーリング
ブリヂストンのスタッドレスタイヤブランド「ブリザック」は、1988年に生まれました。スパイクタイヤの製造規制が始まる2年も前のことです。その後、ブリザックは幾度となくモデルチェンジを繰り返してきました。そして2021年9月、最新作となる「ブリザックVRX3」の発売が開始になります。前作「ブリザックVRX2」から4年目にあたるフルモデルチェンジとなります。
ブリザックは1988年の初代モデルから一貫して“発泡ゴム”と呼ばれる、気泡を持ったゴムを採用することによって高い氷上性能を実現、その基本技術を進化させつつ、多方面にわたる改良が加えられ現在に至っています。前作となる「ブリザックVRX2」でも、すでにその高性能さは認められていましたが、今回のモデルチェンジでは氷上ブレーキ性能の向上、氷上コーナリング性能向上、新品からの性能発揮に加えてその性能を長持ちさせること、という3つの魅力アップが行われました。
「VRX2」の発泡ゴムは気泡の断面形状が円形でしたが「VRX3」では断面が楕円形となるタイプ。「VRX2」では親水作用を利用した吸水-排水でしたが、「VRX3」は親水作用に加えて毛細管現象も利用することで、より高い吸水-排水を実現しています。また、「VRX2」から採用されているトレッド表面に微細な凹凸を配したマイクロテクスチャーも続いて採用。装着初期から優れた氷上性能を発揮するようになっています。
「VRX2」のトレッドデザインはグルーブ(溝)とサイプ(切り込み)がつながっていたため、タイヤ接地面に水が入り込む現象が起きていたとのこと。「VRX3」ではサイプの端を閉じるとともに、ブロックに突起を設けることで接地面への水の入り込みを抑え、グリップを向上させています。各ブロックのサイズは均等化され接地圧を分散、タイヤと路面の滑り減らすことでロングライフを実現しています。
「VRX2」の発泡ゴムでは気泡により柔らかさを維持していたものの、ゴム部分は経年変化(オイルが抜けること)によって硬化していきます。「VRX3」のゴムはオイルよりも分子量の多い“ロングステイブルポリマー”を配合することで、経年変化による硬化を抑えています。
同社がスケートリンクを使ってテストしたデータによれば、「VRX3」は「VRX2」に比べて制動距離で20%の向上を実現。1万kmに及ぶ耐久テストでは、摩耗性能は17%向上を果たしているといいます。
9月の発売を前に神奈川県横浜市のスケートリンクを使って行われた試乗会で、「VRX2」と「VRX3」を比較試乗する機会を得ることができました。「VRX2」でスケートリンク上を走りはじめると、しっかり発進するしステアリングを切ったときの反応も悪くない、そしてブレーキングもしっかりギュッと止まってくれます。もともといいタイヤであることは明白にわかったところで「VRX3」への乗り換えです。
●氷上での手ごたえが超進化!
「VRX3」でも発進は大きな違いを感じません。若干制御が入るタイミングが遅いかな?と感じる程度です。氷上での発進となると、もともとアクセルはジワッと踏みますし、滑りやすい状況ではすぐに制御も介入してきます。しかし、ステアリングを切ったときの感触はけっこう違いました。
「VRX3」はステアリングを切った瞬間からキッチリと手応えがあったのです。言ってみれば「VRX2」はちょっと空気圧高めじゃないの?と感じるような手応えの弱さだったのですが、「VRX3」は氷の上ということを考慮するとかなりしっかりしています。
また、ブレーキに関しても同様です。どちらもギュッと止まってくれるのですが、「VRX3」のほうが最初の反応がいいのです。一気に制動力が立ち上がってくれる感触があって、すぐにABSが作動します。ABS付きのクルマでも1ケタ台の時速ではABSは働かずロックブレーキになります。そのロックブレーキ時の食いつきがしっかりとした印象でした。
今回の試乗は非常に限られたフィールドで、非常に限られた条件で行ったものなのでその印象も限られたものとなっています。今冬には、しっかりと試乗し、さまざまな路面での試乗レポートをおとどけできると思っていますのでしばしお待ち下さい。
(文:諸星 陽一/写真・前田 惠介)