スマートのEV、最後の話題はバッテリー。
今回試乗した第2世代、バッテリーはテスラから調達しています。テスラといえば電気自動車で実用できるスポーツカーを開発したメーカーとして知られていますが、車体はロータス、モーターは台湾製などほとんどが外部から調達してきたものをシリコンバレーでアッセンブルしています。
では最初から最後まで外部のものを組み合わせただけなのか?と言えば、そうではありません。ヒントはシリコンバレーにあります。ソフトウェアとマネージメントシステムという、電気自動車にはなくてはならないものが優れていたのです。
テスラのバッテリーと一口に言っても、バッテリーそのものは外部調達です。テスラロードスターの初期型はパソコンメーカーであるデルのバッテリーを使っていました。そして最近ではパナソニック。両方に共通するものは電池の型式です。単三電池サイズのリチウムイオンバッテリー18650型というものを使っているのです。これはノートパソコンなどに広く使われているもので、パソコンのカタログのバッテリーの欄に6セルとか9セルとかの表記を見たことがあるかと思いますが、これは18650型バッテリーが6本入っているとか9本入っているという意味です。
テスラの制御技術ですごいのは、この18650というバッテリーを5000セル積んで、それを完璧に制御しようというところです。サイズが小さいバッテリーを数多く積むということは、製品個体差をいかに平準化して出力してやるか、そして充電してやるか、という要素が出てきます。電気自動車の場合、搭載される電池は100や200ではなく1000本単位。これを1本1本マネージメントすると言う技術をテスラが開発したのです。
バッテリー本体がパナソニックであろうとソニーであろうと18650型リチウムイオンバッテリーをクルマに積むためには、このマネージメントシステムが必要不可欠。これをイチから開発するコストを考えたらテスラからシステム込みでバッテリーを調達してしまったほうが結果として楽なわけです。
だから、スマートのEV、第2世代はバッテリー調達先を個々の電池メーカーではなくテスラとしているのです。公表はされていませんが第2世代は1200から1500セルを積んでいるものと思われます。
しかし、これからの自動車用リチウムイオンバッテリーは大型セルが主流となります。日産リーフのラミネートタイプバッテリーは24kwhで48セル。1セルあたり0.5kwh。スマートの第3世代もダイムラーベンツグループの内製で、1セルあたりの容量がリーフと同程度のバッテリー搭載することでしょう。セル数が減ればマネージメントシステムのロジックも変わります。そうなればテスラのマネージメントシステムはダイムラーベンツのシステムに置き換わります。永続的に生産するのであれば自前でシステムを用意する方が明らかにコストやパテントの面で有利です。これはダイムラーベンツだけではなく、他社でも同じことが言えると思われます。
そうなれば、テスラは、自動車そのものよりも売り上げが高かったと思われるシステム販売や技術提携の活路が先細ることになるでしょう。いよいよ本当の意味でクルマの魅力で売らなくてはいけなくなる。
スマートのEVの試乗会で見て、乗って、触って、聞いて、語ったことだけで、これだけのことが推察できるのですから、本当に貴重な体験をさせていただきました。
(北森涼介)