最新技術満載のLEDライト車ではなく、あえてハロゲンライト車を選んでみては?

■いまさらハロゲンライトを薦める理由とは?

●多機能化に比例してランプ価格も上昇

terrano
1995年に出た2代目テラノ、早くも翌年1996年の改良時に、HIDランプ(日産名・キセノンヘッドランプ)が乗用車初で用意された。

あたり前の話ですが、クルマは昼間だけではなく、夜も走ります。だからヘッドライトなりスモールランプなりがついているのです。

このランプ、かつてはただの白熱電球が主流でした。次にハロゲンガス封入のハロゲンバルブの時代が長く続き、1996年に日産自動車が乗用車用としては初めてHIDヘッドライト(日産呼称:キセノン(Xe)ヘッドライト)を2代目テラノのマイナーチェンジ版で発売して以降、このHID式が広まりました。

そして、いま現在、半ば主流になりつつあるのがLED(light(光を) emitting(放つ) diode(2極の端子を持つ電子素子):発光ダイオード)式のライトです。

これはまずリヤのストップ/テールランプで始まり、その後数年を経てヘッドライトに使われ始めました。ヘッドライトへの使用が遅れたのは、LEDは光の拡散性に難があり、ヘッドライトに使うにはまだまだ研究の余地があったためです。ヘッドライトにLEDが起用された最初のクルマは、2007年のレクサスLS600hだったようです。

あれから15年以上が経過し、いまでは軽自動車にさえLEDライトが使われるようになっていますが、LED素子をライトユニット内にびっしり収めることにより、いろいろなことができるようになりました。

lexus ls headlamp2017
写真は2017年型レクサスLS(現行の初期型)のLEDヘッドランプ。現物を見ても信じられないが、片側につき、上段側に8個、下段に16個のLEDを配置し、ステレオカメラとの合わせ技で先行車・対向車の有無に応じた配光を行う。

車速に応じて配光を変える、先行車や対向車、歩行者に対して幻惑を避けながらハイビームにするなど・・・これらは小粒のLED素子をランプユニット内に20も30も並べ、各素子を踊らせるように点消灯させないとできないことですが、この高機能化に応じてライトそのものの価格も高くなってしまいました。

●いいことずくめではないLEDライト

「半永久的に持つ」「省電力」といった触れ込みで普及してしまったLEDライトですが、筆者はクルマ用ランプの総LED化に疑問を持っています。

街を走ってみてください。そう頻繁にではありませんが、年式からして明らかにLEDライト車のはずなのに、「永久」の前後に「半」と「的」がつくとはいえ、それにしては早々にヘッドライトの片方が消えているクルマ、スモールないしストップランプのLEDのひとつふたつが消えていたりちらついていたりするクルマを見かけます。

これが電球時代のちょいと積極的&工賃節約家ユーザーなら自前で交換作業をするところです。標準的なハロゲン球であれば左右で3500~4000円程度ですむでしょう。

prius rear lamp
2代目プリウス(NHW20)のリヤランプ。上段がLEDのストップランプ、下側が白熱電球のスモールランプ。ブレーキ時は、スモール状態(写真左)に加えてストップランプが追加点灯する形を採る(写真右)。
prius rear and high mount stoplamp
このプリウスのストップランプは6個のLEDから構成され、どれかひとつでも切れてしまうと車検をパスできない。いまはハイマウントランプもLED式が多く、こちらもひとつ切れただけで車検を取ることができなくなってしまう。

ところがLED全盛のいまとなると、LED素子のたった1個が切れただけでも、切れていないLEDをも含めてまるまる交換となってしまうことがほとんどなのです。ストップランプの場合は車検にも通りません。

いまどき、基盤に半田づけされた1個のLEDだけを交換するという修理方法を採るはずはなく、良くて内部の基盤ごと、悪くてランプユニットごとまるまる交換・・・いずれにしても、正常なLEDをも含めての総取っ替えですから万単位の出費増は必至! そもそも軽自動車用でさえ、原価の段階で従来とはケタが違うほど高いのです。

ましてや先進技術が内蔵されているヘッドライトともなると、そのユニット価格は、現行スカイラインでウン十万、アルファードなら25万超えといいます。いずれも片側での話ですよ。まあ、これほどのクルマに乗るひとともなると、万一のライト交換に数十万出すことなど苦ではないのでしょうが、いずれにしても、電球に対してLEDが高くつくことに変わりはありません。

fit halogen
使っているうちにレンズがくもってしまった初代フィットのヘッドランプ。これ以上白くなると車検が危ういと販売店に注意されたもの。レンズ単体の交換は不可能なので、この場合はランプごと交換となってしまう。むろん、ケミカル剤で一時しのぎをする方法もないではないが・・・

それからLED、ハロゲン球、HIDにかかわらず、お持ちのクルマのヘッドライトレンズ表面のくもりに悩んでいるひとも多いと思います。ヘッドライトのことを俗に「目玉」といったりしますが、まさに人間の目でいう黄疸か白内障みたいになってしまうやつです。

いまのクルマのライトのレンズはアクリル製で、コーティングは施されているものの、長い間太陽光に含まれる紫外線にさらされているとコートが剥がれ、表面がくもってくるのです。あまりに真っ白、真っ黄っ黄だと、これまた車検の通過が怪しくなってきます。くもっただけならまだましで、最悪の場合は小さな亀裂が入ることも・・・レンズ交換といきたいところですが、レンズ単品での補修部品が用意されることは稀で、やはりユニットごと交換というケースが一般的です。

これがLEDランプ車なら、LED素子がただのひとつ、切れ「ていなかっ」たとしても、ただのレンズ交換なのに、LEDであるがための出費となってしまうわけです。

●と、思っていながら筆者がLEDランプに交換した理由

お話変わって筆者のクルマ。

筆者は2018年3月上旬に、旧型のジムニーシエラを買いました。で、納車から3週間後、車両装着のハロゲンライトから、市販の汎用品LEDライトに交換しました。前段まで読んで「ははぁ、コイツはLEDライト否定派なんだな?」と思い込んでいた方、たったいま、吉本新喜劇並みにひっくり返ったにちがいありません。

LEDランプに代えた理由は2つ。前に使っていた日産車がキセノンライト車で、久々のハロゲンライト車に乗ったら、「ハロゲンってこんなだったっけ?」と思うほど暗かったこと。もうひとつは、ライトレンズのくもりの原因は、紫外線の他にハロゲン光が発する熱にもあるのではないかと疑っていること。

tiida xenon
筆者が前に使っていた日産車のキセノンヘッドランプ。覚悟していたのに、発熱が低いからなのかどうなのか、なぜかくもりはほとんどなし。上部の電球ウインカー部分はけっこうくもっている。くもりの原因は、紫外線以外、熱もあるのでは?

その前に使っていたクルマはハロゲン車で、納車から数年でくもったのですが、ハロゲンより発熱量の低いキセノンライトは、11年使ってもあまりくもりませんでした。その証拠に、同じ一体レンズなのに、電球のウインカー部分は焼けたようなくもりを帯びていました。

発熱量がキセノン式と同等か、それよりも低いかも知れないLEDに代えてから3年余、いまのところシエラのランプにくもりは生じていませんが、この点についてはまあまだ観察中といったところです。ただし、キセノンライト車でもレンズがくもっているクルマを見かけたこともあり、熱が原因なのかどうか、筆者もまだ答えが得られないでいます。

それはともかく、筆者がいいたいのは「特にクルマに大きな執着がない人は、狙ったクルマの安いモデルにハロゲンライト車がある場合、そちらを買うのもいいですよ」ということです。

多機能型LEDライト基板はそれぞれのクルマのために専用設計となるため、メーカーを越えても共通規格で使えるハロゲン球のような量産効果は期待できません。最多でもそのクルマの生産台数分までの数にとどまるため、どう考えてもハロゲン球ほど安くなるはずがないのです。これもLEDランプの値段が高い要因です。

そして素子切れを起こしたら自前ででも販売店ででも補修はできず、ユニット交換となってしまいます。ゆえに「明るいLEDランプはほしいけど、万一の補修費用が高くなってしまうのはイヤだ」というユーザーは、任意で汎用LEDライトへの交換の余地がある、在来型のハロゲンライト車を選ぶのもひとつの手ではないかと思うのです。

少女まんがのキャラクターよろしくキラキラおめめのLEDライトの美しさとひとつひとつの先進機能に惹かれたひとも多いことでしょうが、これらメリットを享受しながら、不運にも突如の故障や損傷に遭って補修費用の高さを知ったとき、クルマのランプ一挙LED化に疑問を抱き始めたひとも多いだろうと思います。

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保証交換で新型モデルが提供されてラッキーだったIPF製のH4LEDバルブ。

というわけで、筆者はIPF製・H4タイプのLEDバルブを購入して取り付けました。2年半ほどで片方が壊れたので保証で交換しようとしたらその品は製造中止になっており、そのモデルチェンジ版の品に無料交換できたのは「ラッキ~」でしたが、それとて安い品ではないので、次に壊れたら最初に取り付けられていたハロゲン球に戻そうかと思っています。いや、やはりLEDバルブを買うかな、それとも別のメーカーのLEDを試してみようか・・・

昨年(2020年)に、日産自動車からマーチを拝借して乗りましたが、これがいまどきめずらしい全車ハロゲンヘッドランプ車。さきほどハロゲンランプは暗いがごときことを書きましたが、どうやらこれは筆者のジムニーの特性(?)だったようで、ビカビカの白い光に慣れた目には、かつてのハロゲンが目に優しい光であったことをあらためて認識させられたもの。しばらく乗りつづけたら光量に不足を感じることもなくなりました。

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マーチのハロゲンライト光。

さあ、いま使っているLEDランプに寿命が訪れたらどうしようか? ・・・とまあこのように、ユーザーがクルマを買った後に任意であれこれ決めたり選んだり、あるいはそのままでいくか? という選択の余地がなくなってきてしまったのがいまのクルマですが、それが嫌ならあえて従来型のデバイスを持つクルマを買うのもひとつですよというお話でした。

そうそう、いまハロゲンバルブのクルマをお持ちの方で、「ちょいとお金かけてLEDにしちゃおうかなあ」と考えている方、適合性に注意してください。

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ジムニーシエラの納車時についていたハロゲンバルブ。目を凝らすとフィラメントがオフセットしているのがわかる。交換用LEDバルブは、LEDをこれと同じように配置しているのだが、取り付けるクルマによってはいくらエーミング(光束調整)を行っても保安基準を満たす配光が得られない可能性もあるので要注意!

いまはほとんどなくなった白熱球もそうですが、ハロゲン球は口金からフィラメントまでの距離や、ハイビーム、ロービーム用それぞれのフィラメントのオフセット量が規格で決まっています。

そのフィラメントから360度の方向に放たれた光を、背面のリフレクター(反射鏡)で調整するわけですが、このリフレクターは、どのメーカーのハロゲン球であれ、規格品のフィラメント球がやって来ることが前提の設計になっています。ここにフィラメントとは異なる、面発光のLEDランプが訪れたところで、厳密にはハロゲン球と完全に同じ配光にはなりません。早い話が、ハロゲン球ありきのリフレクターにLEDを使うこと自体、無理があるのです。

怪しいメーカー品はもとより、まじめに、まじーめに造り、ハロゲン球のフィラメントと同じ配置をかなり緻密に再現して「車検対応」を謳うメーカー品のものでさえ、クルマによってはエーミングを行ってもうまく配光しない可能性があることも念頭に入れながら検討してください。

jimny headlamp
いま使用中のIPF製H4LEDヘッドランプの光。

筆者のクルマに取り付けたIPF製LEDはどうか? 筆者は別にIPFのまわし者ではありませんが、いまのところ何の支障もなく点灯しています。

光の広がり方などはさすがに専用設計された新型車のものにおよびませんが、それも比べてみればの話で、明るさ、配光特性とも、日常使用下では「これで充分じゃないの」と思っているところ。

耐久性は・・・保証交換してまだ8ヶ月ほどなので、これまた観察中といったところです。

(文:山口尚志 写真:花村英典/中野幸次/山口尚志)