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■最上級グレードはエアサスやターボも装備
日産は、4月26日、女優の伊藤かずえさんが30年間乗り続けている初代「シーマ(Y31型)」のレストアを開始したことを発表しました。
日産傘下のオーテックジャパンで車両を預かり、半年間をかけて伊藤さんの愛車をリフレッシュするそうです。
初代シーマは、国産旧車ファンや40歳代後半以上のクルマ好きにはおなじみの、日産が誇る高級セダンです。登場したのは1988年、安いグレードでも300万円後半からという、当時としてはかなり高価なクルマだったにも関わらず、まさにバルブ期の真っ最中だったこともあり、飛ぶように売れて「シーマ現象」とまで呼ばれました。
中でも、伊藤さんの愛車・タイプIIリミテッドは最上級グレードで、車体価格は500万円を超え、エアサスペンションの装備や本革シートが選べるなど、当時としてはかなり贅沢な装備が満載された仕様です。
その装備は、まさに当時の国産高級車の中でも飛び抜けた存在だったといえるでしょう。
ここでは、そんな初代シーマが、どれほど豪華な装備を誇っていたのか、主な内容を紹介しましょう。
●バブル経済の真っ最中である1988年に登場
初代シーマは、前述の通りバブル経済の真っ最中である1988年に登場しました。
車名は、スペイン語で「頂上」を意味します。その言葉通り、当時の高級車人気、いわゆるハイソカーブームに向けて開発された日産のハイエンド4ドアセダンです。
ボディサイズは全長4890mm×全幅1770mm×全高1380mm。車体には、それまでのフラッグシップだったセドリックやグロリア(Y31型)のシャーシをベースに、3ナンバー専用ボディを採用しました。
ちなみに、3ナンバー車は今でこそ珍しくありませんが、当時ではたとえばトヨタのクラウンなどでも最上級グレードにしか3ナンバー車は設定がなく、まさに高級車の証ともいえるものでした。
エンジンには3L・V型6気筒の大排気量エンジンを搭載。200psのNA(自然吸気)エンジン「VG30DE型」のほかに、最上級のタイプIIリミテッドなどには、「VG30DET型」とよばれるターボエンジンを採用しました。
日産・レパード(F31型)などにも搭載されたこのエンジンは、最高出力255psを発揮。駆動方式はFR(フロントエンジン・リヤ駆動)で、発進時などに車体後部を沈めながら猛然と加速するシーマの乗り味は、高級感だけでなく、圧倒的なパワー感も人気を呼びました。
●バルブ期の富裕層マストアイテムも装備
シーマのタイプIIリミテッドでは、ほかにも電子制御エアサスペンションを採用し、快適な乗り心地を実現します。
また、今ではほぼ見かけることがない自動車電話の設定もありました。これはオプションだったようですが、リアシートのセンターコンソールに受話器が設置されたほか、ステアリングにダイヤルが付いたハンズフリーフォンを採用。
スマートフォンが生まれる前、携帯電話もショルダータイプなどの超大型かつ高価で、使っている人はほとんどいなかった当時。そんなバブル期に流行したのが自動車電話で、まさに富裕層だけが持つことを許される超高級品でした。
なお、シーマをはじめ、自動車電話を搭載したクルマには、専用のアンテナをトランク上に設置することが多かったのですが、そんなスタイルも大きな人気を呼びました。当時は外観だけ真似をして、通信機能を持たない模造品が発売されたほどです。
●レストア中の愛車はキックス
そんな豪華装備が満載なのが、伊藤かずえさんも乗る初代シーマです。ちなみに、伊藤さんといえば、1980年代に「不良少女と呼ばれて」や「スクール☆ウォーズ」など、大人気テレビドラマに出演していたことで有名。
今回のプロジェクトは、まさに80年代を代表する名車と女優さんの夢のコラボともいえるものです。
伊藤さんの愛車を日産がレストアすることになった経緯は、2020年10月に伊藤さんが愛車のシーマを一年点検に出す際に、SNSに投稿したことがきっかけ。伊藤さんが30年以上にわたり、初代シーマを愛車として大切にされていることが、SNSやメディアなどで大きな話題となったのです。
そして、伊藤さんの投稿を読んだ一般の人たちから、日産に対し「やっちゃえ、日産!」「日産はレストアを検討して!」など、多くのコメントが集まったことで、日産社内でも「何かできないのか」との声が上がり、有志によるレストア・プロジェクトが立ち上がったそうです。
伊藤さんは、愛車のレストア中、日産から代車としてコンパクトSUVの「キックス」を借りて乗るそうです(ボディカラーは、オレンジとブラックのツートーンを選択)。
エンジンで発電してモーターで走るe-POWER搭載車と、シーマの大排気量ターボエンジンでは、かなり走りに違いがありそうですよね。その点に関し、伊藤さんは「オレンジが可愛く、シーマとは全く違うタイプのクルマですが乗るのが楽しみ」と、最新モデルの乗り味に期待しているようです。
ともあれ、走行距離26万6500km、まだまだ乗り続けたいという伊藤さんのシーマは、どのようにリフレッシュされ、伊藤さんの元に戻ってくるのでしょうか。
(文:平塚 直樹/写真:日産自動車)