目次
■他メーカーでも採用されている翼の正体は?
バイクの中でも、特にスポーティで高性能なマシンであるスーパースポーツと呼ばれるジャンル。
世界最高峰レースの「MotoGP」や市販車ベースのマシンで競う「SKB(スーパーバイク世界選手権)」などに出場しているレーサーのフォルムや技術を継承したモデル群ですが、そんなスーパースポーツの1台、カワサキの「ニンジャZX-10R」と「ニンジャZX-10RR」がアップデート。2021年6月25日に新型が発売されることが発表されました。
ニンジャZX-10Rは、SKBで2020年までに前人未踏の6連覇を達成したカワサキワークスマシンのベース車両。その新型で注目なのが、フロントカウルに装着された「ウイングレット」と呼ばれる翼のようなパーツです。
近年、他メーカーのスーパースポーツでも採用されているこのウイングレットとは、一体どんなものなのでしょうか。
●最高出力214psのモンスター
ニンジャZX-10Rは、カワサキ製スーパースポーツモデルにおけるフラッグシップとも呼べる排気量1000ccの大型バイクです。
エンジンには、水冷並列4気筒を搭載。最高出力は203ps/13,200rpmですが、走行風を取り入れてパワーを増大させるラムエアシステムの採用で、ラムエア加圧時は213.1psまで最高出力をアップさせることが可能です。
フレームは軽量・高剛性のアルミニウム製ツインスパータイプを採用、ファクトリーマシンからのフィードバックを受け、ショーワと共同開発したφ43mmバランスフリーフロントフォークを採用するなどで、優れた旋回性能を誇ります。
また、最新の電子制御システムも数多く採用。5つの走行モードから選択でき、コーナリング中に過剰なスリップを抑制しながら、マシンが前進するための最大限のトラクションを引き出すS-KTRC (スポーツ-カワサキトラクションコントロール)、コーナリング中のエンジンやシャーシ各部の状態をリアルタイムでモニタリングし、パワーやブレーキ効力を最適な状態にコントロールするKCMF(カワサキコーナリングマネジメントファンクション)など、多くの機能が満載です。
一方、ニンジャZX-10RRは、Ninja ZX-10Rシリーズの中でもサーキット走行に特化し、SKBを勝つために開発されたモデル(SKBの出場マシンは市販車ベースという決まりがある)です。ZX-10Rをベースに、最高出力を204ps/14,000prmにアップ。しかも、ラムエア加圧時には214psにまでパワーを増大させることが可能という、カワサキが誇るまさに「スーパー」なバイクなのです。
●レーシングマシンが元祖
そして、これら新型に新採用されたのが、フロントカウルと一体型のウイングレット。クルマでも、たとえばシビックタイプRなどには、フロントバンパーにカナード、リヤトランクにはGTウイングといった羽が付いていますが、最近はバイクのスーパースポーツにも、このウイングレットが多くのモデルに採用されています。
たとえば、ホンダが2020年3月に発売した「CBR1000RR-Rファイヤーブレード/SP」にも一体型ウイングレットが搭載されていますし、海外モデルでもドゥカティの「パニガーレV4」、アプリリアの「RSV4」といった、いずれも1,000ccのスーパースポーツモデルに採用されています。
ウイングレットは飛行の翼端版といった意味で、元々はバイクのF1とも呼べるMotoGPマシンに搭載されたのが始まり。
最高速度が350km/h以上、最高出力は300ps近くあるというモンスターマシンたちは、6速でも加速時に簡単にフロントが浮くウイリー状態になります。それを抑えるため、飛行機では機体が浮くために装着するウイングを逆さにしてダウンフォースを発生させることを目的に採用されました。
市販車では、サーキットでも走らない限りはそんな状況は生まれないでしょう。
また、本物のレーサーに搭載されているウイングレットはかなりの突起物で、歩行者などを怪我させる危険もあるため、市販車ではレーサーほど派手なウイングにはなっていません。ですが、最新のレーシングマシンを彷彿とさせるという意味で、スタイリング的な効果はかなり高いことは確かでしょう。
なお、新型の価格(税込)は、ニンジャZX-10Rの方が、ワークレーサーイメージのカラーリングを施したKTRエディションとスタンダード共に229万9000円。ZX-10RRは328万9000円です。
(文:平塚 直樹/写真:カワサキモータースジャパン、本田技研工業、スズキ)