メンテナンスの概説:定期点検以外に日頃のメンテナンスにも気を配ろう【バイク用語辞典:メンテナンス編】

■正しいメンテナンスは安全性を高め寿命を延ばす

●エンジンとオイル、ブレーキ、タイヤ、バッテリーが主要なメンテナンス対象

道路運送車両法で定められた日常点検や法定点検、車検は、ユーザーに義務付けられた点検と検査です。バイクの使い方はライダーによって大きく異なるので、重要部品については定期的な点検以外にも日常的なメンテナンスが不可欠です。

バイクの主要な部品のメンテナンスについて、概説していきます。

●タイヤの点検とメンテナンス

タイヤ表面のトレッド溝の深さは、路面状況や走り方によりますが、一般的な走り方では走行距離に依存して1万~2万km程度、ゴム質の経年劣化については3~5年程度で寿命を迎えます。

タイヤの摩耗状況は、スリップサインでチェックします。

タイヤ構造例
タイヤ構造例

タイヤは、保安基準によって溝深さが1.6mmになると交換することが義務付けられており、そのため深さ1.6mmの位置にスリップサインと呼ばれるマークが埋め込まれています。スリップサインが現れた状態で走行すると、整備不良で法令違反の対象になります。

また、タイヤの摩耗とともに危険なのが、空気圧不足です。

タイヤの空気圧が減ると、ハンドルを取られやすくなり操縦安定性が悪化します。逆に高すぎると、路面との接地面積が減るためにスリップが発生しやすくなります。少なくとも月1回は空気圧をチェックすることが大切です。

●ブレーキの点検とメンテナンス

ディスクローターとパッド
ディスクローターとパッド

ブレーキシステムには、ディスクブレーキとドラムブレーキがありますが、コントロールしやすく制動力が安定しているディスクブレーキが主流となっています。ブレーキパッドとディスクローターは、両者間の摩擦力で制動力が発生するので、消耗具合をチェックしてメンテナンスしなければいけません。

ブレーキパッドとローターは、偏摩耗や限界まで摩耗が進むとブレーキの効きが悪くなったり、「キーキー」といった異音が発生します。この場合は危険なのですぐにパッドとプレートを交換する必要があります。ブレーキパッドの交換目安は、走行距離で5,000~1万km、ディスローターの交換時期の目安は4万~5万kmです。

●エンジンオイルの点検とメンテナンス

エンジンオイルは走行とともに劣化しますが、走行しなくても劣化するので、適正な時期に交換しなければいけません。メーカーは、エンジンの仕様や排気量に応じたオイル交換時期を推奨していますが、これをベースに個々の使用状況に応じて調整する必要があります。

エンジンオイルが劣化して最も大きな影響を与えるのは、粘度の低下です。ネバネバのオイルからサラサラのオイルに変化すると、適正な油膜が形成できなくなります。油膜が形成されないと、摺動部品間で金属接触を起こして、燃費や騒音が悪化します。さらに摺動部が傷つき、最悪の場合はオイル切れで焼き付くこともあります。

また、シビアコンデションと呼ばれる厳しい使用条件では、交換時期は通常の半分程度に短縮する必要があります。

●バッテリーの点検とメンテナンス

通常バッテリーの寿命は2~3年と言われていますが、運転状況や気温など使用環境によって変動します。適度にバイクに乗り、適切に充電を行っているにもかかわらず、次のような症状が出る場合はバッテリーの寿命がきた可能性があります。

・充電して一時的に復活しても、すぐにスターターの回転が弱々しくなる。

・バッテリー液の減りが早く、バッテリ端子に白い粉が付着している。

・キーONでエンジンを掛けずに、ヘッドライトやウィンカー、ホーンを作動させたときに明るさや音が弱々しい。

上記のような症状の場合は、バッテリー電圧が12.2Vより低下していると考えられます。長期間走行してオルタネータで充電、あるいは充電器で満充電しても電圧が13V近くまで上昇しないときには、寿命であると判断できます。ちなみに、満充電状態のバッテリー電圧は13.0Vですが、電圧が12.2V以下だと電池容量は50%以下まで下がっているので、劣化が進んだ状態です。


定期点検や車検だけでなく、日頃からバイクの状態をチェックしてメンテナンスを実施すれば、安全走行だけでなく、バイクの寿命を延ばすことにもつながります。本章では、主要部品のメンテナンス方法について、詳細に解説していきます。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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