■国内4メーカーのどんな車両でも使えるバッテリー、誕生間近か?
ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの国内二輪車4メーカーは3月26日、電動二輪車の交換式バッテリーの相互利用の標準化で合意したことを公表しました。
日本国内でバッテリーのサブスクリプションを可能とする交換式バッテリーの標準化と、充電ステーションなど、バッテリー交換システムの標準化が決まったことで、電動二輪車の普及にはずみがつきそうです。
バッテリーの相互利用が想定されている車種は、排気量125cc相当以下のバイクです。
標準化に準拠したバッテリーが商品化されると、国内4メーカーの電動バイクいずれでも利用することができるため、このクラスの電動バイクで特に大きなコストを占めるバッテリー価格を下げることが期待できます。
また、充電したバッテリーを不特定多数でシェアリングするためのバッテリーステーションの標準化にも合意したため、バッテリー・サブスクリプションの見通しがつきました。
電動バイクのバッテリー・サブスクリプションとは、車体の所有者がバッテリーを所有せず、ステーションで充電されたバッテリーを使う権利を月極めなどで買う仕組みのことです。
電動バイクの課題である充電時間に関係なく、バッテリー交換に要する時間を数分に短縮することができ、設置範囲を拡大することで、バッテリー単体の能力を気にせず、航続距離を延ばすことが可能になります。
一足先にバッテリー・サブスクリプションを全土で展開する台湾では、行政の支援をうけたキムコが単独で充電ステーション・インフラまで普及させました。日本では4メーカーが合意したので、電動バイクの選択肢が拡がるはずです。また適正に商品競争が促されることで、サブスクの使用料も安く抑えることが期待できます。
●現状のホンダEVは適合せず 標準化適合モデル、登場はいつ?
4メーカーが参加するバッテリー・コンソーシアムは合意までに2年を要しています。その間、電動バイクの商品投入に前向きだったホンダは、単独で車両共通のバッテリーを採用したPCX electricやBENLYeなどのモデルを投入してきました。
しかし、同社のバッテリーは4社が合意した仕様とは別物。ホンダ二輪事業本部・三原大樹事業企画部長は、標準化仕様との違いを、こう説明しました。
「重量は軽くする。落としても割れないという安全性を、仕様に盛り込みました」
ホンダは日本郵便に対してBENLYe2000台の供給を公表しています。4社合意の標準仕様は個人ユーザーを前提としたもので、先行するホンダ独自のバッテリーは事業用を想定しているようにも思えます。
しかし、コストを抑制する側面からも、標準仕様のバッテリーが商品化される時期までに、ホンダ独自のバッテリーについても、コンバージョン(変換)の仕組みを考えるなどして、標準仕様への対応が迫られそうです。
乾電池のように電池メーカーが競って電動バイク用のバッテリーを市場に投入し、ガソリンスタンドのように二輪車メーカー以外が、エネルギー供給を行っていく時代は来るのでしょうか。開発するには、まだ乗り越えるべき課題が山積です。
「コンソーシアムでは今後、必要とされる標準化で必要とされる知的財産と、各社が独自に所有する知的財産がどう関係するのかの技術的検証を行う作業に入ります」(ヤマハMC事業部・有西達哉戦略統括部長)
ユーザー目線での最大の関心事は、標準化適合モデルがいつ買うことができるのか。どんな商品なのか、ということです。
現状で合意したのは、まずは標準化の枠組み。各社が持つ特許をコンソーシアムでどう扱うか。たとえば、標準化で必要となる知的財産について各社がそれぞれ保有するのか、コンソーシアムとして特許を取り直すことが可能なのなど整理が必要になるようです。
そのため4社以外の部品メーカーや電池メーカーが標準仕様に準拠するバッテリーなどを作ることについては、さらに次の段階での話し合いになります。
2025年には排気ガス規制の一段の強化で、125cc以下のエンジンバイクの供給が、ほとんど不可能になります。電動に対応することはできるのでしょうか。
前述の安倍氏は、4社の代表幹事としてこう話します。
「今後とも協調と競争の両局面で努力しながら、持続可能な社会の実現に向けて、電動二輪車の普及を目指します」
世界のバイクの半数を供給する生産大国の慎重なかじ取りが続きます。
(文・写真:中島 みなみ)