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■最上位クラスの到達速度は350km/h以上、400mを4秒台で駆け抜ける
●1500PSを超える専用エンジンとニトロ燃料によってパワーとスピードを追求
数あるバイクレースの中で最も短く、最もスピードが出るレースが、米国生まれのドラッグレースです。停止位置から1/4マイル(402.33m)の直線路を猛スピードで駆け抜け、タイムを競うレースです。
けたたましい爆音と排気炎、白煙を発しながらで発進加速するドラッグレースについて解説します。
●ドラッグレースは米国生まれ
ドラッグレースは、今から70年以上前に米国の若者の間で始まった電柱4本分の距離を2台のクルマで競ったことが始まりと言われています。公道で競うのは危険ということで、1951年にNHRA(全米ホットロッド協会)が設立され、専用コースを使って決められたルールの下で競うようにしてドラッグレースが本格的に始まりました。
レギュレーションによってクラス分けされていますが、日本ではほとんど開催されない無制限の「トップフューエル」と呼ばれる最上位クラスでは、ゴール時点での速度が350km/hを超え、到達時間は4秒台と飛ぶように走行します。このクラスでは、最高出力1500PS前後のエンジンを搭載し、燃料にはニトロメタンを使用します。
ニトロメタンは分子内に酸素を多く含んでいます。ガソリンを完全燃焼させるにはガソリン1に対して14.7倍の質量の空気が必要ですが、ニトロメタンは1.7倍ですみます。したがって、ニトロメタンは同じ吸入空気量で8.7(=14.7/1.7)倍の燃料が投入できるわけです。ただし、ニトロメタンはエネルギー密度がガソリンの約1/4なので、総合するとガソリン燃料の約2.3倍の出力が得られることになります。
●ドラッグレースの基本ルール
ロケットスタートするためには、バーンナウトを駆使します。
バーンナウトは、ブレーキとアクセルを調整して、スタート前に意図的に空転させてタイヤを加熱し、路面とのグリップ力を高める手法です。スタート地点でタイヤ表面のゴムを路面に焼き付けるので、結果として摩擦熱でタイヤから白煙が立ち上がります。
スタートは、クリスマスツリーと呼ばれるスタートシグナルで行われます。
最上段の黄色のプレステージライトとその下のステージライトが順番に左右とも点灯すると、スタート準備が完了した合図となり、スターターがスタートのボタンを押します。プレステージとステージライトの下に3段のランプがあり、上から0.5秒の間隔で順番に点灯します。3段目のランプがついた0.5秒後に、その下のグリーンランプが点灯して、レース開始です。
最下段には、赤色のフライングライトがあります。
●日本のドラッグレース
日本で本格的にバイクのドラッグレースが始まったのは、1991年に日本ドラッグレース協会(JDRA)に2輪クラスが追加されてからです。翌年には、MFJの公認競技となりましたが、日本での人気はいま一歩でした。しかし、2008年には日本人ライダー重松健が370.34km/hというワールドレコードを樹立するという快挙を成し遂げました。
2012年には、ドラッグレースの復活を目指した日本ホットロッド協会(JHRA)が発足しました。現在も熱狂的なファンはいますが、海外に比べると人気は広がらず、日本での開催は数えるほどです。
ロケットスタートと爆音、排気管から排出される排気炎、タイヤから出る白煙と異次元のバイク性能を目の当たりにすることができるのが、ドラッグレースの大きな魅力です。制限なしのエンジンとバイクがどれだけのパワーとスピードを出せるか、それが数値として認識できることも興味深いです。
(Mr.ソラン)