SUVのeパワー搭載モデルが登場。コンパクトカー、ミニバンに続く第3弾【日産キックス試乗】

■コンセプト&パッケージングがいいコンパクトSUV

日産のキックスは2020年6月に日本に導入されたモデルです。キックスという名前は2度ほどコンセプトカーに使われたあと、2008年に三菱からパジェロミニのOEM供給を受けた際に使われました。

現行のキックスは2種のコンセプトカーやパジェロミニとの関係はないものの、キックスの車名には一貫してユーティリティ性が高いものに使われてきました。

キックスフロントスタイル助手席側
大型グリルと切れ長のヘッドライトが特徴的なキックスのフロントスタイル

現行モデルはノートなどにも使われるVプラットフォームと呼ばれるプラットフォームを用いて開発されました。まず2016年にブラジルでピュアエンジン車の導入が始まりました。その後、南米に拡大、やがて北米での販売も始まりました。

2020年にはタイでパワートレインにeパワーを用いたモデルを導入。日本には2020年6月からeパワーモデルのみが発売されています。

キックスリヤスタイル
樹脂フェンダーによりSUV感をさらにアップしている

キックスのパワーユニットは82馬力/103Nmの1.2リットルエンジンに95馬力/260Nmのモーターが組み合わされています。基本的にはノートと同じユニットですが、ノートよりも若干スペックアップしています。パワーフローはノートeパワーと同様で、エンジンで発電してモーターを駆動するシリーズハイブリッドです。バッテリーはリチウムイオンを使っています。

キックスエンジン
基本的にはノートと同様の1.2リットルエンジンを搭載するキックスのパワーユニット

試乗インプレッションをお伝えする前にパッケージングの話をしましょう。

ボディサイズは全長が4290mm、全幅が1760mm、全高が1610mm、ホイールベースは2620mmでノートよりは少し大きくなります。

前後ドアはヒンジタイプで、これにリヤハッチを組み合わせて5アハッチバックのボディとしています。フロントにセパレートシートを2脚、リヤシートは6対4分割が可能なベンチタイプとなります。ラゲッジルーム容量も大きく、Mサイズスーツケース(675×452×250mm)を4つ搭載可能、折りたたみ式のイス付きテーブルも縦に真っ直ぐ入れることができます。

一般的なクルマでもっとも大切なのはパッケージングです。乗れない、積めないでは意味がありません。その部分をしっかり押さえているキックスの魅力は大きなものと言えます。

キックスフロントシート
フロントシートは丸みを帯びたデザイン。写真は2ツートーンインテリアエディション
キックスリヤシート
リヤシートはクッションのヒップポイントが少し下がっていて、座った際の落ち着き感が高くなっている

ノートeパワーと比べるとEV走行が重視されていることが特徴的です。ノートeパワーは充電を重視するような設定でしたが、キックスは市街地走行(35km/h以下)では極力エンジンが始動しないセッティングで、よりEV感を増しています。

日産・電動系の特徴と言えば、ブレーキを使わないアクセル操作のみでの1ペダルドライブです。アクセルオフによる減速Gはガソリン車では最大0.05Gしか発生しませんが、eパワーでは0.15Gと3倍もの減速Gを発生。完全停止まで行えるためブレーキペダルを操作する機会をグッと減らすことができます。

キックスインパネ
インパネデザインはコンサバ。ナビはインパネとの一体感が薄い

一般道を走っていても当然35km/hを超える状況はあります。そうなるとエンジンが始動します。エンジン始動時のノイズ&バイブレーションはちょっと大きく感じます。

ノイズ&バイブレーションはノートよりもおさえたということですが、EV走行時の静粛性が高いこともあり、どうしても気になってしまいました。この部分がさらに向上すれば魅力アップは間違いないものと言えます。

キックス標準ラゲッジ
定員乗車時のラゲッジルーム。高さも十分に確保されている
キックスラゲッジ分割
リヤシートバックは右6対左4で倒せる。若干段差が出るが、気にはならない

キックスは標準タイプのXと今回試乗した上級の2ツートーンインテリアエディションの2種があります。

どちらのタイプにもプロパイロットが標準で装備されます。車間距離を保つアダプティブクルーズコントロールや車線維持が行われるので、ロングドライブはかなり楽になるでしょう。マニュアルで運転している際もコーナリングの性能などは高く、スッと曲がってグッと粘ってくれます。

これに大きく貢献しているのがタイヤのチョイスと言えます。ノートでは185/65R15ですが、キックスでは205/55R17と幅、ホイール径ともに2サイズアップ扁平率も1クラス上になっています。ただし、タイヤサイズがアップされたということは、タイヤ交換時にはそれだけのコストがプラスされることも間違いありません。

(文・写真:諸星 陽一)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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