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■ギヤを介して直接動力を伝達するので伝達効率が高いのが特長
●変速比に相当する複数のギヤの組み合わせを変えて変速比を変更
マニュアルトランスミッション(MT)は、エンジンのクランクシャフトからの動力をメインシャフトで受け取り、ギヤを介して変速しながらドライブシャフトに伝えます。メインシャフトとドライブシャフトには、それぞれ変速段数分の4~6個のギヤが取り付けられています。
現在バイクで主流のMTについて、解説します。
●MTの構造と作動
MTは、クランクシャフトから1次減速機を経て動力を受けるメインシャフト、リアタイヤに駆動力を伝えるドライブシャフトと、それぞれのシャフトに取り付けられた変速段数(通常は4~6)分のギヤで構成されます。変速比は、2つのシャフトに取り付けられた一対のギヤの歯数比(出力側歯数/入力側歯数)で決まります。
MTの機構は、常時噛み合い式で2本のシャフトに取り付けられたギヤは常時噛み合っていますが、噛み合いが外れない程度の範囲で軸上をスライドできます。一対のギヤのどちらか一方は、シャフトと一緒に回転する固定ギヤ、もう一方がシャフトに対して空回りする遊動ギヤの組み合わせになっています。この状態は、メインシャフトの駆動力がドライブシャフトに伝わらないニュートラルです。
●MTの変速の仕組み
ライダーがシフトペダルを操作すると、シフトドラムが回転してシフトフォークが左右にスライドして固定ギヤを左右に動かします。固定ギヤの側面にはドッグクラッチと呼ばれるツメがあり、隣の空転ギヤのドッグクラッチに噛み合うことで、隣の空転していたギヤがシャフトに固定されて連れ回ります。
この作動によって、メインシャフトの動力が次の変速段のギヤ比で変速されて動力が伝達され、変速が完了します。
●変速操作
バイクの変速は、ライダーがシフトチェンジレバーを左足で操作することで行われます。通常は、「1→N→2→3→4→5→6」という配置のリターン式が一般的ですが、「N→1→2→3→4→5→6→N→1→2・・・」とシフト位置が最初に戻る終わりのないロータリー式もあります。
・リターン式
発進時はシフトチェンジレバーを下げて1速に入れ、車速の上昇とともに2速→3速→4速・・・とレバーを上げてシフトアップします。ロードレーサーではアップダウンが逆になった仕様もあり、またクルーザーなどではシーソーペダルを採用しいるバイクもあります。シーソーペダルでは、つま先を踏めばシフトダウン、かかとで踏めばシフトアップするペダルです。
・ロータリー式
エンドレスにギヤチェンジができるタイプですが、シーソーペダルの場合が多く、現在は小排気量のビジネスバイクなどに採用されるだけになりました。
バイクのギヤ嵌め合い機構は、「ドッグクラッチ機構」と呼ばれ、順番にひとつずつシフトチェンジします。コンパクトで低コストなのでバイクで採用されますが、一方クルマの場合は順番に変速するだけでなく飛び越し変速をするので、嵌合するギヤの回転速度を同期させる「シンクロメッシュ機構」が採用されています。
(Mr.ソラン)