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■インド亜大陸を駆ける骨太ラグジュアリー・マシン
ジクサーは、スズキ・GSX-Rの愛称からその名を受けたインド生まれのバイクです。インドで「ジクサー」といえば155cc単気筒マシンのこと。でも、スズキ・インディアのウェブサイトのトップを飾るのは、まぎれもなくこのジクサーSF250です。
その雄姿を見れば、このマシンが現地のライダー憧れの高級車としてのプライドを身にまとっていることがよくわかることでしょう。
●空冷でもなく、水冷でもない、もうひとつの冷却方式
航空機の世界では、水冷エンジンを「液冷エンジン」と呼ぶのが一般的だそう。液冷エンジンは、水や油などの液体でエンジンを冷やす方式の総称です。
ジクサーSF250に搭載されている油冷エンジンも、いってみればこの液冷エンジンの一種。専用の冷却水ではなく、エンジンの潤滑に使われているエンジンオイルを冷却にも兼用する仕組みです。油冷エンジンには、水冷エンジンのような冷却水は必要ありません。そのためエンジンを軽くコンパクトに作れるのがいちばんの強み。冷却水がなくメンテナンスが簡単にできるのも特長のひとつです。
●復活したスズキの油冷エンジン
2019年の東京モーターショーで、スズキはフルカウルのジクサーSF250と、そのネイキッド版のジクサー250を発表。そしてこの両車に、共通の新しい油冷エンジンが搭載されていることが大きな話題となりました。
スズキ独自の油冷エンジンの復活が、ライダーたちに喝采をもって迎えられたわけですが、じつはSOCS(Suzuki Oil Cooling System)と名付けられたこの新油冷エンジンは、SACS(Suzuki Advanced Cooling System)と呼ばれていた従来型の油冷エンジンとはまったくの別モノ。
新型は、旧型とは段違いの高い冷却性能をもつエンジンなのです。
スズキは1984年のケルンショーでGSX-R750を発表。初の油冷エンジン採用に踏み切り、その歴史をスタートさせました。
SACS(Suzuki Advanced Cooling System)と呼ばれたこの油冷エンジンは、循環するエンジンオイルの一部をノズルでシリンダーヘッドとピストン裏側に噴射して冷却するもの。空冷エンジンの冷却能力を補う形で油冷システムを使ったものともいえますね。
いっぽうジクサーSF250/250に採用された新型油冷エンジンSOCS(Suzuki Oil Cooling System)は、オイルを噴射して冷却するのではなく、一般的な水冷エンジンと同じように、シリンダーまわりにオイルの流路(オイルジャケット)を備え、そこを通るオイルによってエンジンを冷却することで、目いっぱい性能が引き出せるようになりました。
スズキの新しい油冷エンジンが搭載されたマシンは、今のところまだジクサーSF250/250のみ。
大型のフラッグシップ・マシンではなく、ミドルクラスの単気筒エンジンから新しい油冷エンジンが採用されたことを不思議に感じるライダーもいるかもしれませんね。
でも、新しい油冷エンジンのチャレンジはまだ始まったばかり。ジクサーSF250/250の登場でスタートを切ったSOCSが、これからどんなふうに発展し、どんな歴史を築いてゆくのか、その動向からまだまだ目が離せません。
【スズキ ジクサーSF250 主要諸元】
全長×全幅×全高:2010mm×740mm×1035mm
シート高:800mm
エンジン種類:油冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒
総排気量:249cc
最高出力/最大トルク:19kW/2.2kgm
燃料タンク容量:12.0L
タイヤ(前・後):110/70-17・150/60-17
ブレーキ:前後油圧式シングルディスクブレーキ(ABS)
メーカー希望小売価格:48万1800円(税込)
(写真:高橋 克也/文:村上 菜つみ)
【関連リンク】
ジクサーSF250 Official Site
https://www1.suzuki.co.jp/motor/lineup/gsx250frlm0/?page=top
村上菜つみさんがスズキ・ジクサーSF250で出かけたツーリング記事は、月刊誌「モトチャンプ」2021年1月号(12月6日発売)に掲載されています。