実は日本初!クロネコヤマトの新しいトラックは宅配専用EVトラックだ

 ■汎用ではない使い勝手を追求したクロネコヤマトのEVトラック

最近、都内で見慣れないトラックを見かけるようになってきました。そのトラックの荷台には、見慣れたクロネコヤマトのマークが付いているのですが、トラックそのものは見たことがない形です。

ヤマトEV 前7/3
日本ではあまり見かけることがないスタイル

じつはこのトラック。宅配大手のヤマト運輸が導入を開始した宅配専用のEVトラックなのです。

運輸業界にとって二酸化炭素排出を抑えることはとても重要で、さまざまなアプローチが行われています。住宅地を走る宅配トラックには、排出ガスはもちろんのこと静粛性も求められます。そうした環境のなかでヤマト運輸はEVトラックの導入を開始しています。

EVトラックを改造したものは従来から存在しましたが、宅配専用としたEVトラックは日本初とのことです。

ヤマトEV 充電口
詳しい情報は公開されていないが、充電は普通充電のみのようだ

このトラックの導入が発表されたのは約1年前の2019年11月で、2020年1月から東京、神奈川、千葉、埼玉の一都三県で初期予定の500台の導入を開始、2030年までに同社の小型集配車の半数にあたる5000台をこうした電気自動車をはじめとした次世代モビリティとするとのことです。

ヤマトEV 正面
正面から見ると丸みを帯びたキャビンと四角い荷室が対照的
ヤマトEV 右後ろ
三方開のため、荷室両サイドにもドアがある

サイズは全長が4700mm、全幅が1830mm、全高が2250mmで普通免許で運転が可能(中型免許は不要)、最小回転半径も小さく取り扱いが楽だと言います。

宅配ドライバーは業務中に1日200回もの乗降を行うとのことで、シート高を低めに設定するとともに運転席座面の外側をフラットな設計とすることで乗降性を向上し、身体への負担を少なくしています。

また、シートヒーターを採用することで、寒い冬の時期もすぐに身体を温められるようにもなっています。さらに荷物の出し入れも行いやすいように荷室座面を90cmに設定されています。カメラ&モニターを積極採用することで、360度に渡ってドライバーが安全確認をすることが可能になり、狭い道や駐車場での事故防止にも役立っています。

ヤマト EV
ドライバーズシートクッション右側はサポートが省略されている

ドライバーがクルマを離れることが多い宅配トラックならではの工夫もあります。システムをダウン(エンジン車のエンジンオフにあたる操作)すると、自動的にパーキング状態となりクルマが動き出すことを防止、キーを持った状態でドライバーがクルマを離れると自動的にドアロックがかかり、近づくとドアロックが解除となることで盗難を防止するとともに、わずらわしい施錠・解錠操作をなくしています。

ヤマトEV
センターコンソールにモニターを装備し、クルマ周囲を確認できる

車体構造にプラスチックを多用することで、錆びやキズにも強くなるほか、ディーゼル車に比べると構造が単純でメンテナンス費用も削減できるとのこと。運転状況はクラウドで把握が可能となっています。

このEVトラックを製造するのは、ドイツの物流会社であるドイツポストDHLの傘下のストリートスクーターという会社。物流会社が車両製造会社を傘下に持つということにもビックリしました。

(文/諸星陽一)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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