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■Z史上最長のライフモデル! いまだ現役の6代目Z34
7代目新型フェアレディZ プロトモデル公開を機に始めた歴代Z解説の最終回。
今回は、まさか当の本車(「本人」のクルマ版)も、自分が歴代最長のモデルになるとは思ってはいなかったに違いない、6代目にしていまだ現行モデルとなるZ34フェアレディZの解説です。
なぜこれだけ長いのか? スポーツカーが大手を振って走れる時代でもなければ、安易にモデルチェンジできるクルマではないこともあるでしょうが、クルマを見ても、特に陳腐化したところは見られず、モデルチェンジを急がなければならない理由も見当たらないほど完成度が高かったからなのかもしれません。
■6代目フェアレディZ(Z34型・2008(平成20)年12月)
2002年10月のZ33から6年ぶりにフルチェンジ、フェアレディZがZ34型6代目にシフトしたのは2008年12月のことでした。
この頃になると、オーソドックスな乗用車は、モデルチェンジのサイクルがかつての4年から6年に延びていましたが、サイクルが長いのが普通のZが、一般乗用車並みの6年で一新を図ったのは異例のことです。
2008年後半といえば、世の中はリーマンショックで世界的に消費が落ち込んでいるとき。その影響が次第に日本にもおよび、ホンダなどは進めていた2代目NSXの開発を凍結したほどです。
発表時期からいってリーマンショックが訪れたのはZ34開発時期の終盤だったでしょう。いまさら完成間近のクルマの開発をNSX同様に止めるわけにもいかず、不安いっぱいの中で迎えたZ34発表だったのかもしれません。日産にとってもZ34にとっても、何ともタイミングの悪い船出でした。
さて、その新型Z34を見てみると…
一見すると、サイドシルエットがZ33とよく似ているものですから、初代S30から2代目S130への場合と同じ、単なる正常進化版かと思うのですが(当時、筆者は実際にそう思った)、外側も中身もZ33とはまったく異なるZ34です。
スタイルは、シンプルな面の張りだけで構成されていたZ33と異なり、全体のシルエットはそのままに、面に抑揚のある、ダイナミックで筋肉質なものに変貌しました。ボディ全体にも4つのタイヤにも力強さがみなぎるもので、Z33から車幅が30mm増えていますが、これも面のうねりを与えるために必要な30mmだったのかもしれません。
プラットフォームは、前半分を当時すでにV36にシフトしていたスカイラインと共有しながら、Z33から全高は変えず、全長を65mm短縮、車幅は前述のように30mm広げ、ワイド&ローを地で行きました。
ハンドリングの機敏さの追求のためにホイールベースを100mm短縮…幅を広げながらも全体を小ぶりに仕上げることで、スポーツカー本来の姿に立ち返ろうとした開発陣の意気込みが見える車両寸法です。
●目玉が凝っている代々Zの、こんどのライトの形状は?
今回のZ35もランプが凝っています。前後とも、書道でいうところの「とめ、はね、はらい」をなぞらえた、スタイル全体を引き締める効果を狙っての「ブーメランモーション」を実現。
実車を見ると、リヤボディからベルトラインを経てフロントフェンダーを勢いよく流れる面は、フロントランプを彗星とする軌跡のようであり、そのランプは見えない壁にぶつかって「跳ね」返った形のように見えます。
ただし、内容はキセノンライト、車幅灯、ウインカーにとどまり、2020年現在のこのクラスなら備えていてもよさそうな、対向車、先行車への幻惑を防ぎながら遠方を照らすハイビームや、ウインカーないしステアリングとの光軸連動機能がないのは、元来Z34が2008年型であることを思えば致し方ないところでしょう。
このへん、次期Z35? では新機能が採り入れられ、ブラッシュアップが図られるに違いありません。
●「いいクルマ買ったぜ!」と満足するインテリアの造りこみ感
室内を目を向けると、Z33は、「新生Z!」の意気込みで臨んだ造形に、質感が追いついていないところがありましたが、Z34は造形、材質、質感ともども◎! どこを触ってもソフトな感触の部材で覆われ、安っぽいところは皆無となりました。特にインストルメントパネル(以下インパネ)やドア内張りの質感向上が顕著です。
ドア内張りなどは、Z33は下方に申し訳程度のアームレストがあるばかりの、布張りさえ省かれたのっぺらぼうデザインでしたが、Z34では布張りが与えられるとともに、非常な厚みを感じさせるものになりました。
もしかしたら、インテリア質感に不満を抱いていたZ33ユーザーは、Z34の内装を見て悔しがったかもしれません。
●復活・3連メーター!
メーターはZ33同様、回転計を正面に据えた3眼式。Z33の冷たい感じがしたデザインに対してややメカメカしい装いになり、それでいてどこか人間味も感じられる見やすいものになりました。左のドライブコンピューター内にある液晶の荒々しいところが2008年デビュー車であることを感じさせます。
インパネセンター上の、左から電光掲示板みたいなドット式のデジタル時計、電圧計、油温計と続く3連サブメーターも健在。気に入ったのはそのレイアウトの仕方で、下半分をインパネ上面に沈め、ドライバーに向けながら遠めの位置にそっと置いたかのような精緻さがあります。
そうそう、細かい話では、助手席前にグローブボックスが復活しました。キー付のダンパー付。やっぱりグローブボックスはここになきゃあ!
とはいえ、インパネの奥行きから想像するほど収容スペースは大きくないので、車検証プラスサングラスケースを入れたらそれでおしまいかな?
●メカニズムはZ33から一新! エンジンにサスペンション、こんどはV36スカイラインと共有に
メカ分野に話を移し、エンジンは3.7LのVQ37VHRになりました。従来のVQ35HRに対して35%の部品を新設計。従来のZ33も途中の改良で最高出力はオーバー280psとなっていましたが、今回は336psにまで向上しました。
VVEL(Variable Valve Event and Lift)を採用。通常ならスロットルバルブで調整されるエンジン吸気量を吸気バルブで行うこのVVELと、日産の既存技術・C-VTC(連続可変バルブタイミングコントロール)と併せてバルブリフト量、作動角、位相のすべてを無段階にコントロールするものです。
これによりポンピングロス、吸入空気の応答性の向上ばかりか、燃費、レスポンス、出力、排ガスのクリーン化などを改善させることができました。
ATはZ33のマニュアルモード付の5速から、パドルシフトも併設したマニュアルモード付の7速に進化、MTは6速という段数はそのままに、従来ATに採用されていたシンクロレブコントロールを世界初で採用。シフトチェンジの際にドライバーのシフト操作に応じてエンジン回転数をクルマが自動で最適な回転数にコントロールするというものです。
外観はZ33の延長線上にありながら中身は別ものであることは、サスペンション型式にも表れています。
Z33では4輪ともマルチリンク式でしたが、Z34はフロントがダブルウィッシュボーン、リヤがマルチリンクとなりました。
この足まわりはV36スカイラインクーペのものがベースとなっています。
フロントダブルウィッシュボーンは、上下リンクとナックルがアルミ合金製、アッパーリンクとロワリンクが鍛造で、コストのかかる材料をふんだんに使用しています。
軽量化も大きなトピックです。
従来エンジンフードに限っていたアルミ合金の使用を、ドアやバックドアにまで拡大展開。超高張力鋼板&高張力鋼板の起用で衝突安全性にも配慮しながらエンジンや燃料タンクなどの構造を合理化することで、当初従来比100kg増となるはずだった車両重量を従来並みに抑えることができました。
【スペック】日産フェアレディZ(Z34型・6MT・2008(平成20)年12月)
●全長×全幅×全高:4250×1845×1315mm ●ホイールベース:2550mm ●トレッド 前/後:1550/1595mm ●最低地上高:125mm ●車両重量:1480kg ●乗車定員:2名 ●最小回転半径:5.0m ●タイヤサイズ 前/後:225/50R18 / 245/45R18 ●エンジン:VQ37VHR(水冷V型6気筒 DOHC) ●総排気量:3696cc ●圧縮比:11.0 ●最高出力:336ps/7000rpm ●最大トルク:37.2kgm/5200rpm ●燃料供給装置:EGI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:72L(プレミアム) ●サスペンション 前/後:独立懸架ダブルウィッシュボーン式/独立懸架マルチリンク式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク式/ベンチレーテッドディスク式 ●車両本体価格(当時・東京価格、消費税込み):362.25万円
【スペック】日産フェアレディZ Version ST(Z34型・7AT・2008(平成20)年12月)
●全長×全幅×全高:4250×1845×1315mm ●ホイールベース:2550mm ●トレッド 前/後:1540/1565mm ●最低地上高:125mm ●車両重量:1530kg ●乗車定員:2名 ●最小回転半径:5.2m ●タイヤサイズ 前/後:245/40R19 / 275/35R19 ●エンジン:VQ37VHR(水冷V型6気筒 DOHC) ●総排気量:3696cc ●圧縮比:11.0 ●最高出力:336ps/7000rpm ●最大トルク:37.2kgm/5200rpm ●燃料供給装置:EGI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:72L(プレミアム) ●サスペンション 前/後:独立懸架ダブルウィッシュボーン式/独立懸架マルチリンク式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク式/ベンチレーテッドディスク式 ●車両本体価格(当時・東京価格、消費税込み):446.25万円