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■フェアレディZ ロードスター(HZ34型・2009(平成21)年10月)
標準型Z34から約10か月を経て、フェアレディZロードスターが新型となって追従しました。登場は2009年の10月。発表が秋の紅葉散策をオープンで楽しむのにふさわしいタイミングなのは故意か、偶然か?
幌の収納方法に苦労したのは、Z34でも変わりませんでした。ベースのクローズドモデルとの並行開発だったのもZ33と同様でしたが、ホイールベース100mmの短縮化は、幌の収納スペース確保に頭を悩ませたようです。
前輪を基準に、リヤタイヤが100mm前進した上に、幌のルーフを起こしたときの流麗さを出すために、幌の長さを90mm延長されたものですから、なおのこと格納スペースの確保に困りました。この収容スペース寸法マイナス190mmが並行開発の段階で判明したため、並行開発の強みでクローズドモデルともどもZ32に対してドアを50mm前進させています。
つまり、標準のクローズドモデルが、派生版ロードスターの都合を受け入れたということになったわけです。他に幌の格納軌跡と格納スペースの見直しでそれぞれ105mm、35mmを稼ぎ出し、マイナス190mmを相殺することができました。
従来は開閉を電気モーターで行っていましたが、Z34ロードスターでは電動油圧式になりました。
何だか逆のような気がするのですが、動作部ごとにモーターが要ること、伴って消費電力が上がること、各部可動部へのモーターレイアウトの自由度が減るなどが理由とあれば納得。油圧アクチュエーターとなると可動部へは細いシリンダーを這わせるだけですむので、従来手動式だったフロントガラス上部のロック解除も自動化できたとのこと。
ロック解除の手動操作のあるなしは使い手の面では大違いで、これだけでもZ33ロードスターから買い換えたくなった人もいるかもしれません。
残念ながら、2014年5月、日産はZ34ロードスターの日本モデル生産を、同年9月末受注分を持って中止すると発表しました。理由は明らかにしませんでしたが、どちらかというとネガティブな話である生産中止をきちんと発表したのは立派で、好感の持てることです。
Z34ロードスター発売以降、2014年4月末までの国内販売累計台数、798台。いまは販売網再編や販売不振から、人知れず姿を消されるクルマが多いですが、他のクルマも新型発表だけ大々的に行うのではなく、生産中止もしっかりアナウンスしてほしいものです。
【スペック】日産フェアレディZ ロードスター Version ST(HZ34型・6MT・2009(平成21)年10月)
●全長×全幅×全高:4250×1845×1325mm ●ホイールベース:2550mm ●トレッド 前/後:1550/1595mm ●最低地上高:125mm ●車両重量:1580kg ●乗車定員:2名 ●最小回転半径:5.0m ●タイヤサイズ 前/後:225/50R18 / 245/45R18 ●エンジン:VQ37VHR(水冷V型6気筒 DOHC) ●総排気量:3696cc ●圧縮比:11.0 ●最高出力:336ps/7000rpm ●最大トルク:37.2kgm/5200rpm ●燃料供給装置:EGI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:72L(プレミアム) ●サスペンション 前/後:独立懸架ダブルウィッシュボーン式/独立懸架マルチリンク式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク式/ベンチレーテッドディスク式 ●車両本体価格(当時・東京価格、消費税込み):509.25万円
■フェアレディZ Version NISMO
よりスパルタンなZ34であるフェアレディZ NISMOもご紹介しましょう。時が進むにおよび、ネーミングも変わっていくのですが、ここではその第1弾である2009(平成21)年6月登場モデルをご紹介。
ベースのZ34発売から半年経った2009(平成21)年6月、オーテックジャパンが「フェアレディZ Version NISMO」を発進させました(以降、2013年6月に「フェアレディZ NISMO」に改めた後、2014年のマイナーチェンジを経て2020年9月現在も販売が続けられています)。
外観を専用の前後バンパーはじめとするエアロパーツでまとめた他、これまた専用設計の等長フルデュアルエキゾーストシステムを採用、コンピューターのチューニングを行うことでベースのZ34に対して最高出力が19psアップの355psとなりました。
ボディは専用の補強パーツやYAMAHA製パフォーマンスダンパーを採り入れ、サスペンションのチューニングやパワーステアリングの特性変更で、よりスポーツ志向を高めたハンドリング性能としています。
以下に数々の専用パーツを列記します。
■フェアレディZ Version NISMO 数々の専用装備
・専用フロントバンパー ・専用サイドシルプロテクター ・専用リヤバンパー ・占領リヤスポイラー ・専用フェンダーモール(フロント&リヤ) ・専用チューニングコンピューター ・専用等長フルデュアルエキゾーストシステム ・専用エンジンカバー ・専用レイズ製鍛造アルミホイール ・専用チューンドサスペンション ・専用ストラットタワーバー ・専用YAMAHA社製パフォーマンスダンパー ・専用車速感応式パワーステアリング ・専用本革・スエード調ファブリックコンビシート ・専用本革巻ステアリング ・専用本革巻シフトノブ ・専用ドアトリム、二―パッド、インストアッパーボックス、コンソールブーツ ・専用コンビメーター ・専用エンブレム ・専用シリアルナンバープレート
●車両本体価格(消費税込み):6MT車・493万5000円、7AT車・504万円
■マイナーチェンジ(2012(平成24)年7月)
10年を超えるモデルライフの間、Z34は小さな仕様向上や一部改良を数多く行っていますが、マイナーチェンジらしいマイナーチェンジは、クローズドボディ車、ロードスター、同時に1度だけ行われています。
外観では、この時点で世にすっかり定着していたデイライトを装備。併せてバンパーが新形状になりました。新デザインといえば19インチのアルミホイールも新造形に。顧客要望に応え、ロードスター用の18インチアルミホイールをクローズドモデルにも横展開しています。
内装はメーター内ディスプレイの色づかい変更にとどめ、メカ面では、ショックアブソーバーの減衰力特性を変えたユーロチューンドサスペンションを採用、ブレーキにも手が入れられ、新開発の摩擦材によるブレーキパッド起用により、低中速から高速までの安定した制動力と耐フェード性を向上させています。
タイトルに入れたように、現行6代目は2008(平成20)年に発売された、10年超の長距離ランナー。先日2020年9月16日にプロトタイプが公開され、Z34も最終コーナーに差し掛かったところ…いよいよ次世代にバトンを渡す日も近いようです。
1969(昭和44)年の誕生から50年を過ぎたZは、次の50年に向かってこれからも走り続けます。
(文:山口尚志 写真:中野幸次/日産自動車/モーターファン・アーカイブ)