スバル「サンバー」が生産を終了。これをもって、SUBARUは軽自動車の自社生産から撤退【今日は何の日?2月28日】

■最後のサンバーがラインオフ、54年に及んだスバルの軽自動車が幕を下ろす

1961年に誕生した初代サンバー(トラック)
1961年に誕生した初代サンバー(トラック)

2012(平成24)年2月28日、スバル(当時は、富士重工業)が「サンバー」の生産を終了しました。

これをもって、スバルは軽自動車の自社生産から撤退、1958年の「スバル360」から54年に及んだ軽自動車の歴史に幕を下ろしたのです。


●スバルの軽自動車はスバル360の大ヒットから始まった

スバル初の軽自動車であるスバル360は、政府の国民車構想(乗用車の普及促進政策)に応える形で1958年にデビューしました。

1958年デビューしたスバル360、国民的な人気を集めた
1958年デビューしたスバル360、国民的な人気を集めた

スバル360は、当時としては先進的なフルモノコックボディやRR(リアエンジン・リアドライブ)レイアウト、4輪独立懸架などを採用、元航空機技術者を中心とした開発陣が航空機づくりで培った高い技術をもって開発した、軽初の4人乗車できる軽自動車でした。

エンジンは、最高出力16PSの356cc空冷2気筒。車重を385kgまで軽量化して最高速度は83km/hを記録。また、実用性の高さに加えて、可愛い斬新なスタイルから「てんとう虫」の愛称で親しまれて大ヒットし、デビュー後12年(累計生産39万台)にわたり長く人々に愛され続けました。

スバル360の大ヒットによって、日本独自の軽自動車市場が切り開かれ、またスバルの自動車メーカーとしての基盤が築かれたのです。

●農道のポルシェと呼ばれたサンバー誕生

大ヒットしたスバル360に続いて1961年、その商用車版とも言えるサンバーがデビューしました。

1961年に誕生した初代サンバー(ライトバン)
1961年に誕生した初代サンバー(ライトバン)

安定した丈夫な低床式荷台をもつトラックと、商用だけでなくファミリーカーとしても使えるマルチなライトバンは、基本的にはスバル360のシャシーとメカニズムが流用され、RRレイアウトと4輪独立懸架を採用。これが、ポルシェ911と同じであることから、サンバーが“農道のポルシェ”と言われた由縁です。

エンジンもスバル360と同じ356ccの空冷2気筒でした。ちなみに、スバルブランドのコア技術である水平対向エンジンは、サンバーには最後まで搭載されませんでした。

2011年に登場した50周年記念車「WR BLUE LIMITED」。生産終了が決まり、大人気となった。
2011年に登場した50周年記念車「WR BLUE LIMITED」。生産終了が決まり、大人気となった

その後サンバーは、RRレイアウトと4輪独立懸架の組み合わせを頑なに堅持しながら進化し続けます。1980年の3代目では、軽トラック/バンとしては初の4WDを搭載。1990年の4代目で550cc2気筒から660cc直4エンジンに変わり、軽初のスーパーチャージャーエンジンを搭載。1993年には、5代目サンバーをベースにレトロ調の「サンバークラシック」が追加され、当時流行ったレトロブームの火付け役となりました。


●ユニークな軽を発売し続けたスバルの終焉

その後も、1972年に「スバルレックス」、1992年には軽としては珍しい4気筒を搭載した「ヴィヴィオ」を発売、そのホットモデル「ヴィヴィオRX-R」はWRCのサファリラリーでクラス優勝を飾って注目を集めました。

2004年にデビューしたスバルR1とスバル360
2004年にデビューしたスバルR1とスバル360

2000年に入ると、名車スバル360を彷彿させるスーパースモールカー「R1(3ドアハッチバック)」、その兄弟車の兄弟車「R2(4ドア2ボックスセダン)をデビューさせ、ハイトワゴン全盛時にスバルらしい個性豊かな軽自動車で存在感をアピールしたのです。

スバルは、54年間一貫して軽としては贅沢に思える先進的な技術を採用し、他社とは一味違う軽自動車を投入し続けました。残念ながら、スバルは得意とする4WDベースのステーションワゴンやSUVの開発に専念するため、サンバーの生産終了とともに軽自動車の自社開発から撤退しました。

ただし、自社開発こそ断念したものの、以降はダイハツからのOEM供給によって現在もスバルブランドを提供し続けています。


全自動車の40%のシェアを誇る軽自動車、一方でスズキとダイハツの2強に加え、ホンダ、日産自動車・三菱自動車も加わり、軽自動車の競争は激化するばかりです。スバルの軽とはいえ、この中で数を確保するのはそうたやすくはなく難しいということですね。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
続きを見る
閉じる