ガソリンスタンドの「静電気除去シート」、冬は絶対タッチしないとヤバい理由とは!?

■静電気除去シートの正しい使い方を知っていますか?

静電気除去パットを甘くみてる人は要注意…
静電気除去パットを甘くみてる人は要注意…

利用者自身が給油する、セルフ方式のガソリンスタンドに設置されている「静電気除去シート」は、静電気によるガソリン着火事故を防ぐための大切な安全装備です。

特に空気が乾燥する冬は、ドアノブなどに触れた瞬間、バチン!とくる静電気放電が発生しやすくなるので、静電気除去シートに触れないで給油をするのは大きな危険を招きます。

ただし、静電気除去シートに触れさえすれば事故が起こらない…というわけでもありません。

「外した給油キャップを置くついでに触る」「最初にタッチすれば後は触れなくていい」と思っているなら、それらの認識はすべて間違いです。

静電気除去シートの正しい使い方を知っていれば、防げた事故も多くあります。静電気除去シートに触れなければならない理由と、正しい使い方を調べてみました。

●静電気によるガソリンの着火事故例

静電気除去シートを触れずに給油するとどうなるのでしょうか。

現在は入念な対策がされたことで事故件数は減っているものの、セルフガソリンスタンドが登場した当初は、静電気が原因と見られるガソリンの着火事故が頻繁に起こっていました。代表的な2件の事故を紹介します。

◯2001年4月・兵庫県神戸市の事故

実は着火した事故の例がしっかりと存在している
実は着火した事故の例がしっかりと存在している

助手席に乗っていた人が給油キャップを外そうとしたところ、キャップが開かず、代わりに運転手が車を降りてキャップを開けた途中で出火した事故です。この事故で給油口の周りが焼損。キャップを開けた運転手は静電気除去シートに触れていませんでした。

この事故のポイントは、助手席の人が給油ハッチを開放したことと、運転手がドアを開けっ放しにしたまま給油キャップを開けた点にあります。

はじめから運転手自身が給油していれば、給油ハッチやドアに触れた際に溜った静電気を逃がせたはずですが、どちらにも触れなかったせいでキャップを開けた際に静電気放電が発生し、ガソリンに引火したとみられます。

◯2005年12月・東京都江東区の事故

給油機のトラブルによって、利用者がガソリンスタンドの従業員を呼ぶために歩いて探しに行き、静電気除去シートに触れずに再度給油を開始したところで、ノズルを差したままの給油口から出火した事故です。慌てて給油口からノズルを引き抜いたことで、こぼれたガソリンとボディの一部が焼損しました。

この事故のポイントは、給油の途中で従業員を呼ぶために歩行したことで、身体に静電気が溜まってしまった点です。ただし、この事故当時は、現在のように給油ノズルのレバーが静電気を逃がす構造でなかったことも原因だったようで、同種の給油ノズルの装置でも数件の事故が起こっていました。

以上の2件はやや特殊なケースですが、どちらも静電気除去シートに触れていれば防げた事故です。

●ガソリンと静電気について

ガソリンスタンドでの火の扱いにはいつも以上に注意が必要
ガソリンスタンドでの火の扱いにはいつも以上に注意が必要

静電気除去シートの正しい使い方を理解するためには、ガソリンと静電気の性質について知る必要があります。

ガソリンはマイナス40度でも気化する特徴があるので、ガソリンの周りには常に可燃性の高いガソリン蒸気が漂っていると思ってよいでしょう。

給油キャップを開けたときに燃料タンクから「プシュ」と出るのは、燃料タンク内で気化した可燃性のガソリン蒸気で、この時に起こる着火事故は「ガスキャップファイアー」と呼ばれています。

また給油中は、入れたガソリンによって燃料タンク内に溜っていたガソリン蒸気が押し出され、給油口とノズルの間から吹き出すので、事故が起こる可能性が非常に高い状態と言えます。

静電気とは、物質間の電気極性がプラスとマイナスに分かれることで起こる作用です。冬場によく起こるバチンという静電気放電は、衣類や車のシートとの摩擦でブラスになった身体に、車のボディやドアノブに触れることでマイナスの電気が流れ込むことで起こります。その時の放電電圧は3000ボルト〜3万ボルトとも言われており、ガソリン蒸気を着火させるのに十分なエネルギーを持っています。

静電気放電が原因によるガソリンの着火事故が起こるのは、給油キャップを開けたタイミングでの出火と、ノズルで給油している最中がほとんどです。

現在の装置にはノズルの周りにゴムカバーが備わり、給油中に吹き出すガソリン蒸気を吸い込む構造になっています。加えて、給油ノズル自体にも静電気除去機能をもたせることで対策としていますが、それでも絶対に安全とは言えません。

また、ガスキャップファイアーに対しては、静電気除去シートに触れることが、現状もっとも有効な手段です。

●静電気除去シートの正しい使い方

静電気除去パット
静電気除去パット

これまでの事故やガソリンや静電気の特性を踏まえて、改めて静電気除去シートの正しい使い方をおさらいしましょう。

ガスキャップファイアーを防ぐため、静電気除去シートには必ず給油キャップを開ける前に触れることが大切です。静電気除去シートに長く触れる必要はありません。バチンと放電しないように抵抗回路が仕込まれているので、静電気の除去に時間はかかるものの、触れる時間は数秒程度で十分です。

ただし、最初に一度触れたから安心というわけではありません。静電気除去シートはそれまで溜っていた静電気を逃がすだけで、手を離せば再び静電気が溜まりだします。

一度給油から離れた際には、もう一度静電気除去シートに触れてから給油するようにしましょう。

また、手袋をつけたまま触っても静電気は除去されません。現在は給油ノズルでも除電する構造になっているため、寒くとも素手で給油をすることが重要です。

もちろん、静電気が発生するのは冬だけではありません。バチンとくる痛みがないだけで、静電気は季節を問わず発生しています。


以上が静電気除去シートの正しい使い方です。静電気除去シートを正しく使うことは、ガソリン着火事故から身を守る最大限の自己防衛手段と言えますね。

(鈴木 僚太[ピーコックブルー])