「GRヤリスにATはアリ♪」by清水和夫。ラリー参戦で鍛え上げたトヨタの新8速AT「GR-DAT」が楽しい!

■進化したGRヤリスに、誰でも楽しく走れるAT仕様を新設定!

●フルモデルチェンジに近い進化が見られたよ!

清水和夫×進化型GRヤリス
清水和夫×進化型GRヤリス

2024年1月12日に発表された、トヨタの進化版GRヤリス。

フルモデルチェンジではなく、マイナーチェンジでもビッグマイナーチェンジでもなく、『進化』したGRヤリスなのだとか。発売は、今春を予定。

その進化した主な変更点はコチラ。

時代はAT! 縦引きシフトレバー(パーキングレバー)はRCにメーカーオプションの予定
時代はAT! 縦引きシフトレバー(パーキングレバー)はRCにメーカーオプションの予定

・新開発8速AT「GR-DAT」(GAZOO Racing Direct Automatic Transmission)を追加設定

より多くの方に走る楽しさを味わってもらうため、それまで設定のなかったオートマ仕様(8速AT「GR-DAT」)を追加。

GRヤリスのコクピット。メーター類がドライバー側へ15度傾けてあるために見やすく、操作もしやすい
GRヤリスのコクピット。メーター類がドライバー側へ15度傾けてあるために見やすく、操作もしやすい

・GRらしいコクピット

プロドライバーと共に視認性・操作性を磨き上げたコクピットへと進化。ドライビングポジションを25mm下げ、ステアリング位置も調整。

操作パネルやディスプレイをドライバー側へ15度傾けて設置、ハーネスで固定された身体でも操作性をアップしたスイッチ類を配置。

GRヤリスの1.6L 直3インタークーラーターボエンジン
GRヤリスの1.6L 直3インタークーラーターボエンジン

・エンジンパワー&トルク向上

モータースポーツでの戦闘力向上を目指し、エンジンパワーを200kw(272ps)から224kw(304ps)へ、トルクを370N・m(37.7kgf/m)から400N・m(40.8kgf/m)へとアップ。

リヤウイングもストップランプ組み込みを廃止、バンパーなども冷却効率、整備性も考慮されている
リヤウイングもストップランプ組み込みを廃止、バンパーなども冷却効率、整備性も考慮されている

・各部のエアロパワーを進化

サイドロアグリルの開口部拡大で冷却性能をアップ。バンパーサイドにアウトレット新設、サブラジエターやATFクーラーの熱を効果的に排出。ハイマウントストップランプとリヤスポイラーを分割、リヤスポのカスタマイズ性を拡張。

・シャシーとボディの強化

ボディとショックアブソーバーを締結するボルト本数を1本から3本に変更、走行中のアライメント変化を抑制し、ステアリング操作に対する車両挙動の応答性を高め、操縦安定性を向上。

などの進化を遂げたGRヤリス。

ではさっそく、国際モータージャーナリスト・清水和夫さんのサーキット全開インプレをお届けします。

●四駆のターボでAT、こりゃいいぞ!

清水和夫×GRヤリス。トピックスのひとつ、GR-DATが楽しみだ
清水和夫×GRヤリス。トピックスのひとつ、GR-DATが楽しみだ

進化したGRヤリス、今回はフェイスリフトなんだけど、実際の中身はかなりフルモデルチェンジに近い進化をしています。

四駆ターボでラリーっていうと、昔はレオーネがあったんだけど、グループBモンスターマシンのスーパーカー、ポルシェ959とか。ま、ラリーじゃないけどスカイラインGT-Rが出てきたり、インプレッサとランエボの四駆ターボ2L。

ずっと指をくわえて見ていたトヨタから、GRヤリスがついに2020年の8月に登場した。

コンセプトはレースというよりも、ラリーで勝つために生まれた車ですよね。実際、WRCではヤリスは3連勝をしているし。

清水和夫×GRヤリス
清水和夫×GRヤリス

今回いろいろとアップデートしているようなので、今日はウェットの袖ケ浦フォレストレースウェイですけども、サーキットとグラベルの両方でたっぷりと乗ってみたいと思います。

トピックスは、トルコンATの2ペタルが登場したっていうこと。私もずっとCVTでラリーをやってきた関係で、2ペタルのラリーカーっていうのは、もうあるあるだな!と思っていますから。

普段乗りも便利だし、皆さんも興味があると思いますので、しっかりインプレッションしたいと思います。

●ウエットのサーキットではトラコンカット!

フェイスリフトとはいえ、ドラポジもシート位置が低くなっているし、インパネも変わっているし、助手席の前はラリー用を考えてコ・ドライバーがスマホとかを置くスペースになっているし、電源もあるし。実戦でラリーをやって、細かいところを織り込んだ車ですね。

ボディ剛性上げたり、サスペンションの取り付け剛性を上げたりしているので、多分走りは進化しているだろうなと思います。

今はアクセルとステアリング、前後のトルク配分の制御を含め、全部ノーマルで走っています。

ヒップポイントを低く設定。コレいいよ!
ヒップポイントを低く設定。コレいいよ!

ドラポジはシートが下がったからすごくいいね。ヒールヒップが270って言っていますけど、プリウスが確か240にしてるんだよね。より足がストレートに伸びるような感じになっています。

おぉ~! ノーマルだからケツが流れると、VSC(Vehicle Stability Control/横滑り制御機能)がすぐちょんとブレーキつまんで流れを止めてくれます。

おっとっと! 路面が冷えているから滑るな~。

まず何やろうかな。アクセルとステアリングをスポーツに変えました。四駆制御はまだそのまんま。これ、トラクションコントローラー切らないとどうしようもないな! 長押しでトラコン、カット。前より流れても、なんだろう…すぐにハイサイドで戻んないね。

前はなんかバンプラバーに当たった時に戻される感じがあったんだけど、進化型はそのまんまケツが流れても一定の過重移動を保ってくれます。

前のノーマルよりも結構ケツが流れるね。流れっぷりがいいな!

トルコン配分をターマックにしました、トラックですね。グラベルっていうのもあるだけど、トラックモードだからリヤの方がトルク配分が多いのかな。

清水和夫×GRヤリス
清水和夫×GRヤリス

おっと、これはもう完全にFRだな! 雨でトラックモードは涙が出るぐらいケツが流れる! いや、このモードはきついっすね。トルク配分はノーマルのほうがいいかなぁ、このぐらいのトルク配分はいいね。ウエットのサーキットはグラベルモードがちょうどいいかな。

インパネも変わったし、ドラポジも変わったし、車全体がより贅肉がなくなって、よりシャープになった感じ。ウエットのサーキットはトラックモードにすると、ちょっとオーバーステアすぎるので、今グラベルで走ってちょうどいい感じです。

元々、前後の重量配分的にはフロントヘビーなので、その状態でトラックモードでリヤのトルク配分を多くすると、リヤのトラクションがかからずにホイールスピン気味になるので、結構ピーキーなオーバーステアになります。

このくらい忙しい車だとATありだね!

こうやってシフトしてる時にクラッチ切った時のトルク切れがあるからね、サーキットはまだしも、ラリーだと登りとかオフロードがあるから、このトルク切れしてる時に加速が落ちるから。

●2ペダルのラリーカー、いいな! オレもコレで走りたい!

2ペダルのラリーカーっていいよ! 私、6年ぐらい2ペダルのCVTでラリーやっていて、2023年からはヤリス・ハイブリッドの2ペダル。

あ! クラッチペダル踏もうとしたらペダル無かった(笑)!!

225/40R18 ミシュランPilot Sport 4SにBBS製鍛造アルミホイールをセット
225/40R18 ミシュランPilot Sport 4SにBBS製鍛造アルミホイールをセット

マニュアルがいいと言われてるけど、クラッチ切ってる時にはトルク切れがするんだよ。

左足ブレーキ! おぉっとっと!! 左足ブレーキでちょんってブレーキ踏むとケツが流れるね。マニュアル車でペダルが3つあると、左足ブレーキ使いにくいんだけど。時代はもう2ペダル!! パドルシフトもあるし。

スポーツモードにしました。スポーツモードにしたんだけど、前後のトルク配分はグラベルがいいですね。自動的にシフトダウンするし、グラベルいいね。グラベルモード、スポーツモード、いいな。

ちょっと怖いけどトラックモードにしてみよう。前後のトルク配分がかなりリヤ寄りになっています。AT車ってのは20kgぐらい車重が重いのかな。でも前後の重量配分的にはちょっとフロントヘビーになる感じがありますけど。

GRヤリス、ATの時代が来るね! オレもコッチでラリーやりたいな~。

ラリーでも時代はAT!
ラリーでも時代はAT!

やっぱりトラックモードは今日の路面だとピーキーすぎる。グラベルモードで50:50に近い状態で今走ってます。ブレーキングすると4速で自動的にシフトダウンしくれます。

今日のGRヤリスはヤンチャだね!

サスがもう少しフルにバンプラバー側にストロークした時の跳ね返りがちょっと強いので、もうちょっとそこのところで過重移動で過重が外輪に乗っていられるようにして欲しいなと思います。

●ラリーだって今や時代は2ペダルだぜ!

いや~これはいいな。ずっと2ペダルでラリーを走ってきた私とすれば、CVT、ハイブリッド、この8速トルコンAT。ポルシェだってGT3も2ペタルの時代だから。

進化型GRヤリスのフロントビュー
進化型GRヤリスのフロントビュー

普段乗る時は、シフトポジションをMモードにしておくと、高いギアにしてもそのままアクセル踏んでもギアダウンしないです。一般道っていうか、高速道道路ではこのMモードを使って、5速か6速に固定しておいて走ればビジーにシフトダウン/アップがないっていうことで使いやすいと思います。

進化型GRヤリスのリヤビュー
進化型GRヤリスのリヤビュー

ギア固定はこのMモード。Dレンジだと、ドライバーのアクセルの踏み方や車速に応じて自動変速しますから、ちょっとビジーな感じがあるかも。

まぁDレンジとMレンジを上手く使う。パドルを使ってもいいんだけど、どうしてもDレンジでアクセルいっぱい踏むとギアダウンしちゃいますから、燃費走行したいんだったら高いギアでアクセルを多めに踏んでポンピングロスを防いで走った方が燃費はいいでしょうね。

まあでもDレンジでサーキットっていうかワインディングでブレーキ踏むと、自動的に適正なギアまで落としてくれるので、それはそれでなかなかインテリジェントなATだなって感じがします。

●ラリー仕様にも乗ってみた

TGRラリー仕様をオフロードで遊んでみたw
TGRラリー仕様をオフロードで遊んでみたw

さあTGR眞貝(知志)号です! いいねATは。左足でチョンとブレーキ踏むと。おぉ~楽しいぜ!

左足でちょんブレ、ちょんブレ~♪


ま、オフロード走行のTGRラリーチャレンジ号試乗は、楽しくってあんまり喋ってないので、動画で堪能くださいw サイドブレーキ引こうとしてシフトレバーを動かしちゃっているシーン(多分)が見られますwww

進化型GRヤリスの主なスペック
進化型GRヤリスの主なスペック

【SPECIFICATIONS】(社内測定値)
車名:トヨタ GRヤリス RZ“High performance”
全長×全幅×全高(mm):3995×1805×1455
ホイールベース(mm):2560
トレッド F/R(mm):1535/1565
乗車定員(名):4
車両重量(kg):1280(iMT)/1300(GR-DAT)
エンジン:直列3気筒インタークーラーターボ
エンジン型式:G16E-GTS
内径×行程(mm):87.5×89.7
総排気量(cc):1618
最高出力(kW(ps)/rpm):224(304)/6500
最大トルク(N・m(kgf・m)rpm):400N(40.8)/3250~4600
トランスミッション:iMT(6速MT)/GR-DAT(8速AT)
駆動方式:スポーツ4WDシステム“GR-FOUR”電子制御多板クラッチ式(3モード選択式)
差動装置(F/R):トルセン®LSD/トルセン®LSD
サスペンション(F/R):マクファーソンストラット式/ダブルウィッシュボーン式
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク 18インチアルミ対向4ポットキャリパー/16インチアルミ対向2ポッドキャリパー
タイヤ(F/R共):225/40R18 ミシュランPilot Sport 4S
ホイール(F/R共):BBS製鍛造アルミホイール 8J インセット45mm
燃料タンク容量(L):50

(試乗:清水 和夫/動画:StartYourEnginesX/画像:井上 誠、トヨタ/アシスト:永光 やすの

【関連リンク】

StartYourEnginesX
https://www.youtube.com/user/StartYourEnginesX

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この記事の著者

清水和夫 近影

清水和夫

1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、スーパー耐久やGT選手権など国内外の耐久レースに参加する一方、国際自動車ジャーナリストとして活動。
自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。clicccarでは自身のYouTubeチャンネル『StartYourEnginesX』でも公開している試乗インプレッションや書下ろしブログなどを執筆。
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