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■東京都心や温暖地域の雪道にはどんな危険がある?
東京都心には滅多に雪が積もりません。そのぶん、ときおり降る雪によって道路は大混乱に陥りがち。雪に対して脆弱な温暖地域の運転は、わずかな雪であっても油断は禁物です。
冬道の走行でもっとも肝心なのは、路面状態ごとの危険の見極めだと言います。
東京都心や温暖地域で発生する雪道にはどのような危険が潜んでいるのでしょうか。路面状態ごとの危険度と、走行時の注意点や起こりうるトラブルなどを調べてみました。
●危険度★みぞれ
「みぞれ」とは雪と雨が混じった状態を言います。
みぞれの降り始めや、路面にうっすら積もった程度のみぞれ雪なら走行にほとんど支障はなく、タイヤがみぞれの層を押しのけてアスファルトと接地できる程度の積雪量なら、ノーマルタイヤでも走行にほとんど支障はないので危険度は低いといえるでしょう。
ただし、みぞれ時は雨天時よりも遥かに低い速度でハイドロプレーニング現象が起こるため、漫然とした運転はできません。
ハイドロプレーニング現象とは、路面の水膜によってタイヤが浮き上がり滑ってしまう現象です。高速走行時に起きやすいとされますが、雨水ほど流動しないみぞれに対してはタイヤの排水性能が十分に発揮できず、数十km/h程度の低い速度でもタイヤが浮き上がってしまいます。
重量が軽い車や、残り溝が少ないタイヤほど滑りやすい点も雨天時のハイドロプレーニング現象と同じで、限界速度を越えてしまうと車はいとも簡単に滑り出し、コントロール不能に陥ります。
●危険度★★シャーベット
東京都心や温暖地域の雪は湿気を多く含むため、シャーベット状の雪になる場合がほとんどです。
シャーベット状の雪は、雪道を走り慣れたドライバーでも警戒するほど滑りやすいうえ、車がコントロールしづらくなる特徴があるので、見かけ以上に危険度は高いと言えます。
みぞれと同じく、アスファルト路面にタイヤが接地できる程度のうっすらと積もった状態なら大きな問題にはなりませんが、タイヤが完全に浮いてしまうほどの積雪量になると、スタッドレスタイヤを履いた4WDでも走行が難しくなります。
走行抵抗の高さもシャーベット状の雪の特徴で、車が前に進む力より雪の抵抗の方が大きくなると発進ができなくなったり、雪の抵抗によって進行が妨げられて、走行中に突然車が横を向くことも珍しくありません。
雪の水分量や凍結具合によっては、路上にできた凹部にタイヤがはまり込むと、空転するばかりでそのまま移動できなくなる恐れもあります。
●危険度★★★アイスバーン(路面凍結)
アイスバーンは、路面が氷の膜で覆われてスケートリンクのようになった状態を指します。
アイスバーンの路面はスタッドレスタイヤを履いていても非常に滑りやすく、発進が困難なうえ、一度滑り出したら止まるのにも長い制動距離が必要です。カーブでも十分に速度を落とさないと、遠心力で車が外側に大きく滑り出してしまいます。
JAFによる40km/hからのブレーキ実験では、濡れた路面での制動距離が11.0mだったのに対し、アイスバーンでは84.1mにもなったとのことです。スタッドレスタイヤでもこれだけ滑るのですから、アイスバーンの前にノーマルタイヤでは、なす術がありません。
雨や雪の後は、5〜7度程度の気温でも、場所によってはアイスバーンが発生する恐れがあります。
なかでも地熱が届かない橋の上や、日光が当たらないビル影の道路はとくに凍結しやすい箇所。トンネル内部は凍結しにくいものの、出口付近は凍結しやすく、横風などと相まって車が急に滑り出すこともあります。
アイスバーンの路面を見かけたら、進入する前に十分に速度を落としておくことが唯一の対策といえるでしょう。一般的なアイスバーンは光を鈍く反射させるため、路面をよく観察していれば事前に察知可能です。
なかでももっとも危険度が高いのは、濡れただけの路面に見えても、実は凍結している「ブラックアイスバーン」。凍結しているのに気づかず、高い速度のまま進入すると非常に危険です。
●東京都心でもっとも有効な雪道対策は?
大雪に見舞われた際の対策として有効なのは、スタッドレスタイヤやタイヤチェーンを準備しておくこと。そのうえで速度を出しすぎず、十分な車間距離を保つことが大切です。これは雪国の走り方と同じです。
ただし、雪国と大きく異なるのは、スタッドレスタイヤ装着率の低さです。東京都心では雪が積もると、自身がスタッドレスタイヤを履いていても、ノーマルタイヤを履いた周囲の車が滑り出すので、追突や玉突き事故に巻き込まれる危険が高くなります。
また、東京は坂道が多いので、普段は気にならないような傾斜も雪や凍結で登れず、前方の車がスリップしながら後退してくる、なんて恐れもあります。
このことから、東京都心で積もる雪や路面凍結に対しては、どれだけ万全の雪道対策をしても不十分。
そのため走行の対策を施すのではなく、積雪の予報や気温低下の予報が出たら、事前にスケジュールなどを調整して、車を極力使わないようにするのがもっとも安全で確実な雪道対策になりそうですね。