“ラッタッタ”のCMとともにホンダ「ロードパル」が5.98万円でデビュー。女性のためのファミリーバイクとして大ヒット【今日は何の日?1月29日】

■自転車のようなフレームのファミリーバイクの先駆け

1976年に女性をターゲットにして大ヒットしたファミリーバイクのロードパル
1976年に女性をターゲットにして大ヒットしたファミリーバイクのロードパル

1976(昭和51)年1月29日、ホンダは自転車のようなスタイルで女性にも簡単に操縦できる2輪車「ロードパル」を発表、発売は2月10日から始まりました。

“ラッタッタ”のコマーシャルとともに市場に放たれたロードパルは、自転車代わりの便利さが多くの女性に歓迎され、空前の大ヒットとなりました。


●日本の2輪車の歴史を切り開いたホンダ

ホンダの起源は、戦後間もない1948年に設立された本田技研工業で、まず取り組んだのが、自転車補助用エンジンの製造です。そしてその直後から本格的な2輪車の自社製造に取り組み、1949年に「ドリームD型号」の生産を開始しました。

1958年のスーパーカブC100。現在も世界中で大ヒットしているスーパーカブ
1958年のスーパーカブC100。現在も世界中で大ヒットしているスーパーカブ

1952年に「カブF型」、1954年にホンダ初のスクーター「ジュノオ」、1958年には今も世界中で1億台以上愛され続けているロングヒット「スーパーカブ」がデビューしました。

その後も、1967年に登場したクルマに積み込めるレジャー用ミニバイク「モンキー」、1969年の「ダックス」と、ホンダらしいユニークな2輪車を次々と投入。そしてバイクらしくない、自転車でもないファミリーバイクという市場を開拓したロードパルが続いたのです。

●女性でも気楽に乗れる2輪車という発想から生まれたロードパル

ロードパルは、まるで自転車のようなフレームに14インチの小径タイヤを組みあわせ、変速機構はなし。ターゲットは、主婦を中心とした女性ユーザーで、そのために簡単に操作できることが重視されました。

ユニークなゼンマイ方式の始動。左側のペダル(タップスターター)を数回踏み込んでリアブレーキを引くと始動
ユニークなゼンマイ方式の始動。左側のペダル(タップスターター)を数回踏み込んでリアブレーキを引くと始動

剛性が高い車重44kgの軽量ボディに、最高出力2.2PS/最大トルク0.37kgmを発生する49ccの2ストローク単気筒エンジンが搭載され、日常使用には十分な走りが可能でした。始動方法は、ユニークなゼンマイ方式で、タップスターターを数回踏み込むとゼンマイが巻かれ、リアブレーキを引けばゼンマイが開放されてスターターが動くという仕組みです。

価格は5.98万円で、当時の大卒の初任給が9万円程度(現在は約23万円)なので、当時としては比較的廉価な設定で、燃費75km/L(30km/h定地走行)も魅力的でした。

TVコマーシャルで、イタリアの大女優ソフィア・ローレンが口にする“ラッタッタ”という掛け声とともに登場したロードパルは、その廉価な価格、自転車代わりの便利さ、簡単な操縦性などが人気を呼び、年30万台を販売する大ヒットとなりました。

●1980年代にスクーターブームが到来してロードパルの役目は終了

ロードパルの購入者の内、女性ユーザーが62.2%、30代から40代のユーザーが61%と、ロードパルは当初の狙い通りの女性ユーザーの獲得に成功し、新しい市場を開拓しました。

1980年にデビューしたコンパクトなスクーターのタクト
1980年にデビューしたコンパクトなスクーターのタクト

ロードパルのヒットを機に、他車からもヤマハ発動機「パッソル」のようなヒットモデルが登場して、2輪車が男性の乗り物から女性も乗る2輪車へと市場が拡大。おかげで、2輪車市場は前年の113万台から130万台へ、翌年には162万台へと飛躍的に伸びたのです。

その後1980年代に入ると、ステップスルースタイルでファッション性の高いヤマハ「ジョグ」、ホンダ「タクト」などのスクーターが人気となってきます。スクーターは実用的な機能主体のロードパルに対抗するようになってきており、ロードパルは誰でも乗れるというファミリーバイクの普及という役目を終え、1983年に生産を終えました。


最終的には自転車のようなスタイルのロードパルがファッショナブルなスクーターに淘汰された形となりましたが、1980年以降のスクーターブームは、ロードパルの誕生なしではあり得なかった、その功績は大きかったと思われます。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかも知れません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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