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■ホンダ50周年記念で復活するも10年で終焉を迎える
2009(平成21)年1月27日、ホンダがオープンスポーツカー「S2000」の生産終了を発表しました。
S2000は、ホンダの50周年を記念したモデルで、ホンダのスポーツカーの象徴「Sシリーズ」として、1999年に復活。S2000は、本格オープンスポーツとして高い評価を受けましたが、発売から10年で生産を終えました。
●高剛性オープンボディを纏って復活したS2000
1998年9月、ホンダは会社創立50周年を祝う記念式典で、“Sシリーズを継承する新世代のFRオープンスポーツカー“を発表。これを、S2000とネーミングして翌年1999年4月から販売を始めました。
オープンボディについては、X字型の新構造“ハイXボーンフレーム”による三又分担構造を採用して、高い剛性を確保。シャシーについては、前後ダブルウィッシュボーンのサスペンションや前後ディスクブレーキ、ABSシステム、トルクセンシングタイプのLSDも組み込まれ、安定した走りと高い安全性能が確保されました。
パワートレインは、最高出力250PS/最大トルク22.2kgmの2.0L直4DOHCのハイチューニングエンジンと6速MTの組み合わせ。駆動方式はFRレイアウトですが、エンジンを前輪車軸後方に配置(フロントミッドシップ)することで、車体前後重量配分を理想的な50:50に設定し、ホンダらしい鋭い加速性能と優れたハンドリング性能が実現されたのです。
車両価格は、1グレードのみで338万円に設定され、生産終了までの約10年間で国内約2万台、世界累計11万台を販売。ちなみに、当時の大卒の初任給は19.6万円程度(現在は約23万円)でした。
●S2000の10年間の進化
久々に登場したオープスポーツS2000は、走り好きのユーザーから大きな支持を獲得し、その後も先進的な進化を続けました。
2000年7月には、世界初のステアリング機構であるVGSを装備した「S2000タイプV」を発売。VGSは、車速に応じてステアリングギヤ比を変える車速応動可変ギヤ比ステアリングのこと。低中速ではステアリング操作に対してクイックに、高速では過敏すぎないようにスローなハンドリングで、走行安定性を向上させていました。
2001年9月には、初のMC(マイナーチェンジ)で、ボディの新色導入やウインドウの熱線入りガラスなどを実施。2003年10月になると、サイドのMCでデザインの一部刷新に加え、17インチタイヤの採用やサスペンションのセッティング変更、ボディ剛性の強化など、段階的な改良によってさらに完成度が高まったのです。
●ホンダのスポーツカーの象徴Sシリーズの歴史
ホンダのスポーツカーを象徴するSシリーズは、ホンダ初の乗用車であり、初のスポーツカーでもある「S500」から始まりました。その流れを見てみましょう。
・S500(1963年~1964年)
FRのオープンスポーツS500は、2輪のエンジンをハイチューンした最高出力44PS/8000rpmの500cc直4 DOHCエンジンを搭載。高回転型エンジンのスポーツカーらしい加速性能が大きな魅力でした。
・S600(1964年~1966年)
わずか半年足らずで排気量を600ccに拡大してデビューしたS600は、スタイリングはほとんど変わりませんでしたが、最高出力を57PSに向上。最高速度は145km/hと圧倒的な走行性能を記録し、1964年のニュルブルクリンクでは優勝を飾りました。
・S800(1966年~1970年)
排気量をさらに800ccに拡大したS800は、最高出力が70PSまで向上。最高速は160km/hに達し、さらに高性能化が進みました。
・S2000(1999年~2009年)
前述のように、ホンダの50周年を記念して登場。
・S660(2015年~2022年)
S660は、660cc直3 DOHCターボエンジンによるハイパワーとMRレイアウトで実現される、理想的な前後重量配分が特徴でした。軽快な走りとハンドリングが、多くのスポーツカーファンを魅了しましたが、2022年3月に惜しまれながら生産を終了しました。
これにて、ホンダSシリーズは一旦終了しました。
今後強化される予定の騒音や衝突など各種規制の関係で、内燃機関のオープンスポーツの登場は難しいと考えられます。そのような中で、S2000は貴重なモデルとされ、すでに中古車市場では価格高騰で推移しているようです。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)